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シュペルターと歩む15年記 #16

コラム11:マンスリー梯子


リングワ・ラティーナ(Lingua Latina)2014


前回に引き続き、『マンスリー管理職』に寄稿した内容の紹介です。

コラム5:世界の中心でお土産を叫ぶ』と
コラム7:フランス旅行記 その1赤の章』を繋ぐ
ミッシング・リンクである、南イタリア旅行の様子も
ちょっとだけ出てきます。

それでは、梯子酒ならぬ、梯子マンスリーいってみよう!

2014年3月の投稿
みなさん、こんにちは!
今回はグローバル時代到来!(いつの話!?)にふさわしい
語学に関する話題に触れてみたいと思います。

ところで『マンスリー管理職』はシステム上、2000文字の文字数制限が
あるという話を聞きまして、ダラダラ長文を書いてしまった後は、
文字数制限を気にして、1,2,3…と文字を数えているのですが
数え間違いをして、最後のオチの部分が(オチないですけど…)
消えてしまうのではないかとハラハラしています。

しかし最近になって、Wordで文字数が表示されることを発見しました。
今迄はマンスリーに直接書き込んでいたんですよね。

今回はWordに一旦書き込んで文字数を確認しながら、
余裕で執筆活動にいそしんでいます。

ちなみに文字数が2000文字に近づいたら、切りの良いところで、
次回に続く!
となってしまう運命です。
といいつつ、ここまでで既に362文字無駄遣い


人が外国語を勉強する目的は大きく言って、
二つに分かれるのではないでしょうか?

一つ目は仕事やその他目的で利用するニーズがあるため
(よく言う”私にとって語学はToolです”という
ちょっとキザったらしいやつです。)←個人の感想です。

二つ目はいろんな言葉を話せるようになりたい。
そして世界の人コミュニケーションを取りたい!
というポジティブなものですが、
どちらかというとコミュニケーションは語学を習得することへの
動機づけであり、目的は語学そのものというパターン。
(まぁ語学マニアというものでしょうか。)
なんかこう書くと、二つとも角の立つ言い方になっている。
キザ派の人も、マニア派の人も許してね。)

かくいう私は、日本語の他は学校で習った英語(大したレベルではない)
と中国赴任中に勉強した中国語
(最近英語のレベルが下がってきたため、逆に中国語も英語並みと言える)が話せます。

さらに超片言イタリア語フランス語を勉強しています。
(あっ、今は勉強していません)

なぜわざわざイタリア語、フランス語を勉強したのかといえば、
あまり人に自慢できる理由ではありません。

以前出張で結構頻繁にミラノに行っていた時にも
イタリア語は勉強しなかったのに、
一昨年くらいにちょこっとかじりました。

中国赴任中は
『どうせ外国にいるんだから、さらに別の国に行っても同じことだ』
という錯覚に囚われ、広州から近場の東南アジアなど。
家族で結構いろいろな国を旅行しました。

そして2012年、
いよいよアジアを出るぞ、今度はイタリア旅行だ!と計画を開始。

現地の日系旅行会社にアマルフィー海岸のガイドを頼もうと
インターネットで調べて見積もりを取った所、
車およびドライバー代に比べて、日本語を話せるガイドの料金が
なんとも高額である事がわかりました。

べつに興味あるところをゆっくり見て回るだけなので、
はとバスツアーのバスガイドさんのような説明は要らないのですが、
最低限の意思疎通は必要でしょう。

そのくらいならこっちがイタリア語を話せるようになれば良いのだ!
と勉強することを決心したのです。

仕事では全くそんな気にならないのに、
なぜ人間はこのようなつまらない事には力が湧くのだろう?

