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いけばなお稽古日記 ~いけばなにおいて大事なこと~

こんにちわ。
いつもありがとうございます。
初めに自己紹介が入りますので、ご存じの方はそこを飛ばして読み始めていただけると幸いです。
本記事は6月9日のお稽古の備忘録です。
3種類に分けてお稽古をしたので、3回に分けて書かせていただきます。

簡単に自己紹介

初めまして!
ご覧いただきありがとうございます。
田中俊行と申します。
私は金融業界出身で現在日本文化に携わる仕事をしています。
元々、実家がいけばなに携わる仕事をしていたのと、大学時代の専攻が美学だったこともあり、回りまわって現在は仕事の6割くらいを日本文化に関係する仕事をしています。
残りの4割は公益社団法人の運営とその1事業として補助金申請や経営計画立案など中小企業者様向けの経営に関するコンサルティング業務を行っています。
金融業界時代は証券業界に所属していました。
主には資産規模で5億以上の地域の富裕層をターゲットとして、金融だけでなく不動産などの金融以外の資産管理の助言を行っていました。
そのあと、自分自身が所属する日本では会員数最大、歴史は最古の流派である池坊華道会に所属し、2年間中で会員管理や、全国のいけばな教室のサポートを行っていました。
noteをやり始めようと思ったのは、以下の理由からです。
①日本の生活文化についてもっと多くの方に知識として知ってもらいたいということ、②日本は経済活動を中心に戦後復興を成し遂げてきたために、現在あまりにも文化的な教養の無い人が多いと感じるために多くの方々へメッセージとして届けたい、この2点です。
私自身、SDGsをEducate、いわゆるSDGsを教育するESD(ESDはこちらへ)ということに関心を持っていてそれに個人や公益社団法人の理事として取り組んでいます。
古くから日本の生活文化の中には、SDGsの持続可能性という言葉が無意識ながらに取り込まれていることを1つの研究材料として私自身がとらえる中で、日本の文化の独自性についてより知ってもらいたいと思ったのが日本文化の発信活動をはじめたきっかけです。
グローバルな舞台でも、AI化が進む中でも、より国民性や個性といったそれぞれが持つ多様性が大切にされる時代になっていくことと感じています。
それぞれが持つ独自の個性やその集まりであるその国の持つ文化が、世界平和の礎となるようにと思っています。
いけばなの先生をしている手前、いけばなに関することが中心になるかと思いますが、皆様の生活の中での参考になれば幸いです。

今回のお稽古は

生花正風体の3種生けです。
ほとんど知識がなくご覧頂いている方からすると、生花とか自由花って何?という声があがると思います。
また改めて、別枠でその辺りの紹介と説明をさせていただきたいと思います。
使用した草花は、姫ガマ、深山南天(別名:深山ななかまど)、ナデシコでした。

生花正風体とは

とはいえ、やはり簡単には解決しておきたいので、引用をいれさせていただきます。

生花は草木の命が現れる出生(しゅっしょう)の美に注目します。
出生とは草木それぞれが持つ特徴、いわば個性で、草木が懸命に生きる様々な姿に美を見出したものが出生美です。
生花は草木の出生美にもとづき、一瓶の中に品格をもって草木の命を表そうとする様式です。
生花には伝統的な型を持つ「生花正風体」と、既成の型を持たない「生花新風体」があります。
生花正風体(しょうかしょうふうたい)は明治時代に成立した様式で、小座敷の床の間にふさわしい小型のいけばなです。数少ない枝で、草木に息づく命に重点を置いていけられます。
古来、万物の基礎と考えられてきた三才(天・地・人)になぞらえた真(しん)・副(そえ)・体(たい)と呼ばれる三つの役枝で構成されます。
三つの役枝が互いに呼応し、水際からすぐやかに伸びたつ姿に、草木に備わる出生美を見ることができます。
引用先:華道家元池坊ホームページより

以上のようになっています。
さらに1種類の花材のみを使う1種生、2種類の2種生、3種類の3種生というスタイルがあります。
それでは、実際のお稽古でいけた作品の解説に移りたいと思います。

