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大映映画の世界

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大映京都撮影所、大映東京撮影所で作られた作品や、スターについての記事をまとめました。
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#大映東京

『心の日月』(1954年1月15日・大映東京・木村恵吾、吉村廉)

『心の日月』(1954年1月15日・大映東京・木村恵吾、吉村廉)

1954年の若尾文子研究。木村恵吾&吉村廉『心の日月』(1954年1月15日・大映東京)をDVDで。この菊池寛原作は、1931(昭和6)年にも日活で田坂具隆によって映画化されており、入江たか子と島耕二が主演している。

待ち合わせ場所を間違えたために、行き違いになったカップルの生々流転と再会までの紆余曲折を描いた、現在では成立し得ない「すれ違いメロドラマ」。前年の『君の名は』(1953年・松竹・大

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大映「黒シリーズ」全11作(1962〜1964年)

大映「黒シリーズ」全11作(1962〜1964年)


1962(昭和37)年から1964(昭和39)年にかけて連作された「黒シリーズ」。第1作『黒の試走車』のヒットを受けて、産業スパイもの、社会派ミステリーとして次々と作られたが「黒」はあくまでも興行の効果を狙ったもので、共通する明確なフォーマット、テーマはなく、高度成長を邁進していくなか、同時に映画が斜陽になりつつあるなかに作られている。ハイペースで作られているので、わずか二年の間の、時代の微妙な

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『あに・いもうと』(1953年8月19日・大映東京・成瀬巳喜男)

『あに・いもうと』(1953年8月19日・大映東京・成瀬巳喜男)

7月13日(水)の娯楽映画研究所シアターは、連夜の成瀬巳喜男監督特集。室生犀星原作の二度目の映画化となる『あに・いもうと』(1953年8月19日・大映東京)をアマプラのシネマコレクション by KADOKAWAからスクリーン投影

無頼の兄・伊之吉を森雅之、奔放な妹・もんを京マチ子。しっかり者の次女・さんを久我美子。そして父親で、かつては護岸工事の親方で鳴らし、今は引退している川師の親方・赤座を山

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『馬賊芸者』(1954年11月17日・大映東京・島耕二)

『馬賊芸者』(1954年11月17日・大映東京・島耕二)

 京マチ子主演、火野葦平原作『馬賊芸者』(1954年・東京・島耕二)。大正時代、九州博多で「馬賊芸者」として慣らした鉄火芸者たちの心意気を描いた作品。「花と龍」や「新遊侠伝」など映画化作品が多い、火野葦平が「小説新潮」に掲載した原作を、島耕二監督が脚色・演出。とにかく京マチ子さんがいい。

「馬賊芸者」といえば、森繁久彌の『社長太平記』二部作(1956年)で、三好栄子さんをすぐに思い出す。その鼻息

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勝新太郎&田村高廣「兵隊やくざ」大全

勝新太郎&田村高廣「兵隊やくざ」大全

 勝新太郎&田村高廣コンビの人気シリーズ「兵隊やくざ」全作レビューのインデックスページです。

 昭和40(1965)年から昭和43(1968)年にかけて大映で全8作製作され、大映倒産後の昭和47(1972)年には、勝プロダクション=東宝提携でシリーズ初のカラー版『兵隊やくざ 火線』(増村保造)が作られ、全9作のシリーズとなりました。

 原作は有馬頼義「貴三郎一代」。浪花節語りからやくざになった

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『新・兵隊やくざ』(1966年1月3日・大映東京・田中徳三)

『新・兵隊やくざ』(1966年1月3日・大映東京・田中徳三)

 note「佐藤利明の娯楽映画研究所」いつもご贔屓にしてくださり、ありがとうございます。この原稿がちょうど「800本目」となります。これからも日々アップしていきますので、よろしくお頼ん申します。

 昭和41(1966)年、大映の正月映画は「カツライス」二本立て。市川雷蔵のシリーズ第3作『若親分喧嘩状』(大映京都・池広一夫)と勝新太郎の『新・兵隊やくざ』(1966年1月3日・大映東京・田中徳三)の

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『兵隊やくざ』(1965年3月13日・大映東京・増村保造)

『兵隊やくざ』(1965年3月13日・大映東京・増村保造)

 『悪名』(1961年)、『座頭市物語』(1962年)のシリーズ化で、勝新太郎は大映のエースとなり、昭和40年代半ばにかけて、斜陽の映画界を支えた。そのもう一つの柱となったのが、昭和40(1965)年3月13日に公開された『兵隊やくざ』を第一作に(勝プロ=東宝も含めて)全9作作られる「兵隊やくざ」シリーズである。映画ファン的には『続・悪名』(1961年・田中徳三)やそのリメイク『悪名 縄張荒らし』

