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属人化・暗黙知化を避けるためにはプロセスマップが必須なワケ

プロセスマップという言葉を初めて聞く方もいらっしゃると思うので、最初に説明します。プロセスマップとはプロセスを視覚的に表す図のこと。業務を行ううえでの全体像や分岐を図示したもの。まさに業務プロセスの地図です。

たとえばこのようなイメージです。

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これはBPMNという手法をもって描かれたプロセスマップです。BPMNについては後日別の記事にて説明する予定です。

プロセスマップがあれば、チームメンバー間でのプロセスの議論が円滑になりますし、問題点の把握、改善点の洗い出し、役割分担や引継ぎが容易になるでしょう。

逆にプロセスマップがない組織では多くのオペレーション課題を抱えることになります。そして、この状況を放置することで組織内の属人化・暗黙知化は拡大していきます。

プロセスマップがないとどうなるか?

プロセスマップを持たずに業務を行うことは、地図がないのに山登りをするようなものです。これがどのように属人化・暗黙知化を加速させるのか、3つの異なる視点から考えていきたいと思います。

①新人や異動者にとってのリスク

プロセスマップがないことによって、最も直接的な被害を受けるのがこの方々です。例えるならば地図を渡されずに未知の世界の探検に駆り出されるようなものです。プロセスの全体像が見えないので部分部分手探りに教わっていくしかありません。

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一応、先輩社員からOJTという形でガイドを受けることはできます。しかし先輩と手探りで業務を進めていくことになるので、全体像や業務完了までの距離感をイマイチ把握できません。また、危険地帯がどこにあるのかもわからないでしょう。

「先輩から見て学ぶ」ことが教わる唯一の教育手段となっている組織ではありがちなことです。組織全体のプロセス理解に時間がかかることになりますし、全体像を欠いた理解はトラブルの遠因にもなります。

②ベテラン社員にとってのリスク

ベテラン社員はすでにプロセスを熟知しています。地図はないけれど全ての道を知っている状態です。

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しかし他にプロセスの全体像を理解できている人がいないため、何かあるごとに呼び出しを受けることになります。新人教育はもちろん、トラブル対応や改善業務すべてに参加を余儀なくされます。だってその人しか全体像を把握している人がいないんだから・・・

そうなってしまうと悲惨です。そのベテランがマジメな方であれば、休みも取れずに働き続けることになるでしょう。自分が抜けると組織が回らなくなることがわかっているからです。異動もできず、業務が自分から離れない状態になります。いわゆる属人化です。

強制的にそのベテランを異動させたり、本人の希望で退職を認めた場合はどうなるでしょうか?組織全体での暗黙知の始まりです。誰もが何をやっているかがわからないという状態に陥ります。

つまり「特定のベテラン社員だけがプロセスを熟知している」という状態はかなりリスクが高い。

ちなみに、たまに自分しかわからないプロセスがあることを誇りにしているベテラン社員もいます。ほかのメンバーにプロセスを共有せずに、自分を頼らざるを得ない状況を生み出す人です。申し訳ないのですが、こういう方はプロセスマネジメントの観点からは危険人物です。痛みは伴いますが、強制的にでも役割を変えるなどして業務を引きはがしたほうがいい。

③マネージャーにとってのリスク

マネージャーだからといって、プロセスの全体像を熟知している人は稀です。むしろ現場から離れてしまっている以上、ベテラン社員よりも詳細部分は把握していない場合が多いでしょう。

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それでも部署メンバーが何を行っているのかを把握し、改善を指導しなければならないのがマネージャー。問題点があれば責任をとることも必要なので、「自分は何もわかりません」と言い逃れすることもできません。

プロセスマップを持たないマネージャーは、何かあるごとに現場のベテランを呼び出して説明を求めることになります。そうしてベテランへの依存を強化することになってしまいます。

マネージャーが何が起こっているかわからない状態で口をだせば、現場から鬱陶しがられることになります。一方で完全に現場を放置し何もしなければ、それは立派なマネジメント放棄です。

マネージャーの場合、何か事が起こるまではプロセスマップの必要性を感じないかもしれません。プロセスマップ整備はトップダウンで進めるべき案件なのですが、整備が遅れてしまう理由はここにあるのではないかと思っています。しかし、事が起こってからプロセスマップを求めているようでは遅いのです。

まとめ

プロセスの属人化・暗黙知化は以下のような問題を引き起こします。

・業務が煩雑化していて全体像が見えない
・特定の個人が異動・退職すると現場が混乱する
・オペレーションミスの原因解明に時間がかかる
・新サービス構築前の現状分析ができない

今回プロセスマップという言葉を始めて聞いた方もいるかもしれません。言葉が違ったとしても、似たようなものが組織に存在していれば何も心配いりません。また小規模な組織であったり、完全な新規事業の開発をしている部署ではプロセスマップの必要性が低いことも認めます。

しかし安定した事業の継続が求められるオペレーション部署において、プロセスマップがないことは致命的です。オペレーション部署以外でも、プロセスマップが存在しないことによる属人化・暗黙知化リスクは避けれれないでしょう。

世の中には既にプロセスマップをはじめ、属人化・暗黙知化を防ぐための手法やツールがたくさん存在しています。プロセスマネジメントを学んでみたい方へ。僕と一緒に勉強しましょう。参考書籍や資料をこれからも紹介していく予定です。

参考リンク


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