【気まぐれエッセイ】自虐的なワガママ

「可愛く生まれたら得だよね~」
私の隣にいる女の子が、目の前にいる客に褒められているのを、私はどういう気持ちで受け止めれば良かったのだろう。

私とその子をニヤニヤ見比べながら、言うんだよ?

今すぐその場から立ち去りたかった。

私だって、一生懸命生きているのに。その子が可愛いのは、努力の成果でもなんでもないのに。
なんなら絶対、綺麗になるための努力を、私はその子の何倍もしてきた自信がある(それは決して自慢したいことなんかではなく、むしろ隠しておきたい事実だけど)。

ときどき微笑み相槌を打つだけで、見た目が美しければ「上品」だと言われる。私が同じことをすれば、喋れない、つまらない女と言われるのに。


赤坂のお店に勤めていた頃は
「銀座の女の子たちは、整形でも何でもして、とにかく自分を美しく見せようとしているよ。君とは違う」と言われた。


銀座のお店に勤めていた頃は
「銀座は頭、六本木は見た目重視なんだよね」と
頭の方を褒める形ではなく、暗に見た目をけなすニュアンスで言われた。


男たちの評価は、悔しいけれど私の生活を握っていて、だからこそ余計に、本来ならどうでもいいはずの(恋愛対象になんて到底なりえないような)男たちの言葉に深く傷付き、振り回され続けた。それが私の20代。


だから私はいつも口癖のように、彼に言ってしまう。


「可愛く生まれたら得だよね」って。

「え?何言ってるの、得してる部類でしょ」っていう否定の言葉が欲しいがために、私は何度も何度も言ってしまう。

その度に彼が言う。
「俺にとっては十分可愛いし綺麗だけど
損をしてきたと思うのならその分俺が、得をさせてあげるよ」って。

そんな言葉をくれる人に愛されているだけで
私、本当は全然損なんかじゃないよね。

分かっている。

でも、多感な時期についた傷は
なかなか癒えるものではない。

だからごめんね。
もう少し言わせてほしい。
自虐的な、ワガママを。


幸せな時間で人生を埋め尽くしたい私にとって書くことは、不幸を無駄にしない手段の1つ。サポートしていただいたお金は、人に聞かせるほどでもない平凡で幸せなひと時を色付けするために使わせていただきます。そしてあなたのそんなひと時の一部に私の文章を使ってもらえたら、とっても嬉しいです。