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#51【奇経八脈】筋骨格系に対する八脈交会穴治療の効果

八脈交会穴は奇経八脈の治療に使う経穴です。
奇経八脈の治療と言うとイメージしにくいですが、奇経八脈の流注や生理作用から、筋骨格系の問題改善にも利用できると考えています。

奇経八脈について高野先生が書かれた本を読みました。
そして実際に友人と実験してみた結果、可動域の改善という形で筋骨格系に良い影響を与えられるのが八脈交会穴治療だと確信しています。

ということで、八脈交会穴治療が筋骨格系に与える影響について紹介していきます。


1.『後渓ー申脈』:陽蹻脈治療

後渓は督脈、申脈は陽蹻脈の八脈交会穴です。
この組み合わせは、膀胱経筋の治療と考えて良いと思います。

陽蹻脈は「膀胱経の別脈」と呼ばれており、その作用として膀胱経筋の滋養を担っています。

膀胱経筋は体の後面を走る筋肉です。脊柱起立筋やハムストリング、下腿三頭筋などです。
ですので、後渓と申脈に刺鍼することで前屈可動域が改善します。

前屈可動域チェック(左:ビフォー、右:アフター)

こちらが実際の写真です。
もともと私は柔らかいのでわかりにくいかもしれませんが、鼻と脚の間の距離が縮んでいるのがわかるかと思います。
体感的にもハムストリングの伸張感は大幅に減っていました。

ということで、『後渓ー申脈』の配穴は、体の後面の筋緊張の緩和に使えるということが言えます。

ちなみに、膀胱経脈を促通することで、督脈の気の流れも改善します。
脊柱の棘突起や棘突起間に圧痛が見られる方は多いですが、刺鍼した直後からその圧痛は消失します。
これは「不通即痛」という考え方から、督脈の気の流れが良くなったということも言えます。

2.『列欠ー照海』:陰蹻脈治療

列欠は任脈、照海は陰蹻脈の八脈交会穴です。
この組み合わせは、腎経筋の治療と考えられます。

陰蹻脈は「腎経の別脈」と呼ばれており、その作用は腎経筋の滋養です。

腎経筋は体の前面で深層を走る筋肉です。インナーマッスルと言われる筋がこれにあたります。具体的には大腰筋や脊柱傍筋、股関節で言えば内転筋などもそうでしょう。
ですので、列欠と照海に刺鍼することで伸展可動域が改善します。

伸展可動域チェック(左:ビフォー、右:アフター)

こちらが実際の写真です。
伸展の可動域も大きく改善している様子がわかりますよね。

ということで、『列欠ー照海』の配穴は、体の前面の筋緊張の緩和に使えるということが言えます。

3.『外関ー足臨泣』:帯脈ー陽維脈治療

外関は陽維脈、足臨泣は帯脈の八脈交会穴です。
この組み合わせは、先の2つのように「経筋」を治療するというよりは、少陽経の気の流れを良くすると考えるのが良いでしょう。

すなわち外関は少陽三焦経、足臨泣は少陽胆経のツボですので、体の側面を走る少陽経の気の流れが良くなるのです。
また、帯脈は腹部をぐるりと回っているような経脈ですので、筋の走行と比較すると腹斜筋や腹横筋に近いと考えられます。

そのためこの『外関ー足臨泣』の配穴は筋骨格系で言えば側屈や回旋運動に関わっていると考えられます。
今回は回旋運動で可動域のチェックをしました。


右回旋可動域チェック(左:ビフォー、右:アフター)


左回旋可動域チェック(左:ビフォー、右:アフター)

(目元だけ隠しました)
左のみ刺鍼と書いてあるのは、左回旋の可動域が悪いので左の『外関ー足臨泣』に刺鍼したということです。

私の脊柱は少し右に側弯しているので左回旋が苦手なのですが、『外関ー足臨泣』に刺鍼したあとは可動域が大きく広がっているのがわかると思います。
右回旋についても可動域の改善が見られます。

ということで、『外関ー足臨泣』の配穴は、体の側面の筋緊張の緩和に使えるということが言えます。

4.まとめ

今回は八脈交会穴治療が筋骨格系に与える効果についてまとめました。
八脈交会穴治療を自分で受けてみて、全身の関節の可動域を改善させることができるというのがわかりました。

鍼灸を知らない方の為に補足しますが、八脈交会穴治療は上肢と下肢のツボにそれぞれ1本ずつ刺すのみです。
たった2本の鍼でここまで可動域が変わるのは、すごいと思いませんか?

私が参考にしている本を書かれた高野先生は、実際に急性腰痛の患者様に『列欠ー照海』の八脈交会穴治療が効果的だと言っています。
大腰筋のような体幹のインナーマッスルを滋養しているのが陰蹻脈だからです。伸展可動域が改善したのも頷けます。

実際に痛みを抱えている患者様に対して、これらの治療がどれほど効果があるのかは正直わかりませんが、可動域が改善するのであれば痛みも改善するのではないかと想像されます。

機会があれば、試してみようと思います。

それから、奇経八脈はそれぞれにもっと複雑な生理作用があります。運動系に与える影響は生理作用の中の一側面に過ぎません。
本当はもっとすごい効果があるとは思うのですが、今回は一番体感しやすい関節可動域という形で検証をしました。

参考図書
高野耕造,2022,臨床に役立つ奇経八脈の使い方(第2刷),東洋学術出版社

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