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【映画メモ】グラン・トリノ

■公開:2008年/アメリカ、2009年/日本
■監督・主演ともに、Mr.クリント・イーストウッド。
■脚本:ニック・シェンク


※ネタバレあり。

言葉にすると薄っぺらくなってしまいそうで、とても表現に迷います。

一言で表すなら「命」の物語。

それを懸けて、それを教え、そして償った、それによって救われた、のかもしれない1人の男性の生き様を描いたお話。


人種差別や貧困などの問題も絡み、観る人によっては、また違った感想になるかもしれないですが、私にとってこの映画は、死をもって生を表したそんなお話でした。

朝鮮戦争で若い兵士を殺めた経験を持つ元軍人の主人公ウォルト・コワルスキー。最愛の妻も亡くし、嫌というほど人の死を思い知った彼の救いになればとやってくる若い神父の存在が対比となり、残酷さを際立たせていました。だからこそ、聖職者である彼が怒りを露わにし、コワルスキーと一緒にビールを飲む姿には涙腺が緩みます。


頑固な性格で実の息子とすら上手く関係が築けない孤独なコワルスキーが心を通わせはじめる隣人、モン族(アジア人)の姉弟スーとタオ。彼らとの関わり合いを観ていて、寂しさや虚しさから人を解放するのはやっぱり、自分以外の誰かを思いやること、人の役に立つこと、人と心を通わせることなのだとひしひし感じます。


罪の意識を抱えたまま自分の命を、誰かの、何かかの、ためにと意味付けして終わらせるコワルスキーの選択が、永遠の0の宮部久蔵のそれと重なりました。


そんな重いテーマを扱いながらも、軽やかさやアメリカ映画らしい格好良さを出しているのが、タイトルにもなっているコワルスキーの愛車、グラン・トリノの存在。


最後にふと、彼の愛車グラン・トリノは、キャリー(Sex and the City)にとってのマノロブラニクの靴みたいだ、と車に疎い私は思いました。胸にズシンとくるストーリー。でも最後にそんなことをふと思っちゃうような、不思議な味の映画です。

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