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『心霊迷図 ~マギ ルミネア編~』 #15

 突然、扉を叩くノックの音も無しに、母親が慌てた様子で部屋に入ってきた。
 天降あまふりの方を見ると、動転した表情で言う。
路惟るい、ちょっと! 今、テレビで」
 言葉がもつれて声にならず、上手く説明できない様子だった。
 そんな母親の姿を目にするのは初めてだ。
 ここまでの動揺を見せるとは、何か事件が近所であったと言うことだろうか。
 
 何回か呼吸をくり返し、ようやく落ち着いた様子で母は言った。
「さっき、夕方のニュースを見ようとテレビをつけてみたらね——テレビで、昨年夏に起こった殺人事件の犯人が逮捕されていたのよ! それが――それが……路惟、あなたも覚えているでしょ! あの『マギ ルミネア』で行方不明になった子。その女の子と同じ名前で――」
 
 まさか、と天降は思った。
 向かい側に座っている樋口ひぐちの顔を見る。
 彼は意を得たり、と言った表情で天降を見た。
 まるで、言った通り、思い通りの未来がさっと現れたでしょう、と言わんばかりだ。
「とにかく来て! あの子、行方不明になって死んだんじゃなく、ずっと隠れて生きていたのよ! しかも、ずっと記憶を失ったまま」
 
 天降は言われるまま、椅子から立ち上がると、樋口もともに部屋の扉へと続いた。
 開いた扉から、母の後を追って、玄関側のリビングルームへ入っていく。
 映画好きの両親のために、大画面のテレビが壁に備えつけられ、音響もったステレオ・セットになっている。
 画面はニュースをつけっぱなしのままであり、スピーカーからは響くようにニュースキャスターの声が流れていた。
 天降は信じられない表情でテレビ画面に釘付けになる。
 ——間違いない、彼女だ。
 どことなく昔の面影が、今の彼女にもあった。
 表情にとぼしいのも相変わらず。けれども、中学校時代にあった幼さは消え、順当に時間を経過した、大人の女性へと変貌をげていた。
 そこには、テレビ画面で大写しになった、建木真加たちきさなかが殺人罪で逮捕され、報道陣がフラッシュをたく中、警察とともにいる姿が映っていた。


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