【トイレデザインの挑戦③】 歴代デザイナーが語る「ネオレスト」ーーグローバルに拡がる「ネオレスト」の世界
初代「ネオレストEX」から海外市場を視野に入れていたネオレストシリーズ。2代目「ネオレストEX」(2002年)より海外展開を開始し、2009年には初の海外専用モデルを投入しました。その後も海外市場のニーズも採り入れた進化を続け、デザインとテクノロジーが高度に融合したトイレとして、「ネオレスト」はグローバルに拡がり続けています。
2022年8月に誕生した「ネオレストLS」は、TOTOとして初めて「アクセントカラー」という概念をトイレに導入しました。これは、海外で一般的なバスルーム[※1]でのコーディネートを意識した結果といいます。
最終回の今回は、海外市場を意識したデザインの広がりという観点で、「ネオレストLS」(2022年)を担当した大塚航生を中心に話を聞きます。
聞き手:TOTO株式会社 広報部 本社広報グループ 桑原由典
ミラノサローネと「静かなる存在感」
――大塚さんが「ネオレストLS」に関わり始めたタイミングでは、フラグシップモデル「ネオレストNX」(2017年)が存在しているなど、ラインアップがかなり充実していました。初代を手がけた橋田さん、定番スタイルを確立した高橋さんとは違った難しさがあったのでは?
大塚: TOTOのデザイナーとして、TOTOの根幹ともいえる「ネオレスト」に関われることは、誇らしいとともに、プレッシャーも相当なものでした。
「ネオレストLS」を担当するにあたり、大学で学んだデザインマネジメントのスキルも活かして、「ネオレストとは何なのか?」を自分なりに整理したいと考えました。そこで、ネオレストに関わってきた先輩デザイナーたちへヒアリングしました。
印象的だったのは、2代目の「ネオレストEX」のときに、デザインフィロソフィー「静かなる存在感」が誕生したことです。
高橋: 2代目のネオレストEX(2002年)は、TOTOが2005年に初めて「ミラノサローネ[※2]」へ出展したときの目玉商品の一つでした。その時に、ネオレストEXのデザインコンセプトとして「静かなる存在感」を掲げたのが始まりです。
大塚: 「静かなる存在感」はその後、ネオレストだけでなくTOTOの水まわり商品全体に通底するデザインフィロソフィーとなっています。そういう意味でもネオレストは、TOTOのデザインの礎なんだなと、改めて実感しました。
橋田: 「静かなる存在感」が出てくる前にデザインされた初代ネオレストEX(1993年)は、登場感を強く意識したこともあって、少し個性が強いデザインだったのかもしれません。
2代目のネオレストEX以降、器具が主張しすぎることなく脇役となり、主役である人を活かす「静かなる存在感」をめざす方向に、ネオレストのデザインが向かっていったと思います。
――2006年の「ネオレストA」から2022年の「ネオレストAS」への系譜は、「静かなる存在感」の元で、ひとつのデザインコンセプトを洗練・進化させてきた流れとも言えそうですね。
高橋: 「静かなる存在感」を体現するためのデザインアプローチのひとつに、「ノイズレスデザイン」があります。「ネオレストA」から「ネオレストAS」への進化は、部品同士の隙間に生じる線など、視覚的に「ノイズ」となる要素を少なくしていく「ノイズレスデザイン」の追求とも言えます。
高橋: ノイズレスデザインはデザインだけで実現できるものではありません。内蔵する部品の小型化や人感センサーの新技術「マイクロ波センサー[※3]」の開発、コンピュータ・シミュレーションを高度に活用した生産技術など、さまざまなテクノロジーをTOTOが進化させてきたからこそ、「ネオレストAS」のようなシンプルな美しさを極めることができています。
孤高の存在感――フラグシップモデルの「ネオレストNX」
――「ネオレストNX」は、TOTOが創立100周年を迎えた2017年に発売されました。“真の一体形”をめざしたフラグシップモデルで、究極の「ノイズレスデザイン」とも言えそうです。
大塚: 「ネオレストNX」は、衛生陶器のメーカーとして1917年に創立したTOTOが、祖業である“陶器”の美しさをとことん追求して生まれたプロダクトです。
