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#46【奇経八脈】八脈交会穴治療について。「列欠ー照海」

以前「後渓ー申脈」を使った八脈交会穴治療についての記事を書きました。

先日、実際にこれを友人に試してみたところかなり効果が見られたので驚いています。経絡というのが本当にあるのかはわかりません。しかし手と足に鍼を刺しただけで脊柱の圧痛が実際に消えてしまう現象は、経絡があると想定したほうが説明しやすいように思います。

ということで、今回記事にするのは、「列欠ー照海」の配穴を利用した八脈交会穴治療についてです。
陰蹻脈について先に確認しておいた方が理解がしやすくなるかも知れませんので、是非こちらもご覧ください。

1.「列欠ー照海」の治療システムについて

まずは「列欠ー照海」を八脈交会穴に持つ奇経八脈の確認と、この配穴の治療システムについて確認しましょう。
(※治療システムについての考え方は、高野耕造先生の書籍を参考にしています。)

まず、列欠は任脈の八脈交会穴であり、照海は陰蹻脈の八脈交会穴です。
督脈と陽蹻脈を治療する「後渓ー申脈」の配穴はどちらも太陽経に属する為、そのシステムは同名経治療でした。
しかし今回は、列欠が手太陰肺経、照海は足少陰腎経の経穴となっており、同名経とはなっていません。その為これは別のシステムを想定した選穴だと考えなくてはなりません。

肺と腎ですので、パッと思いつくのはこの両者が相生関係にあるということでしょう。具体的には、肺が腎を補っているという形です。
奇経八脈は「腎の作用を発現させるための経絡である」というのが前提としてあります。
陰蹻脈は腎の別脈と言われており、そういう意味では奇経八脈の中でもかなり重要な経絡でしょう。そしてその腎の別脈を補う形で肺経の経穴を選穴したと言えるでしょう。

しかしここで疑問が残ります。それはなぜ「列欠」なのか、です。
腎を補うのであれば、肺経の中でも金の性質を強くもっている「経渠」のほうが相応しいような気がします。金の性質を持つ経絡上で、金の性質を持っている「経渠」であれば水(腎)を補う際の相乗効果が期待されます。
しかしあえて絡穴である列欠が八脈交会穴として選ばれたのはなぜなのか。高野先生はその答えを子午流注理論に求めました。

子午流注理論についての詳細は省きますが、この理論の中では「寅卯ー申酉」が対応関係にあると考えられています。そしてこの「寅卯ー申酉」に当てはまる五臓六腑が、肺・大腸と腎・膀胱なのです。

「寅の刻ー肺」  =「申の刻ー膀胱」
「卯の刻ー大腸」 =「酉の刻ー腎」
子午流注理論と五行思想を組み合わせると、以上のような対応関係が成り立ちます。

高野耕造,2022,臨床に役立つ奇経八脈の使い方(第2刷),東洋学術出版社

「列欠」は手太陰肺経の絡穴であり、絡穴の役割は陰陽を繋ぐことです。「列欠」に施術することで、肺経と表裏関係にある大腸経の経絡にも刺激を加えることができると考えられます。
子午流注理論において大腸に対応するのがまさに腎であるので、これが「列欠」を選穴した理由だというわけです。「列欠」を刺激することで、肺と共に大腸にも刺激が伝わり、より腎を盛んにするというわけです。
つまり「列欠ー照海」の治療システムは子午流注理論に基づいたシステムであるということです。

2.臨床における「列欠ー照海」の用い方(個人的な想像)

治療のシステムについて確認したところで、臨床でどのように用いるかを考えていきましょう。
これ以降は、高野先生もあまり多くは言及されていませんので、私の個人的な想像になります。

まず「後渓ー申脈」への施術は、膀胱経絡の流れを良くすることで督脈の気の流れも良くなるという理屈でした。実際に脊柱の圧痛が改善されたので、そのような解釈も成り立ちそうです。
同じ理屈で考えると、陰蹻脈は任脈と並行して走行していますので、「列欠ー照海」への施術は任脈の気の流れを促すことができそうです。
任脈上の圧痛の変化や虚的陥凹が改善される可能性があります。

臍下丹田の虚的陥凹が改善されれば、腎の気化作用を補うことができるかもしれませんね。

もう一つ、私が期待しているのは腎経筋への影響です。
陰蹻脈は腎経筋を滋養していると高野先生は仰っています。腎経筋とはすなわち腸腰筋や脊柱のインナーマッスルになります。
「列欠ー照海」で陰蹻脈の気の流れが良くなるとすれば、腎経筋である腸腰筋やインナーマッスルにも良い影響が起こり得るのではないかと推測しています。柔軟性や収縮機能の改善などですね

立位の前屈やトーマステストなどでの関節可動域の改善が見られる可能性があります。また腸腰筋の収縮機能低下は不良姿勢にも繋がりますので、姿勢改善の効果も見られるかもしれません。

繰り返しますが、これらは私の個人的な想像です。
近々学校で友人と一緒にこの「列欠ー照海」の八脈交会穴治療を試してみようと思いますので、何かしら効果が認められればまた記事にするかも知れません。
お楽しみに。

参考文献
高野耕造,2022,臨床に役立つ奇経八脈の使い方(第2刷),東洋学術出版社

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