『クリティカルチェーン』②最適な納期管理
『クリティカルチェーン』
エリヤフ・ゴールドラット 著
前回の記事:
『クリティカルチェーン』①プロジェクトマネジメントの常識を覆す!
TOC理論がプロジェクトマネジメントにも適用できることを示した本書。
今回は、納期最適化の方法について。
5+5=13?
本書では興味深いたとえ話が登場する。それが「5+5=13」だ。
常識では、5+5=10である。それがプロジェクトマネジメントの世界では5+5=13となることが当たり前だという。
どういうことか?
プロジェクトの納期を検討する際、よくある手法が各工程ごとの所要日数を予測し、それを足し上げるというもの。
分かりやすく言えば、設計に10日、製造に30日、組み立てに5日、検査に3日、物流に2日かかると予想し、合計日数を50日と計算する。
しかし、ここにプロジェクトマネジメント特有の問題が発生する。
そもそもプロジェクトとは不確実性にさらされるもの。予測不能な事態を考慮すれば、正確な納期など見積もることができない。
そのため、セーフティ(バファ)を設けることで不確実性に対応しようと試みる。結果どうなるか?
何事もなければ50日で完了できるプロジェクトが、50日で完了できない事態となる。これが5+5=13の正体だ。
人間の心理による納期遅延
納期を決定する場合、過去の対応から所要期間を予測することが多いだろう。例えば検査工程の所要日数の過去実績が以下の通りだったとする。
はたして、どれだけの日数で検査工程の日数を見積りするのが正解だろうか?
4日であれば70%以上の確率で完了し、5日あれば80%の確率で完了できる。しかし、時には不確実性で時間がかかってしまう場合もあり、10日で完了したこともある。
セーフティが長めに設けられる理由は、上の事例の10日のような「ひょっとしたら」に備えるためだ。
現場担当者としては、長めの納期を宣言したいだろう。宣言した納期に間に合わなければ、ペナルティを課される場合もあるからだ。
一方で、長めの納期が設定されても敢えて急ぐことはしない。他の納期の迫ったプロジェクトを優先したいし、次回以降の納期設定を早められても困るからだ。
各工程がこのような考えを積み重ねていくことによって、全体の予測納期は遅延していく。
で、どうすればいいの?
具体的な解決策として...
・各工程ごとにセーフティは設けない
工程ごとに納期見積もれば、その分だけセーフティが積み重なっていく。見積もりをマネジメントする層が多ければ多いほど、納期は遅延していく。
であれば、工程ごとにセーフティを設けることはやめ、工程ごとの所要日数予測を足し上げた全体に対してセーフティを設ける。
・各工程の納期予測は中央値を採用
中央値とは、50%以上を含む値である。つまり、「半分以上の確率で間に合う」日数で工程ごとの納期予測をする。先の検査工程の場合、3日が中央値ということになる。
もちろん、検査工程が4日以上かかってしまうこともあるだろう。その場合は、次工程で優先的に対応させリカバリーする、もしくは全体でとったセーフティで対応する。
これによって、取り掛かりが遅れることを防ぎ、かつ、セーフティが積み重なってしまう懸念を防ぐことができる。
まとめ
過去に僕が習ったプロジェクトマネジメントの授業では、「楽観値と悲観値から計算せよ!」みたいなことを習った。三点見積りというらしい。
前例のないプロジェクトの場合、三点見積りなどの手法に頼るほかないだろう。
しかし、繰り返し類似のプロジェクトをこなしているのであれば、本書の推奨するやり方に分があると思う。
何が言いたいかというと、過去案件のデータを蓄積することはとでも大事だということです。データは宝。
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