“壺”のような張りのある曲面をもった便器でウォシュレット[※4]を包み込み、通常は見せることがないトイレ器具の背面も含めて360度どこから見ても美しい、工芸品のような存在感があります。
橋田: NXは、“孤高の人”のような、突き抜けた存在感がありますよね。
大塚: 存在感そのものに“華”があるような、まさにフラグシップモデルとして、TOTOを象徴するプロダクトですね。
TOTOのデザインフィロソフィー「静かなる存在感」ですが、水まわり器具が脇役に徹するのであれば、「静かなる」だけを追求するという考え方もあると思います。でも、「静かなる」と対立する概念ともいえる「存在感」とセットになっているのが、面白いと思うんです。
「ネオレストLS」の開発にあたって、経営層から「海外市場の競合を視野に入れて、ネオレストのデザインを進化させよ!」という号令がかかっていました。「ノイズレスデザイン」の極北ともいえる「ネオレストNX」が既に存在している状況で、どうやってデザインをさらに進化させればよいのか……。
高橋: 「静かなる」というよりは、「存在感」に通じる、「プロダクトの魅力」をどうやって高めるか……。それを一番の課題として、大塚さんたち若手デザイナーに考えてもらうことになりました。
海外メーカーも「ネオレスト」の競合になる時代へ
――海外市場での競合となる欧米などのメーカーが、近年になって温水洗浄便座と便器が一体となった「スマートトイレ」と呼ばれる商品を強化してきたことが、「ネオレストLS」を開発するきっかけになったということですね。
海外メーカーがスマートトイレを手掛けるようになったきっかけの一つに、ドイツ・フランクフルトで開催される国際見本市「ISH[※5]」へのTOTOの出展が挙げられると思います。2009年3月の初出展時には、出展にあわせて開発されたネオレスト初となる壁掛けタイプ[※6]の海外専用品を展示しました。
高橋: 欧米の老舗水まわりメーカー各社が大きなブースを構える展示会に新参者として出展したわけですが、TOTOは「テクノロジー・イノベーター」として受け入れられたと思います。
欧米メーカーは、今でもそうですが、水まわり器具の「デザイン性」を重視する傾向が強いです。海外の住宅では、日本のようにトイレが個室になっているほうが珍しく、トイレ・洗面・シャワー(+浴槽)が1つの空間にセットになった「バスルーム」が一般的です。水まわり器具は、バスルーム空間を構成する家具のような要素としてもデザインされます。
一方、デザイントレンドに応じたモデルチェンジを繰り返していた当時の欧米の水まわり業界には、ある種の閉塞感があったと思います。デザインにテクノロジーを融合させた「ネオレスト」を持ち込んだTOTOは、刺激的な存在だったと思います。
橋田: 私は2008年8月にTOTOを辞めて、今の大学教授職の立場で2009年のISHを視察したのですが、TOTOのブースはすごくよかったですね。欧米メーカーからも歓迎されていた雰囲気を感じました。
それから10年あまりを経た現在では、海外の主要な水まわりメーカー各社にとっても、ネオレストのようなスマートトイレをラインアップに持っていることがステイタスとなっていますね。
――2006年の「ネオレストA」の競合は国内メーカーでしたが、2022年の「ネオレストLS」ではグローバルな競合を相手にする段階になっていたわけですね。
大塚: テクノロジー面での優位性は保っていましたが、デザイン面では海外メーカーに追いつけていない状況でした。
無くしたい部分を“魅せ場”へ大転換
大塚: 高橋さんが「ネオレストA」をデザインしたときは、日本のトイレ空間を前提に「トイレを正面から見たときのインパクト」を重視したという話でした。
海外市場での競争力強化が命題だった「ネオレストLS」では、海外で一般的なバスルーム空間に設置されることも考慮して、前からだけでなく、横から見たときのデザインも重視しています。さらに、洗面の水栓金具、シャワーなどの浴室の水栓金具などとの調和も重要です。
そうしたことを考慮して、商品の企画段階で「CMF[※7]をアクセントに取り入れる」「フルスカート形状の便器(後述)」「Dシェイプ(後述)」の3つを採り入れることが決まっていました。
――どのようにデザインを進めていったんですか?
