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B2Bでカスタマージャーニーマップを作るときに、試してほしい5つのこと

こんにちは。UIデザインチームの柴田です。

B2B向けの製品やサービスのUIデザインを行うときにも、カスタマージャーニーマップ(CJM)を作ります。しかし、旅行や食事がテーマだとスラスラ作れるのに、B2B向けとなると上手くいかない・・・という経験はありませんか?

この記事では、そんな時に使えるコツをまとめてみました。
B2Bに限らず、B2CでもCJMの作り方に悩んでいる方や、これから作ってみようと思っている方におすすめです。

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カスタマージャーニーマップとは


カスタマージャーニーマップ(CJM)とは、顧客が製品やサービスを利用する体験を顧客の視点になって時系列で可視化するツールです。CJMを作ることでプロジェクトメンバー間で現状や課題の共通認識を作り、次の打ち手は何がいいか意思決定をすることに役立ちます。CJMは以下の手順で作成します。

  1. どんなテーマについて書くかを設定する

  2. 顧客(利用者)とは誰かを定義する

  3. 顧客(利用者)が、いつ、どこで、どんな行動をするかを時系列で書きだす

  4. 顧客(利用者)との接点を書きだす

  5. 行動した時の顧客(利用者)の感情の起伏を書く

  6. 課題を見つけ、解決策を導くための「問い」を設定する

  7. 解決のためのアイデアを導き出す

いざB2Bの案件で作ろうとすると、まず1つ目の「テーマ設定」から、どこに的を絞ればいいか想像ができずに途方にくれて・・・、「顧客の定義」でステークホルダーがたくさんいることに頭を抱え、、、限られた時間の中で完成できるだろうか・・・とだんだん不安になってきます。

全てのB2B案件がそうではありませんが、例えば「施設のメンテナンス業務のUXを向上する」というプロジェクトの場合、メンテナンス業務には建物自体のメンテナンスもあれば、電気設備や備品もあるなど複数の対象があり、その全ての仕事の内容や手順を詳細まで把握するには時間がかかります。また作業者や監督者、設備管理者、施設利用者、設備メーカーなど、ステークホルダー(関わる人や企業)も多いという特徴があります。これが、難しそうと思う理由の一つかも知れません。

実際の現場を深く理解するために、業務に詳しい方へヒアリングすることもあります。ヒアリングは対象者が勤務中の貴重な時間を空けていただくので、限られた時間(2時間一発勝負や多くても2回)しかないということが多いです。

そこで、限られた時間で完成するには「どの作業をどの範囲で書くか範囲を絞って書始めようと」と思いますが、なかなか絞りきれなかったり、絞ってCJMを書いても検討範囲が狭くなってしまった気がして、取り組むべき課題を洗い出せたのだろうかと思います。

では、どうすればよいでしょうか?次の5つの取り組み方をご紹介します。


カスタマージャーニーマップのサンプル

工夫その1|レベル1のマップを作るイメージで取り組む

全てを網羅したい気持ちはあるけれど、一旦横に置いておく

いきなり完成版を作ろうとせず、全体をざっくり広くとらえて、細かいところは、後で書き足したり修正したりするイメージで始めます。顕在化している課題を、並べてみることをまずはゴールにします。一緒にCJMを作成する関係者全員にも、このゴールイメージを共有しておきます。
業務の流れも、細かく分解せずに「作業前/作業中/作業後」や「導入前、導入後(平常時)、導入後(点検時)、導入後(異常時)」といった様に、大きな区切りで把握します。

工夫その2|主人公は複数でOK!

ステークホルダーは思いつく限り、洗い出しておきます。
誰を主人公にするか、ここでは決めずに全ての関係者の行動を1つのCJMに混ぜて記載します。

みんな主人公でいい!それぞれに名前をつけよう

主人公別にポストイットを色分けしておくと、誰がどこの工程で困っているか、みんなに共通する困りごとなのかといったことがマップ全体を見た時に把握しやすくなります。

〇を付けたところは青のポストイットが多い。青にとっての課題が多いのかもしれない。

「ユーザーストーリーマッピング」(出版社::オライリージャパン 著:Jeff Patton 監:川口 恭伸 訳:長尾 高弘)という本に書かれている「ユーザーという言葉は使用禁止」というのは、なるほどそうだなぁと思います。複数の主人公がいる場合にユーザーという言葉を使うと、誰を想像するか人により違い、混乱が起きます。そこで、ユーザーではなく、「保守作業者」「設備管理者」「施設利用者」といったように明確な名前をつけて話をします。

工夫その3|準備8割、本番2割。

CJMを充実させるためのヒアリングで、より多く情報を引き出すためには、準備がカギです。(ヒアリングの対象者が複数の時は、ワークショップ形式にします。)

例えば、前もってアンケートによって顕在化している課題を収集します。それを話のきっかけにすると、ヒアリング当日には不足情報の追加から始められます。

話のきっかけとなる情報を加えたCJM

それにより、潜在課題を聞き出すことや、感情の上がり下がりといった現場を経験した人にしか答えられないリアルな情報を聴くことに時間を多く使うことができます。

もちろん、デザイナー自身が業務のことを理解しておくことは基本です。最近では動画サイトや採用サイトなどから、業務の流れや現場の様子について情報が得られることもあります。「どんな環境か」「どんな服装か」など、なるべくお客様と共通したイメージを持てるようにしておきます。

工夫その4|本番は全力で参加者を応援して盛り上げる!

ヒアリングやワークショップが初体験という方も少なくありません。思っていることはあるのに緊張して話せないという事がないように、発言しやすい場づくりを心がけています。

例えば、カラオケで歌う人が気持ちよく歌えるように、合いの手や楽器を鳴らして盛り上げるようなイメージで、発言を応援したり、道具を使います。

気持ちよく歌える(発言できる)ように全力で応援する!
  • 「いいですね!」と、合いの手をいれる(オンラインでは特に大事)

  • 考えをポストイットに集中して書く“もくもくタイム”を設ける。

  • ホワイトボードに板書する、グラフィックレコーディングをする。

  • 呼び水を準備する(「もの」や「UI」があると盛り上がります)

工夫その5|CJMを整えることは、活動を拡げること

いろんな情報を加え充実したCJMを、最後に整えます。そのまま使うこともありますが、CJM作成に関わっていない人が見ても、重要なポイントや流れが理解できるように手を加えることも大切だと思います。
これによって、プロジェクトメンバーはもちろん、お客様の社内向け資料にも使っていただきやすく、プロジェクトの取り組みを拡げるために効果的です。

  • 投票などをして重要度をつけておく。

  • 俯瞰してみた時に全体の流れと重要なポイントが分かるようにする。

  • 見やすく読みやすい文字を意識する。

  • 現場のリアルな声が伝わるよう文章は整えすぎず、省きすぎない。

  • デザインに凝りすぎない。(きれいにしすぎると熱量が伝わらなくなる)


以上、B2B分野でのCJMを作る際のポイントをまとめてみました。

この方法で作ったCJMは、お客様から「CJMのおかげで取り組むべき課題を決めることができてプロジェクトが進みました」と喜んでいただいたり、社内の共有会でも分かりやすい!と言っていただいたり、嬉しい反響がありました。

この他にも、色々な作り方があると思います。弊社の中でもデザイナーごとに色々な工夫をしていると思いますので、これは一つの例になりますが、まずは私が実践していることを書いてみました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

ライター::柴田



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