『同情するなら金をくれ、旅行に行くなら現地語を話せ!』の精神で、
フランス語も昨年ほんのちょっとばかし勉強したのです。

犬を飼うなら、犬語を話せ!(すべてに条件が付くものなのだな)

この経緯からいうと私がイタリア語、フランス語を勉強する目的は、
よく言えば一つ目の目的である
仕事、その他目的で利用”っていうのになるのかもしれません。


イタリア語やフランス語を(少し)話せるようになったり、
実際にその言葉を使って何かをするという以外に、
イタリア語とフランス語を勉強していて、少し気付いた事があります。

これは、語学を学ぶ第三の目的になり得るかもしれません。

しかしそれは一旦置いといて、付け焼刃語学学習をして望んだ
イタリア、フランス旅行がどうであったかをまず話したいと思います。

『だいたい、海外旅行に行くのに、
いちいちその国の言葉を話せるようにならなきゃいけないのなら、
どこにも行かれん!英語が少しできれば十分だ』
と思われるでしょうが、その通りです。

しかし観光大国でありながら、完全にそうとばかりも言えないのが
イタリアフランス侮れないところです。

まずはイタリア旅行から
2012年、広州からエールフランスでパリを経由してナポリに到着。

空港で、手配していた旅行会社の車にピックアップしてもらい
アマルフィまで行きます。

日本語ガイドは要りませんのでその分、安くして”
とメールで値切った旅行会社です。

ドライバー氏(当然イタリア人、英語は少ししゃべれるらしい)に、
『運転以外の仕事が増えたではないか!
そもそも”日本語ガイドなしで大丈夫!”と大口を叩いたのだから、
貴様のイタリア語はさぞかし素晴らしいのだろうな!』
などと思われてないだろうか?とドキドキしながら、
『Piacere(はじめまして)、Mi Chiamo Totom(トトムと言います)』
と話しかけると、普通に通じました
[以後の文章では、イタリア語でしゃべったセリフはくどいので、( )付き日本語で書きます。イタリア語の綴りもだいぶ忘れてますし。]

ドライバーさんお久しぶりっす

特にイタリア語の発音を猛特訓したわけではないのですが、
英語初心者に対しやってはいけない事の代表のように使われる
ローマ字読みという言葉!
しかしイタリア語はまさにそれなのです。


ローマ帝国は西暦117年には、
ヨーロッパほぼ全土北アフリカから中東諸国まで版図を広げた大帝国
いっそ世界中の国をローマ字読みに統一してくれていたらとも思いますが、
ローマのホームグラウンドは言わずと知れたイタリア
イタリアローマの精神が宿っているのです。

ある朝、通勤中の駅でこんな光景を目撃しました。
乗り替えに使う駅は、なぜか朝なのに回送電車が止まっています。
その回送電車に書かれた『Out of service』という表示を見た
中学生男子同士の会話が聞こえてきました。
(体格的には高校生のようにも見えたのだが、武士の情けとして、
まだ英語を勉強し始めて間もない中学生だと思っておこう。)

『これなんてかいてある?』
『アウト オブ …えーっと?? セルバック?
これが英語初心者→ローマ字読みと揶揄される由縁なのでしょうが、
Service”が本当にセルバックと読むのであれば
ローマ字読み→初心者とはならないである。
ただし、ローマ字読みするにしてもせいぜい、”セルビセ”じゃないのかい!Hey Boys!

アウトオブセルバックで行こう!



そんなわけで、イタリア語はスペルの読み方シンプルで
その発音も日本人には相性ばっちり。
日本人にとって易しく中学生男子にも優しいのです。

とか言っているうちにアマルフィに到着。
ドライバーさんとコミュニケーションが取れたのに味をしめて、
ホテルにチェックインしてからも、できるだけイタリア語を使います。

アマルフィの街はとってもおしゃれ
でもお土産物屋さんのテイストについていくにはガッツが必要です。



”ビーチに行く方はバスタオルをフロントでお貸します。”と
部屋にあるホテル案内に書いてあるので、さっそく
『(ビーチに出かけます、バスタオルを貸してもらえますか?)』
と聞いてみました。

上のように書くと、試しにさらっと言ってみたように聞こえますが
実は事前に練習して今回は文法に凝ってみました。

ラテン語に特有の複数不定冠詞をバスタオル(アスチューガマーノ
の前につけて、敢えて始めは何枚ほしいのかは言いません。
すると『(何枚必要ですか?)』。来ました!予想通り
で余裕で『(2枚お願いします)』。

一応演出として、とりあえずビーチに行くならバスタオルはいるな、
気楽に尋ね(実はめちゃくちゃ準備したのですが)、
枚数を聞かれて、あぁ2枚かな?とその場で考えてさらっと答えた風
(実は枚数も”海に入るのは私と娘だけなので、3枚とかいうと贅沢だし、
やっぱり2枚でいいよね”と事前に検討
にしてみたのですが、大成功!
もう気分はイタリア人です。

このビーチに行くのにこれほどまでの水面下の作戦があったとは!