大塚: デザイン部の推進リーダーのもとで、私ともう一人のデザイナーの2人で実務を担当しました。2人でコンペをするように競い合って、アイデアを出し合いました。
高橋: 大塚さんたちのデザインを持って、推進リーダーまたは私が、月に1回ほど経営層へプレゼンしたのですが、なかなかOKがでませんでした。
当時、デザイン本部は社長直轄で、海外市場を見据えた「デザイン強化」のために、社長自ら先陣を切って社内の意識改革を進めていました。デザイン部門への期待と共に、その裏返しとして、「ネオレストLS」のデザインへの要求は非常に高かったです。
大塚: とくに苦労したのは、CMFを実現するためのアクセントカラーの入れ方でした。便フタに入れたらどうかとか、エッジラインに入れたらどうかとか……。小さな付箋紙にスケッチをグジグジとたくさん描いていたんですが、その中の1枚が推進リーダーの目に留まって……。「これ面白いじゃん!」と。
橋田: TOTOを離れた立場から見ても、ネオレストのデザインをいろいろとやり尽くした中で、ネオレストLSのアクセントカラーは「素晴らしい! よくやった!」と思います。
大塚: ありがとうございます。うまくいったのは、従来の発想では「無くそう」としていた部分にアクセントカラーを入れるという発想が生まれたからだと思います。
――まさに、逆転の発想だったんですね。
大塚: そうです。ノイズレスデザインを極めようとする発想では、便フタを閉じたときの隙間=ノイズは、「無くそう、無くそう」としていました。ネオレストLSでは、その隙間にアクセントカラーを入れることで、逆に“魅せ場”へと転換できたんです。
加えて、便フタのヒンジ後ろ部分の納まりにも、新しい試みをしています。ネオレストLSでは、ウォシュレット本体を後ろに伸ばして階段状の構成にし、両側面のアクセントカラーが後ろまで走ってつながる、という構成になっています。
――ヒンジの後ろも“魅せ場”にしたんですね。
大塚: 同じフルカバーデザインでも、ネオレストNXやネオレストASは、ヒンジの後ろに注目させようという発想ではデザインされていません。ネオレストLSでは、従来は無くそうとしていた「便フタの隙間」と「ヒンジの後ろ」の2つを魅せ場に転換するという“発明”ができました。
ストレート袴からフルスカート形状へ
――陶器が後ろまで伸びている「フルスカート形状」の便器は、横から見た時の美しさという点で、わかりやすい魅力ですよね。高橋さんが手がけたネオレストA(2006年)の「ストレート袴」からさらに進化しました。
大塚: ネオレストAと同様、ネオレストLSも量産品のラインで便器をつくるので、実現は簡単ではありませんでした。
一方、ネオレストAからの十数年の間に、デジタル技術の活用などで衛生陶器の生産技術が進化していたり、デザイン側でもデザインエンジニアの役割を担う人財が充実するなど、“攻めたデザイン”がしやすい環境がさらに整っています。
経営層の後押しもあって、「海外市場を含めてグローバルにTOTOの存在感を高めるためにはデザインをさらに強化しなければならない」という理解が、社内で一段と深まってきていると思います。
“TOTOらしくない”Dシェイプを日本でも
――LSの特長のひとつ「Dシェイプ」は、日本ではあまり馴染みがない概念だと思います。海外では一般的なのでしょうか?
