川光 俊哉 Toshiya Kawamitsu

第24回太宰治賞 最終候補 『夏の魔法と少年』 / 第6回林芙美子文学賞 最終候補 『…

川光 俊哉 Toshiya Kawamitsu

第24回太宰治賞 最終候補 『夏の魔法と少年』 / 第6回林芙美子文学賞 最終候補 『水族館で鬼ごっこ』 / 脚本 舞台『銀河英雄伝説』シリーズ他 / 二松學舍大学文学部国文学科 講師 / ポストメタルバンドlantanaquamara / Twitter @TKawamitsu

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詩 397

  呼 わたしは いつも 人ちがい マアカのふりして 愛がない 体温低下 指がない いつも いつでも いま 昼寝 空気は うすい 歌えない 歌いたいなら 生きていて…

詩 396

  純粋感覚 虹なら 渦の一種です 種子の核には 必然の 顔に かがやき ありがとう 顔には 顔の夢があり 人形 売ります いい子です ほほえむばかりの 生徒たち …

詩 395

  月溶液 水脈 閉じこめ 文字は 紅 煙のように タマリスク 解読できないままでいて ぬいぐるみの足 夜の音 あなたがしたいことをして だけど 決まらず あなたた…

アルタイルの詩(笑) (13) 終

4−6   咲希、登場。ウェディングベールをかぶっている。 咲希 むかしむかし、天の川のそばには天の神様が住んでいました。 渉  天の神様のひとり娘は、織姫と言…

アルタイルの詩(笑) (12)

4−1 松岡 (声)いのち短し、戀(こひ)せよ、少女(をとめ)、    波にたゞよひ波の様(よ)に、    君が柔手(やはて)を我が肩に     こゝには人目ないも…

アルタイルの詩(笑) (11)

3−3   永井、拍手しながら、登場。 永井 見せてもらいましたよ。聞かせてもらいましたよ。 咲希 あ、ヤクザ。 永井 誰がヤクザだ。    老婆心ながら、ひとつ…

アルタイルの詩(笑) (10)

3−2   渉、咲希。 咲希 どうしたの? 渉  なんか…… 咲希 楽じゃん。自由にやらせてくれるんだってさ。 渉  なんか…… 咲希 なに? 渉  役者って、そう…

アルタイルの詩(笑) (9)

3−1   神崎以外。 大輔 好きに、自由にって……どこまでやっていいんですかね? 松岡 思うにね、遠慮しすぎてたんですよ。 洋子 もっと、思ったことを言ってもよ…

アルタイルの詩(笑) (8)

2−1 神崎 カット!   神崎、登場。   緊張がとける。 神崎 おつかれさまでした。じゃあ、打ち上げのほうに。 松岡 セリフ、長いですよ。 洋子 クッソ長い。 …

アルタイルの詩(笑) (7)

1−13   永井、由紀子、登場。 永井 ここだと聞いたよ。 由紀子 あなた…… 永井 (手で制す)きみに、ひとつ忠告がある。もう来るな。理由は分かるな。 渉  分…

アルタイルの詩(笑) (6)

1− 11   大輔、奈津美。 奈津美 大輔。ありがとう。 大輔 なんだよ、そんなこと……結局…… 奈津美 うん。ふられちゃった。 大輔 やけ食いでもするか? 奈津…

アルタイルの詩(笑) (5)

1−8   渉、大輔、登場。   大輔、渉を突き飛ばす。 大輔 おれは、おまえをなぐらなきゃいけない。 渉  ……どうして。 大輔 ……一生分からねえよ……   …

アルタイルの詩(笑) (4)

1−6   医者・神崎、ナース・洋子、登場。 咲希 洋子ちゃん。 洋子 探したわよ。 渉  ……(会釈する) 洋子 もしかして、彼氏? 咲希 うん。渉くん。 神崎 主…

アルタイルの詩(笑) (3)

1−4   千秋、登場。 千秋 (さえぎって)患者さんに迷惑ですよ。 渉  あ…… 千秋 (笑う)おじいちゃんは、置いてきました。    自分ではらうんだって聞かなく…

アルタイルの詩(笑) (2)

1− 1   昼さがり。   病院の中庭、常夜灯とベンチがひとつ。   老人・松岡、孫・千秋に車椅子を押されて、登場。   松岡、ゴンドラの歌を歌う。   松岡 い…

アルタイルの詩(笑) (1)

登場人物 渉 17歳、高校2年生。愛する咲希のためになにかしてやりたいが、なにもできない無力をなげいている。 咲希 16歳、高校2年生。愛する渉を残して逝ってし…