あっ、ごめんなさい
もうすぐ2000文字になってしまいます。
それではみなさん次回までごきげんよう!

2014年8月の投稿
前回の続きで、イタリア語・フランス語編(後編)です。
アマルフィを後にしてフェリーカプリ島に向かいます。
カプリ島は超有名観光地だし、ここだけは英語の通しでOKかな、
と思っていたところ意表を突かれました。

フェリーを降りて、予約したホテルのポーターさんが
波止場で待機してくれているはず、とキョロキョロしていると
立派なホテルの制服を着た人が近づいて来て、
『(ようこそカプリ島へ)』みたいに話しかけてくれました。
Mr.Totomというボードもなく、こちらから話しかけたわけでもないのに
なぜわかったのだろう?東洋人とか意外と少ないのかな?

しかし、いきなりイタリア語
『(ホテルには登山電車で行きますか?タクシーに乗りますか?)』
と言っているようである。
(ちなみにカプリ島はホテルのある市街地エリアが急な崖の上にあり、
港からは乗り物で移動しないといけない)

咄嗟に『(登山電車の後、ホテルは近い?遠い?)』というような内容を
単語を適当に並べて聞き返したのですが、通じて良かった。
(とっても近いです)』というので、登山電車に乗ることにしました。

とっても近い”という割には、登山電車を降りてから
なかなかホテルを見つけられず、
途中2回ほど、『(QUISISANAホテルはどこですか?)』
と道を尋ねるくらい迷いましたが。

名門ホテルに着くまで、登山電車を降りてから路地を奥へと進みます
理由があります。カプリ島の港とは反対側の景色が見える一等地なのでした。



 イタリア最後の宿泊地、ナポリでもイタリア語は活躍
『(10時発パリ行き飛行機に乗ります。
スーツケース2つ積めるタクシーを呼んでください。)』
とホテルのフロントにお願い。
最後は修飾語満載の長文に挑戦でイタリア語の総仕上げです。

すでにイタリア語母国語のように感じるのは気のせいでしょう。

イタリア語とは関係ありませんが、ナポリのホテルのエレベーター! 木製でドアは手動開閉
夕陽に照らされるサンタ・ルチア


イタリアから広州への帰途もパリ経由。
せっかくだからとパリでも一泊
レストランなど英語が通じないところもあり、
訪問国の言葉が話せないというのは、心細いものでした。

次にパリに来る時には絶対にフランス語を勉強するぞ、と誓いつつ帰る。
一年後の2013年にフランス旅行再挑戦

またしても旅行の3か月前に勉強開始。

フランス語はなんせ発音が難しい。特にの発音。

おなじみのフランス語といえば、
やはりボンジュール(Bonjour)メルシー(Merci)でしょうが、
学習CDによると”ボンジュー”、”メシー”なのです。

rの発音は軽くうがいするような ” は・ひ・ふ・へ・ほ 

どうも単語が覚えやすいかどうかは発音が出来るかによるようで、
フランス語単語は全然覚えられない。
それでもなんとか本を2冊勉強して出発。

パリについて本場のフランス語を聞くと…あれ?
やっぱりボンジューとかメシーとか普通に聞こえるんですけど…
外国人向けに発音してくれているのか?
CDの発音が極端なのか?と悩む。

それでも買い物したりとかには十分役立ちましたね。

(注:この時のフランス旅行は
シュペルター親父と歩む15年記 #11~#13でお届けしたものです。)

長々とした旅行記はこのくらいにして、
イタリア語のフランス語の共通点相違点を挙げて見ましょう。

共通点
イタリア語、フランス語はどちらもラテン語系の言語ですので、
文法上共通点があるのは当然なのです。

すべての名詞男性名詞女性名詞と性の区別があり、
その名詞と一緒に使う形容詞冠詞(英語でaとかtheに相当するけど、
いっぱいありますよ。)が名詞の単数か複数かにより変化する。
英語ではa black catの”a”と”black”はでも、三連星でも変わりませんが、
イタリア語、フランス語では名詞との組み合わせで変わるという事です。