大塚: 海外のトレンドをけん引しているヨーロッパでは、トイレ器具はバスルーム空間へ溶け込むシンプルさが求められます。水平・垂直で構成される“箱”としての空間そのものや、周辺の棚や洗面台との調和が、なによりも重視されます。そのため、便座を含めたトイレ器具の平面形状の定型のひとつとして、半円と直線という幾何学形状の組み合わせで生まれる「Dシェイプ」が存在しています。
実は、「Dシェイプ」の採用について、「TOTOらしくない」という社内の意見もありました。というのもTOTOではこれまで、海外専用品など一部の例外を除いて、社内用語で「レスティカ・カーブ」と呼ばれている卵の尖った方のようなカーブ形状を採用してきたからです。
――日本国内のお客様を中心に長年にわたって提供してきたトイレのカーブ形状からの変更なので、社内に抵抗感もあったのですね。
大塚: 水まわり商品は頻繁に取り替える商品ではないだけに、見慣れた「形」への安心感があると思います。トイレを100年以上作り続けてきた企業として、これまでのトイレと変えるところ、変えないところをしっかりと見定めつつ、すこしずつデザインを進化させてきたのだと思います。
ネオレストLSでは、バスルーム空間を前提とする欧米のトレンドにあわせて、先端形状をDシェイプに変えるタイミングだったのだと思います。
一方、TOTOらしさとして、海外の水まわりメーカーにはあまり見られない特長があります。それは、「人にやさしいデザイン」です。
――真上からみたらDシェイプに変更した便座ですが、真横からみたときに後部がせり上がっているのは、人間工学に基づいて「排便のしやすさ」が考慮された形状ですよね。
大塚: そうです。総合研究所の基礎研究をもとに開発された形状です。ネオレストLSの販売後、Dシェイプの広い便座を見た日本のお客様から「座りやすそう」という好評の声もいただいています。アクセントカラー、Dシェイプ、フルスカートの便器――デザイン面でも新しい挑戦が詰まったモデルになったと思います。
建築への親和性と人にやさしいデザインを両立――ネオレストWX
大塚: 人間工学に基づいた形状だけでなく、デザインフィロソフィー「静かなる存在感」を実現するための基本姿勢のひとつとしても、「人にやさしいデザイン」を掲げています。
――2023年8月に発売した壁掛けタイプの新モデル「ネオレストWX」も、「人にやさしいデザイン」が強く意識されていますね。
大塚: ネオレストWXのデザインには直接関わっていないのですが、壁掛けタイプの最高峰モデルとして、特に欧州市場を強く意識してデザインされた海外専用品です。
欧州のニーズをそのまま受け入れると、「建築空間に馴染ませる」ことが優先されて、直線や平面を多用した幾何学的な――ジオメトリックなデザインになりがちです。ネオレストWXは、建築空間への馴染みのよさだけでなく、TOTOのプロダクトとして人にやさしい印象も与えられるデザインが模索されました。その結果、「ウェルカミング・ジオメトリーズ(Wellcoming Geometries)」という造形コンセプトにたどり着き、人をやさしく迎え入れるためのデザインアプローチがとられました。
ネオレストWXを真上から見ると、スクエア(長方形)とオーバル(楕円形)を組み合わせたような、いわゆる「角丸」のような形状をしています。高橋さんが手掛けた、初代ネオレストEXをルーツとする「ネオレストGH」(2013年)でも前方部分に角丸っぽい形状を採り入れていましたが、ネオレストWXでは真っ直ぐな部分はより真っ直ぐに、さらに前方だけでなく後方にも角丸を採り入れています。
――後方の角丸形状は、便器の形とも連動していますよね。
大塚: そうです。壁掛けタイプはもともと床から浮いていますが、便器後方を内側に回り込ませることで、壁からも浮いているような独特の浮遊感をもたらしています。
――「人にやさしいデザイン」というTOTOらしさを追求した結果、床からも壁からも浮遊しているような、独自のデザインが誕生したんですね。
大塚: テクノロジーだけでなく、デザインでもTOTOの独自性を出していくことが、これからの海外戦略ではより重要になってきます。
――建築空間への親和性に加えて、アクセントカラーの入れ方に独自性を打ち出したネオレストLSと、「人をやさしく迎え入れる」デザインを融合したネオレストWX。海外市場において、デザイン面でもさらに注目される存在になりそうですね。
大塚: そうありたいと思っています。
