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GTP in San Diegoの備忘録 2日目(後半)「完璧な学校はない」と気づいて

2/22。GTP in San Diego 2日目。
3日間のハイテックハイ(以下HTH)でのツアーを時系列に沿ってみていく。
(一部写真は他の参加者の方が撮影されたものを含んでいる。)

ミウラエリ
<自己紹介>
東京出身。2020年3月から、鳥取在住。
教員(今のところ、英語)。29歳女性。

前回の記事はこちら。


午後の授業:ゲストスピーカー登場

Dexcomという会社からのゲストスピーカーがJohn先生のクラスへ。

Dexcomはいわゆるヘルステックの会社で、糖尿病患者に向けて、スマホと連動しながら簡単に血糖値を測る器具を提供している。当日は、その製品を実際に手に取る場面もあった。

G7と呼ばれる商品
実際に紙コップを肌にもして装着

このプロジェクトでは、生徒達がwellness(健康)や食というテーマについて考えている。というのも、彼らは間も無く卒業する。親元を離れて大学生活に入る生徒がほとんどだからだ。そんな彼らに自分たちがどう人生を歩むかを考えるきっかけにしてほしいと組まれた講演だった。
HTHでは、年始にプロジェクトを保護者とも共有し、そこから生徒の保護者でもある社員が学校に出向き、講演する流れになったそうだ。

創業者自身が糖尿病で、自社の製品を使っているということもあり、持病を持っている私としては、「自分のペインにここまで向き合って、仕事にすることがあるのか」と目が開かれる思いだった。

午後ということもあってか、生徒によっては話そっちのけといったところだろうか。横になる生徒やスマホをいじっているような生徒もちらほら。日本の学校なら、先生が回ってきそうなものだが、John先生はそうはしない。最後に質問となると、まず初めに手をあげたのは、ずっと落書きをしていた生徒だった。(「コレステロールは影響しないのですか?」という内容にも関連した質問)質問の流れは止まらない。
少なくとも自分の学校なら(いや日本なら?)、「お行儀よく」聞いた上で質問と思ってしまうから、カルチャーショックだった。

生徒の声を直接聞けた3日間

実は2日目以降意識して、意地悪な質問を生徒にした。
「つまらないプロジェクトはあった?」「大変だったことはない?」など。
実はこれだけ練られていても、「数学でキャラクターをかく授業があって大変だった」「クラス全体で50ページのレシピ本をまとめるのに苦労した」「ほとんどないけれど、説明がよくわかない先生がいて別の先生に相談したことがある」など、本音を率直に話してくれた。

3日目のスナックパーティー兼ランチで、私の横に座ってくれた生徒は、プログラミングが得意で、学習言語によっておとぎ話を生成するサイトを作ったという生徒。自分でスペイン語を学ぶ中で、思いついたサービスらしい。

HTHではプログラミングは指導ができる先生は少ないらしい。ということはほぼ自力(!)

それだけ学びに対して真摯なせいか、「プロジェクトだけでは知識が身に付いていない部分もある。より実用的な知識を身に付けたい」とバッサリ。
(ちなみに、彼はメルティキッスのチョコを気に入って、持って帰りました。そんな彼のサイトはデザインも普通にありそうなサイトすぎて怖いので、ぜひ見てください。)

最終学年でもある12年生は、批判的な視線も持ちつつ、きちんと自らの考えを話してくれたことが印象に残る。

大学院も設置しているHTH

体育の授業はないHTHでのスポーツイベント

この日は先生と生徒のバスケットボールマッチも!先生チームと生徒チームに分かれるイベントらしい。(一試合でサッパリ終了。)

Gymがある建物の横が小学校やShinyaさんの通う大学院で、少し様子を見ることもできた。

料理がテーマの小学校のプロジェクト


(餃子は日本料理でいいのかと思いつつ)家庭料理を共有するプロジェクト

小学校の教室にはそれぞれのプロジェクトの説明も書いてあった。(日本の環境で英語のプロジェクトを実施するなら、このレベル感でもいいのではないかと少し思う。)