詩 397

詩 397

  呼

わたしは いつも 人ちがい
マアカのふりして 愛がない
体温低下 指がない
いつも いつでも いま 昼寝

空気は うすい 歌えない
歌いたいなら 生きていて
復活 信じて 焼却の
教科書 ひもとく もう一度

やっぱり わたしは 夏が好き
ふとんを干したら ただ 歩き
潮騒 セミも 浴衣も いらない

やっぱり わたしは ここが好き
わたしは いつも 読書です
読めるものなら 世界も 

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詩 396

詩 396

  純粋感覚

虹なら 渦の一種です
種子の核には 必然の
顔に かがやき ありがとう
顔には 顔の夢があり

人形 売ります いい子です
ほほえむばかりの 生徒たち
ちかいの数を 数えては
残酷の意味 書きかえて

わたしの弱さが せきたてて
くすみ わたしの子供の目
生きとし生けるものたちの

生まれた日なら 誕生日
物質 けずり 絵を 満たし
花粉を 少々 大きな愛へ

詩 395

詩 395

  月溶液

水脈 閉じこめ 文字は 紅
煙のように タマリスク
解読できないままでいて
ぬいぐるみの足 夜の音

あなたがしたいことをして
だけど 決まらず あなたたち
名前 決まらず 絶縁体
あやしく リリー 夜の音

ママ ママ ママへ あとがきを
馬のたてがみ うるわしい
月に姫君 むかえにいけば

けものか 悪魔か あどけない
子供のままか 星 星へ
落下傘めのノスタルヂアか

アルタイルの詩(笑) (13) 終

アルタイルの詩(笑) (13) 終

4−6

  咲希、登場。ウェディングベールをかぶっている。

咲希 むかしむかし、天の川のそばには天の神様が住んでいました。
渉  天の神様のひとり娘は、織姫と言いました。織姫がやがて年ごろになり、
咲希 天の神様は、娘に、天の川の岸で天の牛を飼っている、彦星というお婿さ
   んをむかえてやりました。
渉  ふたりは、たのしい生活を送るようになりました。
咲希 でも、仕事を忘れて、遊んでばかり

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アルタイルの詩(笑) (12)

アルタイルの詩(笑) (12)

4−1

松岡 (声)いのち短し、戀(こひ)せよ、少女(をとめ)、
   波にたゞよひ波の様(よ)に、
   君が柔手(やはて)を我が肩に 
   こゝには人目ないものを。

  松岡、千秋、登場。
  千秋は車椅子に乗っている。松岡が押している。

渉  ……
千秋 〽︎いのち短し、
渉  ……やめてください。
松岡 なぜ。
渉  いや……千秋さん。
千秋 なぜ。
松岡 患者さんたちに迷惑だから

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アルタイルの詩(笑) (11)

アルタイルの詩(笑) (11)

3−3

  永井、拍手しながら、登場。

永井 見せてもらいましたよ。聞かせてもらいましたよ。
咲希 あ、ヤクザ。
永井 誰がヤクザだ。
   老婆心ながら、ひとつ、よろしいかな? 本当に夢を夢だと思っているの? 夢……あえて夢をいうことばをつかうが、夢なんて、神さまの神殿や、幽霊のすみかや、天国や、もしかしたら地獄のような場所にあるものさ。漠然とした、つかみどころのない、抽象的でたどりついたも

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アルタイルの詩(笑) (10)

アルタイルの詩(笑) (10)

3−2

  渉、咲希。

咲希 どうしたの?
渉  なんか……
咲希 楽じゃん。自由にやらせてくれるんだってさ。
渉  なんか……
咲希 なに?
渉  役者って、そういうものかな、って。
咲希 どういうもの?
渉  ……

  沈黙

咲希 きみもオーディション?
渉  まあ。
咲希 で、受かったわけだ。
渉  きみも。
咲希 わたしはさ、電話が来たとき……

  咲希、正面をむく。オーデション

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アルタイルの詩(笑) (9)

アルタイルの詩(笑) (9)

3−1

  神崎以外。

大輔 好きに、自由にって……どこまでやっていいんですかね?
松岡 思うにね、遠慮しすぎてたんですよ。
洋子 もっと、思ったことを言ってもよかったですよね。
松岡 ぼくね、72歳なんですって。
   おかしいじゃないですか。日中戦争がどうの、「いのちみじかし」のゴンドラの歌、軽く120歳を越えてないと、口に出ないですよ。
   渉の年齢設定で1歳ちがうとかどころじゃないっ

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アルタイルの詩(笑) (8)

アルタイルの詩(笑) (8)

2−1

神崎 カット!