らてん語であそうぼう!のコーナー

動詞は時制と主語の人称単複により多彩に活用する。
英語の一般動詞現在時制だと、原型もしくは最後にsを付けたものの2種類
現在時制以外は過去過去分詞1種類ずつです。

そもそも、なぜ主語によって動詞の形を変えたかったのか
日本人の感覚ではわからないのですが、イギリス人をしても
”さすがに過去の事なら誰がやったかまでこだわる事ないじゃん!
ましてや過去分詞などといういつの事かわかんない形ならなおさら。”
1種類ずつにしてしまったのだろうと思います。(根拠薄!

しかしイタリア語、フランス語では”簡単にする”を良しとしなかったのか、
大変な動詞活用繁栄ぶり。
イタリア語では助動詞と組み合わせると
一つの動詞の主要な活用(直接法)だけでも48種類もありました。
ラテン語圏の人々の記憶力はスゴイと感心することしきり。

もうラテン語では遊べない!のコーナー


ただ同じラテン語を起源にもつ言語でも、
その国の風土文化に応じて独自の発展を遂げているようです。

勉強した限りでは3つの相違点に気が付きました。

相違点一つ目 文章の主語
イタリア語は主語の代名詞(IoとかTuとか)はたびたび省略する。
これは主語の人称に対して細かく動詞の活用形が異なるので、
動詞さえ言えば主語が特定されるという文法上の面もありますが、
わかることをわざわざ言うのは野暮
という美意識もあるのでは?とも感じます。

なぜならフランス語でも動詞の活用は同じなのに主語は省略せず、
それどころか主語の前にさらに強調形の主語重ねて置き
誰が”というところを殊更強調します。

わかっていても、”あなた”と”私”の違いは言葉で
はっきりとさせておきたいということなのでしょうか?

相違点二つ目 疑問文
びっくりするかもしれませんがイタリア語には疑問文の文法がない
語尾を上げるだけでどんな文でも疑問文になります。
”どうせ聞いても真実なんてわかりゃしないんだから”と
疑問に思ったり、質問したりすることに
あまり情熱を燃やしていないのでしょうか?

それに対してフランス語では疑問を表すのに
標準的な文法3種類もあります。
・イタリア語と同様に語尾を上げる方法
 (これは日本語でもありますし、結構世界共通っぽい)
・主語と動詞の順序を入れ替える方法
・疑問を表す特別なフレーズ(Est-ce que)を文頭に付ける方法
疑問の程度にレベルを付けて効率的且つ
重要なものは徹底的に追及したいということでしょうか?

相違点三つ目 言葉の響き
イタリア語は冠詞名詞形容詞がすべて同じ母音で終わるように
一斉に変化して徹底的にを踏みます。
先に述べた名詞の性の区別単数・複数に対する
冠詞形容詞の活用は文法的な必要性よりも
話し言葉に詩的な響きを出すためなのでは?
と疑いたくなるほどです。

フランス語も単語はいろいろと変化します。
しかし韻を踏むという感じはなく、単語を文章として続けることで
前後の単語との綴りの繋がりまでもが、発音の法則に従い、
発音が変化したり、発音しなかった音が発音するようになったりします。

フランス語は綴りは長いのに、発音が非常に短い単語が多いのですが、
これが文章になり、法則性に従って隠されていた音を表に表す
というような変化をさせること自体
魔法のように楽しんでいるようです。

これらに挙げた言語の特徴だけでもなにやら国民性が見えてきませんか?

やっと結論になりますが、
前回冒頭に書いた言語学習の三つ目の目的として次のことを提唱します。

その言語を使う機会もなく、会話能力の習得を目指さずとも、
言語の特徴文化・国民性対比させて分析することを楽しむ
いわば趣味の言語学者というものでしょうか。

トトム2023
いや、やっぱり南イタリアいいなぁ。
言語学習第三の目的に全く興味はなくとも、
少しだけでもイタリア語を勉強して行ってみると
イタリアの魅力がアップすること間違いなしです。



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