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『クリティカルチェーン』③ものづくりをプロジェクトとしてマネジメントせよ!

『クリティカルチェーン』
エリヤフ・ゴールドラット 著

過去2回のnoteにて、『ザ・ゴール』の著者であるゴールドラット博士によるプロジェクトマネジメント論を説明した。

『クリティカルチェーン』①プロジェクトマネジメントの常識を覆す!

『クリティカルチェーン』②最適な納期管理

これらを踏まえて、僕からの製造業へのメッセージをまとめたい。書いていくと予想外に冗長になってしまったので、今回は先にまとめを示しておく。

まとめ

・ものづくりはプロジェクト。ものづくり以外のプロジェクトマネジメントから学べることもたくさんある。

・プロジェクト単体ではなくプロジェクトマネジメントの質を高めることで、さらに優れたQCDコントロールが可能になる。

・プロジェクトマネジメントの質を高めるために重要なのはデータの蓄積と活用である。データは宝。

ものづくりはプロジェクトマネジメントである

顧客からの要求を整理し、決められた納期までに納品する。普段意識することは少ないかもしれないが、ものづくりはプロジェクトなのだ。

プロジェクト管理ではQCDコントロールが求められる。多くの製造業企業でその役割を担うのは生産管理の部署だろう。

QCDとはQuality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期)の略であり、どれかに偏重することなくバランスよく3要素を管理することが求められる。これもプロジェクトマネジメントの要素だ。

QCDコントロールについてより効率的な手法を模索したい、より網羅的に理解したいと考えたとき、プロジェクトマネジメントの学問はきっと助けになってくれる。プロジェクトマネジメントはまさにそのための手法だからだ。

プロジェクトマネジメントは一つの学問としても体系化されているので、研究や書籍もたくさんある。本書『クリティカルチェーン』はそのうちの一つにすぎない。

『クリティカルチェーン』を有意義な書籍だと思ったし、活用していきたいと思う。しかし、状況が違えば参考にならないケースもあるだろう。自社にとってのベストプラクティスを見つけてほしい。

プロジェクトマネジメントの質を高める

プロジェクトという観点でみたものづくりは、ソフトウェア開発と比較して工程を整理しやすいと僕は考えている。

使用する機械によって工程が整理しやすいため、そしてほとんどの場合工程が逆流することなく一方通行であるためだ。

これらの特徴により事前に工程計画が立てやすく、あらかじめ決められた通りの工程が通り進められていく。

その結果、アジャイル型ではなく、ウォーターフォール型のプロジェクトとなることが多く、その分マネジメントは定型管理しやすい。

だからこそ、一つ一つの案件はなんとなくでも管理できてしまっている可能性もあるかもしれない。

進捗を確認して内容次第では改善をおこなったり、納期が遅延しそうな製品を優先加工したり、当初想定していた機械での加工をあきらめて別の機械に変更するなど、一つ一つの案件は大事に管理されているだろう。

しかしその知見が次回以降のプロジェクトに引き継がれないのだとすると非常にもったいない。

次回以降に経験を引き継いぐことができる、数値で管理できるようになる、誰でも対応できるようになるなど、プロジェクトマネジメントの質自体を強化することはできているだろうか。

データは宝である

そのために有効なのがデータを蓄積して活用することだ。

過去の経験をデータとして記録することで、納期や品t質の標準化を行うことが可能になる。そうすれば、プロジェクト納期や品質が標準と比較して良いのか悪いのかが明確に表すことができるようになる。

標準の算出は、経験や勘に依存せずデータから計算することが重要だ。もしデータを蓄積することが行われていないのであれば、簡単な手作業からでもよいので始めてみてほしい。

どういったデータがあれば標準化が進むのか、どういった分析をすればよいのか議論をしたうえで取り組んでほしい。

データの蓄積・分析はかなり手間がかかるので、取り組みが進まないケースが多いのは理解できる。しかし、短期的な視野でなく、長期的な視野を持って根気強く取り組めば成果はきっと現れる。

分析自体には難しい技術は必要ない。納期管理の場合、最初のステップとしては『クリティカルチェーン』で示されているとおり各工程の中央値を使用する程度でよいだろう。品質管理はそれに上限値と下限値を加えてもよい。

データは宝である。良いデータを積み上げることでプロジェクトマネジメントの質を向上させられるだろう。

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