1作目

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姫ガマを真、深山南天を副に、体にナデシコをいれています。
(ポイント)
姫ガマの葉1枚1枚をいかにして、交差させずに空間にいれていくかが一番のポイントです。
ススキやガマのように葉が広がるものは、左右に葉を広げて使うのではなく、前後に広げて使うといいと思います。
左右に広げるとそこに見えない壁ができるので、空間が詰まった印象を受けてしまうからです。
前後に広げれば奥行きを使えますので、作品もゆったりと印象になります。

2作目

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(ポイント)
先ほどの作品に比べると姫ガマの左右への広がりが強くなった作品です。
写真に撮ると平面に見えますが、実際は先の作品で触れたように前後の奥行きをしっかりと姫ガマの葉でとるようにしています。
また、可能であれば、葉先の1枚1枚と穂先の1本1本がちょうど同じ背丈に並ばないように調整することも大切です。
また先ほどの作品よりも左右に広がっている分、体に使用していますナデシコは真ん中を締めるぐらいにして、あまり外側に出さないようにしています。

3作目

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(ポイント)
作品全体の左右の広がりは2作目とあまり変わりませんが、姫ガマの広がりは右方向(逆勝手なので副側)にかためて強くしてあります。
写真という平面で見たときに、姫ガマの葉と葉の間にある空間の幅が一定で単調にならないように、微妙に変化をもたせてあります。
そうすることで、葉の動きや弾みがより強調され、生き生きとした印象を与えることができるようになります。

本日の一言 いけばなにおいて大事なこと

いけばな作品の構造において、個人的に最も重要だと思うことの1つが、”前後の間”にあると思っています。
花を生ける時というのは、基本的には床もしくは椅子に着座して、生け終わるまで目線を変えずに固定した状態で生けるのが良いといわれています。
その時の問題として、”左右の間”というのは誰でも認識するのは簡単なのですが、”前後の間”を認識するのがなかなか難しいという点が挙げられます。
いけばな作品というのは、立体物ですので左右だけでなく、前後の間も大事なんですね。
それは前後の奥行きをしっかり意識することで、小さいながらもゆったりとして壮大な雰囲気を持つ作品を作ることができます。


慮山湘湖の風景もいたらざればのぞみがたく瓊樹瑤池の絶境もみゝ にふれて見る事稀也
王摩詰が輞川の圖も夏凉しきを生ずる事あたはず
舜叔擧が草木の軸も秋香を發することなし
又庭前に山をつき垣の内に泉を引も人力をわずらわさずして成事をえず
たゞ小水尺樹をもつて江山數程の勝景をあらはし暫時頃刻の間に千變萬化の佳興をもよおす宛仙家の妙術ともいいつべし
引用:専応口伝序文 より

廬山湘湖(中国の三大瀑布の1つ)の風景もそこに行かなければそれを楽しむ事は望めませんし、瓊樹瑤池(崑崙山中にあり神仙が住むという中国の伝説上の池)も行って来た人の話を聞くということは極めて稀なことです。
王摩詰の輞川(終南山のほとりにある唐代の地名)の絵も夏に涼しさを生みませんし、舜挙の草花の掛軸も秋の枯葉の香りを生みません。
また庭に築山を築いて、垣内に泉をつくったとしても労力を多く使うだけですから、そんな大変な事は出来ません。
立花(=現在のいけばなの種類の1つ)は、少々の水と樹で深山幽谷の景観を表し、短時間に千変万化の趣を生み出します。
以上が口語訳です。
この池坊専応口伝は、私の属する華道家元池坊に室町時代から伝わるもので、正式には”大巻”と呼ばれます。
文献上ではいけばなの理論的なことを書かれている最初のものと言われています。
簡単にいうと、絵や掛け軸に描かれた景色を実際に現地に見に行くのは大変だし、また絵や掛け軸からは香りのようなものや涼しさのようなものも直接は感じない。
ただ、いけばなはちょっとの水と草木を使うだけで、まるで深山に景観を直接見に行っているかのような感覚に陥らせてくれるものだ。
そんなことを言っています。
これこそが個人的には”いけばな”の定義だと思っています。
小さいながらも優雅で壮大なスケール感を感じさせるような窮屈さを感じさせない作品が素晴らしいと、私は思います。

今日のまとめ

前後の奥行きを意識して花を生けることが上達の秘訣です。
左右の空間への意識も大事ですが、前後の奥行きを感じられる感覚を身につけていくことが大切だと思います。
本日もご高覧ありがとうございました。

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