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『新婚日記 恥しい夢』(1956年4月28日・大映東京・田中重雄)

『新婚日記 恥しい夢』(1956年4月28日・大映東京・田中重雄)

 若尾文子主演『新婚日記 恥しい夢』(1956年4月28日・大映東京・田中重雄)。脚本は笠原良三と池上金男。42分のSPながら充実の新婚コメディ。若夫婦がなかなか二人きりになれなくて、悩む、というパターンは、日活多摩川で杉狂児と市川春代主演の『花嫁日記』(1934年・渡辺邦男)など連綿と作られてきた。「二人きりの甘い時を過ごしたいけど、過ごせない」この悩ましさが、艶かしさとなって、他愛なくとも、健

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『たそがれの東京タワー』(1959年2月18日・大映東京・阿部毅)

『たそがれの東京タワー』(1959年2月18日・大映東京・阿部毅)

 大映歌謡映画『たそがれの東京タワー』(1959年2月18日・大映東京・阿部毅)を『宇宙人東京に現わる』Blu-rayに同梱されているDVDで観た。

 フランク永井さんの「たそがれのテレビ塔」(1958年11月発売・作詞・吉川静夫 作曲・豊田一雄)をモチーフに、星川清司さんが脚本によるロマンチックなメロドラマ。当時の若い女性は感涙しただろう。

 ヒロインの仁木多鶴子さんは、孤児院育ちの19歳。

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『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』(1966年4月14日・大映東京・田中重雄) 妖怪・特撮映画祭で上映

『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』(1966年4月14日・大映東京・田中重雄) 妖怪・特撮映画祭で上映

 角川シネマ有楽町「妖怪・特撮映画祭」のガメラ・デーで、『大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス』(1967年・湯浅憲明)と『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』(1966年4月14日・大映東京・田中重雄)を堪能。

 スクリーンで観るのは1980年代初頭以来なので40年ぶり。大きなスクリーンで、ガメラを観ると、幼児の頃の映画館体験を思い出す。ぼくは『ガメラ対ギャオス』が封切り初体験。なので『ガメラ対バルゴン』

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『大怪獣ガメラ』(1965年11月27日・大映東京・湯浅憲明) 妖怪・特撮映画祭で上映

『大怪獣ガメラ』(1965年11月27日・大映東京・湯浅憲明) 妖怪・特撮映画祭で上映

この夏、妖怪・特撮映画祭で、久々にスクリーン上映される『大怪獣ガメラ』(1965年11月27日・大映東京・湯浅憲明)を、深夜の娯楽映画研究所シアターで上映。

国産70ミリ映画『釈迦』(1961年・三隅研次・大映京都)、『秦・始皇帝』(1962年・田中重雄)を成功させてきた自負もあり、永田雅一プロデューサーは東宝の円谷英二監督の特撮映画に負けない、大映オリジナルの特撮映画に力を入れていた。

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『風速七十五米』(1963年7月13日・大映東京・田中重雄) 妖怪・特撮映画祭で上映

『風速七十五米』(1963年7月13日・大映東京・田中重雄) 妖怪・特撮映画祭で上映

この夏、妖怪・特撮映画祭で上映の、田中重雄監督『風速七十五米』(1963年7月13日・大映東京)。東京を襲う未曾有の巨大台風を特撮で描いたスペクタクル・アクション映画。『日蓮と蒙古大襲来』(1958年・渡辺邦男)を手がけ、昭和37(1962)年、大映が鳴り物入りで製作した70ミリ大作『秦・始皇帝』(田中重雄)の万里の長城のミニチュア撮影を手がけた築地米三郎さんが特撮を担当。

クライマックス、東京

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『怪談おとし穴』(1968年6月15日・大映東京・島耕二)

『怪談おとし穴』(1968年6月15日・大映東京・島耕二)

 昭和40年代、大映京都撮影所は長年培って来た映像美を反映させた怪談映画の佳作を放っていた。一方の大映東京撮影所は、『大怪獣ガメラ』(1965年)に始まる「ガメラ」シリーズを成功させ、妖怪ブームが吹き荒れた昭和43(1968)年末には梅図かずお原作の『蛇娘と白髪魔』(1968年湯浅憲明)という佳作をものすことになる。

 ジュブナイルに強かった大映東京において、大人向けの本格的現代怪談が誕生した。

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