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受難に見舞われた名画たち①

 最近、環境保護活動家による「名画襲撃」が話題になっています。

 日本のSNSで本格的に話題になったのは10月14日、ゴッホの「ひまわり」にトマトスープが投げつけられた事件からです。

 実は今年5月にも、ルーブル美術館の「モナ・リザ」が被害にあっています。

 美術品は人類の財産ですが、さまざまな形で受難に見舞われています。

 損壊、盗難、戦災による焼失の他、所有者を転々とするうちに行方不明になることもあります。

 今回のシリーズでは、名画を襲ったさまざまな形の「受難」を紹介します。現在の環境活動家たちの行動は非常に評判が悪いですが、実際に傷つける意図がないだけ文明的に思えることでしょう(笑)。

「モナ・リザ」を襲った災難

 まず、レオナルド=ダ=ヴィンチの傑作「モナ・リザ」は、単体で何度も災難にあっています。

①1911年8月21日、ルーブル美術館に所蔵されていた「モナ・リザ」は盗難にあいました。犯人はヴィンチェンツォ・ペルージャというイタリア人でした。

 彼はイタリア民族主義者で、イタリア人の手による傑作はイタリアが所有すべきと考え、犯行に及びました。その後、「モナ・リザ」は2年にわたって行方不明となりました。

 しかし、ペルージャがこの絵を画商に売ろうとしたために犯行が発覚。「モナ・リザ」はルーブル美術館に返還され、ペルージャはイタリアで6か月の刑を受けました。

②・③1956年には、ルーブル美術館内で2度にわたって入場者の襲撃を受けました。1度めは酸をかけられ、2度目は石を投げられてダメージを負ったのです。相次ぐ襲撃により、「モナ・リザ」は強化ガラスで保護されることになりました。

④1974年、「モナ・リザ」来日中のできごとです。東京国立博物館は、混雑を少しでも回避するため、介助が必要な人の入場を拒否していました。

 これを障碍者への差別と考えた活動家の女性が、抗議のため「モナ・リザ」にスプレーを吹き付けましたが、幸い絵にはかかりませんでした。

⑤2009年、ルーブル美術館を訪れたロシア人がカップを「モナ・リザ」に投げつけました。直前にフランス市民権の申請を拒否されており、その腹いせでした。

 冒頭の事件を合わせると、ルーブル美術館に所蔵されてから実に6回も危害を加えられたことになります。「モナ・リザ」には、人を狂わせる魔力でもあるのでしょうか。

(続く)


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