見出し画像

「虫めづる姫君」(1)

このお話は、1000年ほど前に書かれた「虫めづる姫君」という日本古典文学作品を、KOJINオリジナルで「抄訳」したものです。
当時のおひめさまは、桜や蝶を愛することが、美しい女性としての「マナー」とされていました。 けれど、そんな考え方に正面からNOを突き付けた、少し変わり者のおひめさまがいたのでしたーー。

むかしむかし、美しい姫君がおりました。
その美しい姫ぎみは、蝶をたいへん愛していたので、「蝶めづる姫君」と呼ばれていました。その美しい見た目と、かわいらしい趣味から、たくさんの貴公子からラブレターをもらっておりました。


 …そんな美しい姫君の隣に、「虫めづる姫君」と呼ばれるおひめさまが住んでいました。何を隠そう、この作品の主人公は、こちらのおひめさまなのです。両親は「虫めづる姫君」を、たいへん大切に育てておりました。

 しかし、この姫君のお話しすることは、世間のおひめさまとは少々変わっているのでした。

「みんなは桜や蝶を美しいと褒めるけれど…、
分っていない人ばかりであきれるわ。

人間というものは、見た目ではありません。
そのもっと深くにある…、『本当のすがた』を見なければいけません。
それを探究する姿勢こそが、たいへんすばらしいのです」

 これが虫めづる姫君の考えでした。
 聡明なお考えなのですが、行動が少々変わっているのです。

 見た目は気にしないといいながら、あらゆる恐ろしい虫を集めるのがお好きでした。
そして、「これが成長する様子を見てみたい」と言っては、立派な虫かごで飼っているのでした。
 その中でも、姫君のお気に入りは、毛虫でした。

「毛虫は風情があって、なんてすてきなんでしょう…」

 そういって、朝な夜な、手のひらに乗せて、じっと見つめているのでした。まるで寝どこに寄り添う恋人たちのよう。
そんな様子から、「虫めづる姫君」と呼ばれているのでした。 

 そんな姫の様子ですから、姫にお仕えする女房たちは、すっかり怯えていました。そこで虫めづる姫君は、まだ幼い男の子の召使いを呼び寄せて、箱の中の虫をとって、名前をつけて可愛がっておりました。

 虫めづる姫君の不思議なところは、それだけではありませんでした。

続く…

最後までよんでくださってありがとうございました!🌟