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長編連載小説『サンキュー』第849話。

「そうか?……じゃあ、もう、お父さんはダメだな?」
 俺がそう言って、軽く吐息を吐くと、映子が、
「そうね。覚悟しておいたほうがいいわね。あたしも、諦めてるの。実際、寺田先生に言われずとも、あたしには分かるわ。レビー小体型認知症が悪い類の病気であるのは、間違いないと思うし……」
 と返し、ゆっくりと、息を吐いた。妻も心配なのだ。パン職人として、仕事をしていても、実際、心配でしょうがないのだろう。俺は、単なるミステリー作家だから、介護などは、よく分からない。また、分かるわけもない。俺としては、仕事をするのは、家で、であって、たまに、朝倉市図書館に行く。俺にとって、仕事場は、基本的に家なのだ。他にする場所はない。(以下次号)

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