ネオレストLSを投入した2022年には、ネオレストのブランドメッセージ「Pure Luxury」が策定されました。また、グローバルモデルのラインアップとして、フラグシップのNXを筆頭に、LS、AS、RSというタイプ名称になりましたが、うしろの「S」は、「Style」なんですね。
LS=Luxury Style、AS=Advanced Style、RS=Relax Style、という意味なんですが、「お客様の暮らしに合わせて、ネオレストのデザインを選べます」というメッセージが込められています。
TOTOのデザインフィロソフィー「静かなる存在感」の根底にあるのは、「使う人が主役、デザインは脇役」という考え方です。お客様の暮らしを引き立てる“名脇役”になれるようなネオレストのデザインを、これからも考え続けていかなければと思います。
ネオレストに“色気”を醸し出す
高橋: そういえば、ネオレストLSの開発中に、大塚さんたちに「“色気”を出してほしい」とお願いしましたね。今思えば、乱暴な注文でした(笑)。
大塚: そうでしたね(笑)。
橋田: なるほど! “色気”の答えが、あのデザインだったんですね。合点がいきます。
大塚: アクセントカラーを装飾として取り入れることの是非について、販売部門だけでなく、デザイン部門内からも、「それって、本当に必要なの?」という声があがりました。
これまでに、テクノロジーとデザインの両面ですごいトイレをつくってきた会社だと思いますが、どこかで「所詮、トイレ」という冷静な目を社員が持っているんですね。「いやぁ、トイレにそこまで……」という“お客様目線”が、ふとした瞬間に出てきます。
「バスルーム」という建築空間への親和性がデザイン面で重視される海外とは異なり、トイレが個室の日本では、トイレ器具にデザイン性を求めているお客様は、まだまだ少ないのが現状だと思います。機能的に「掃除がしやすくて、汚れにくければよし」がお客様の声だとすると、究極的にはデザインが不要になってしまいます。
高橋: 「ノイズレスデザイン」だけの追求には、限界がありますね。
大塚: 商品を見た瞬間に、「これが欲しい!」と思ってもらえるような魅力をもたらすことも、デザインの重要な役割だと思うんです。
――まさに、TOTOグループの企業理念にある、「お客様の期待以上の満足」ですね。
大塚: そうかもしれせん。機能主義というか、合理性だけの追求の先には、“色気”は生まれないと思います。
高橋: 色気を醸し出すには、“心の余裕”みたいなものが必要だと思うんですよ。アクセントカラーの装飾パーツは、「シンプルで美しく、汚れにくい」という機能面だけでみたら説明がつかない。海外市場も視野に入れると、ネオレストのデザインにもいよいよ“色気”が求められるフェーズになってきて、その最初の商品がネオレストLSだと思います。
大塚: 実際にデザインしているときには、“心の余裕”はまったくありませんでしたが(笑)。
今後のネオレストについて
――最後に、今後のネオレストについて、一言お願いします。
橋田: TOTOは、機能・デザインの両面で、きめの細かい質の良さを感じさせてくれる企業だと思います。“きれい”って、機能面だけでみられがちですが、デザインからもたらされる“人の感性”にも響いていると思うんです。機能とデザインをセットにして、「ネオレスト」をはじめとして、今後も水まわり商品を進化させていってもらえたら嬉しいです。
高橋: 「ネオレストA」(2006年)をデザインしていたときにも思っていましたが、日本では現在でも、トイレはまだまだデザインで選ばれていないと思います。一方、例えばキッチン家電――炊飯器、トースター、電気ポットなどは、デザインで選ばれる時代になってきたと思います。トイレも同じように、デザインでも選んでもらえるような商品にしていくことが、デザイン部門の役割だと思っています。
大塚: 初代「ネオレストEX」(1993年)の橋田さん、「ネオレストA」(2006年)の高橋さんをはじめ、歴代のデザイナーによってネオレストはデザイン面でも進化をつづけてきました。日本国内では「ウォシュレット一体形のタンクレストイレ」として当たり前にある商品になっていますし、海外でも競合商品がどんどん増えていて、ひとつのジャンルを形成しています。
一方、「ネオレスト」の商品名に込められている「新しい(Neo)トイレ(Rest-room)」を、今でも体現できているのかどうか……。新たに投入していくネオレストが、本当に「新しいんだっけ?」と自問し続けることが大事だと思っています。デザインフィロソフィー「静かなる存在感」のもとで、デザイン面でもさらにハイレベルな挑戦を続けていくことが、「ネオレスト」に課せられた使命だと思います。