  神崎、登場。
  緊張がとける。

神崎 おつかれさまでした。じゃあ、打ち上げのほうに。
松岡 セリフ、長いですよ。
洋子 クッソ長い。
大輔 誰が書いたんです?
神崎 ぼくですけど。
みんな えっ。
由紀子 才能あるじゃないですか。
永井 もっと書いてもよかったと思うな。
奈津美 そうそう。長いけど……おぼえやすい、言いやすいっていうか。
大輔 なんていうの? 現

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アルタイルの詩(笑) (7)

アルタイルの詩(笑) (7)

1−13

  永井、由紀子、登場。

永井 ここだと聞いたよ。
由紀子 あなた……
永井 (手で制す)きみに、ひとつ忠告がある。もう来るな。理由は分かるな。
渉  分かりません。
永井 しずかに、最期を看とりたい……あの子の心を、みださずに。きみは、咲
希のなにを知っている?
   病室のベッドで、月に顔を照らされながら、かすかな声で、わたしには聞こえた。「大嫌い……渉なんて……大嫌い」
渉  

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アルタイルの詩(笑) (6)

アルタイルの詩(笑) (6)

1− 11

  大輔、奈津美。

奈津美 大輔。ありがとう。
大輔 なんだよ、そんなこと……結局……
奈津美 うん。ふられちゃった。
大輔 やけ食いでもするか?
奈津美 ……焼肉とかさ。
大輔 おまえのおごりな。
奈津美 えー。
大輔 ありがとう、って言ったよな。ちゃんとかたちで示せ。
奈津美 カラオケとかね。

  ふたり、笑う。
  沈黙。

奈津美 本当に……なんて言ったらいいか……
大輔

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アルタイルの詩(笑) (5)

アルタイルの詩(笑) (5)

1−8

  渉、大輔、登場。
  大輔、渉を突き飛ばす。

大輔 おれは、おまえをなぐらなきゃいけない。
渉  ……どうして。
大輔 ……一生分からねえよ……

  大輔、なぐりかかろうとする。

奈津美 やめて、大輔。

  奈津美、登場。
  大輔、手をとめる。

大輔 ……でも、こいつが……
奈津美 どうしたの?
大輔 ……なんでもない。

  大輔、去る。

1−9

  夕焼け。

 

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アルタイルの詩(笑) (4)

アルタイルの詩(笑) (4)

1−6

  医者・神崎、ナース・洋子、登場。

咲希 洋子ちゃん。
洋子 探したわよ。
渉  ……(会釈する)
洋子 もしかして、彼氏?
咲希 うん。渉くん。
神崎 主治医として、ひとこと……接触するなら、消毒してから。接触してしま
   ったら、あとで消毒。特に、この指。

  神崎、小指を立てる。渉、咲希、照れる。

洋子 そろそろ検温の時間よ。
   咲希を病室までエスコートしてくれる?

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アルタイルの詩(笑) (3)

アルタイルの詩(笑) (3)

1−4

  千秋、登場。

千秋 (さえぎって)患者さんに迷惑ですよ。
渉  あ……
千秋 (笑う)おじいちゃんは、置いてきました。
   自分ではらうんだって聞かなくて。
渉  そうですか。
千秋 言い忘れたことがあって。
   ……変に思いませんでした?
渉  ……お名前、ですか? 千秋さん……
千秋 そう。清子は、わたしの亡くなったおばさんです。
   ……亡くなる前、清子は、おじいちゃん

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アルタイルの詩(笑) (2)

アルタイルの詩(笑) (2)

1− 1

  昼さがり。
  病院の中庭、常夜灯とベンチがひとつ。
  老人・松岡、孫・千秋に車椅子を押されて、登場。
  松岡、ゴンドラの歌を歌う。  

松岡 いのち短し、戀(こひ)せよ、少女(をとめ)、
   朱(あか)き唇、褪(あ)せぬ間(ま)に、
   熱き血液(ちしほ)の冷えぬ間(ま)に
   明日(あす)の月日(つきひ)のないものを。

松岡 日中戦争。大東亜戦争。太平洋戦争。
 

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アルタイルの詩(笑)  (1)

アルタイルの詩(笑) (1)

登場人物

渉 17歳、高校2年生。愛する咲希のためになにかしてやりたいが、なにもできない無力をなげいている。

咲希 16歳、高校2年生。愛する渉を残して逝ってしまうことが気がかりでならない。渉にきらわれようとする。

神崎 42歳、医者。咲希の主治医。妻子があるが、洋子と不倫の関係にある。

洋子 28歳、ナース。神崎の不倫相手。このままではいけないと思っている。

松岡 72歳、入院患者。娘

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