ひっそりある大学院の教室

高校を作った後、その実践をきちんと見直す機関として大学院を設置した点も、HTHならではだろう。
実は、12年生の英語を担当するPat先生もこの大学院にパートタイムで通っている。教師にも、自分の実践に対するリフレクションの姿勢が求められているのだ。

John先生への質問:フィールドワーク・ゲストスピーカーとの関わり

John先生への質問タイムでは、Dexcomのような外部連携先との繋がりについて質問が出た。
そこで見せてもらったのは、「receive(受動的)」「reciprocal(相互的)」の横軸、「school(学校)」「field(フィールド)」の縦軸の象限に分かれた表。

フィールドワークだとしても受け身で話を聞くだけのものもある。
理想的にはフィールドに出て、生徒とコミュニティーパートナーお互いに良い影響を与えるもの。
どう能動的な学びを入れていくかだけでなく、コミュニティーパートナーとお互いに利のある良い関係を築けるかどうかという視点が必要なのだ。

1日の振り返りをWalking Reflectionで

1日の終わりに、Walking Reflectionの時間に。近くの川沿いまで歩きながら、振り返る。
天気がいい日が多い、サンディエゴならではの瞬間だった。

先生はどんなタイミングで指導する?

教室に戻って、参加者とShinyaさんで振り返りもした。
そこで最初に話題になったのは、先生からの指導はどのような場面で入るのかといったことだ。(例えば、講演中に寝てしまっている生徒は注意しないのかなど)

大学院に通いHTHを実習で見ているShinyaさんによれば、HTHでは、授業中の生徒の出入りも激しいのだが、実際にはどの授業でも出欠を確認している。
授業によっては、トイレに行っていることを記録するようなシートも教室に置かれている。
ただし、しつけ的な部分をどこまで注意するかは先生による。私たちが見ている場面でも、John先生は12年生の授業中、スマホ使用をあまり気に留めていないようで、教室にあるスマホ置き場は形骸化している。一方で、Lisa先生の10年生・英語のクラスでは、あまりにもスマホをいじる生徒のスマホを取り上げている場面にも遭遇した。一応、HTHでは授業中スマホの利用は禁止されているが、それを指導するのも、個々の教員に任されている。
(John先生も人権に反することなどに関しては厳しく注意している、とShinyaさん。)
「プロジェクトには波がある」というJohn先生は、そのように生徒に集中の波が来ることを認めつつ、遅刻が重なっている生徒などに、1対1で話しかけにいくこともあるという。

ただ、ゲストスピーカーを招く際、学校の教員からもどのようなデザインにしてほしいか伝えられるだろうともなった。
普段から子ども達に触れている先生は、生徒の集中力が20分ほどしか持たないこと、また残酷にも話が上手い人にはのめり込むことを理解している。
休憩を挟んだり、アクティビティを挟んだりすることを提案してもいいのではないだろうか、とも思えた。

HTHでも全ての子どもに対応することはできない

もう一つは、プロジェクトが苦手と発言した生徒もいたこと。
ものづくりに苦手意識のある生徒や、プロジェクトに懐疑的な生徒がいることも事実だ。

全ての生徒に合わせた完璧な学校を作ることはできない。
それは事実であるとHTHの先生たちも認めている。

HTHでは、クラスを勝手にスキップする生徒が問題にもなっているようだ。
一方で、それは教員側の働きかけの問題ではないかという振り返りにもつながっているらしい。

自分の場合、「私のせいかもしれない」と思うと、「反省」が始まってしまって心苦しい。
「どう働きかけるか」というアクションにつながる振り返りができればいいのだが。
そのような意味で、HTHの先生たちは安易に「子どものせいだ」とはしない。それは思考停止を招いてしまい、リフレクション・振り返りに重きを置くHTHの文化とは違うものだろう。

HTHも完璧ではないが最善を尽くそうとしている一つの学校に過ぎない。
そんな思いを抱えながら、「ここまでの作品作りに挑める文化とは?」「これはさまざまな学校で再現できることなのか?」という問いを抱えて、最終日を迎えることになる。


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