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着眼点3:参入市場での事業機会は中長期的に増加するか?

事業戦略大学(教員1名・生徒無限大)「成功する事業戦略計画の7+1の視点コース第4回」


■「短期間に事業機会が急増」するような市場は不安が大きい



3つ目のポイントは、参入市場での事業機会が中長期的に増加し得るかどうかである。事業機会の増加は、事業戦略計画で最も大切な要素である「売上げの増加」の可能性を示すが、重要なのは、事業機会がごく限られた短い期間だけ増えるのではなく、中長期に安定して増加することである。

かつては、一般的に成長市場と言われる市場が事業機会であると考えられることが多かった。成長市場の例としては、最近話題の自動運転、ゲノム医療などの技術領域、少し前だとアジア新興国などの地域が挙げられる。このような成長市場は、当面短期的に拡大するが、現実的には市場の変化も激しく、中長期的には競争が厳しくなる可能性もある。それでも成長市場だけが事業機会なのだろうか。


■ 低迷。衰退期の市場にチャンスを見いだす


一方、成熟。衰退市場であっても、他の企業とは着眼点を変え、企業のコア・コンピタンスや、その力を存分に発揮できる事業ドメインを見つけると、事業機会を創造・拡大させることができる。


たとえば、日本の土木建設市場は低迷・衰退傾向にあるが、高い管理能力を持った現場監督を派遣する人材派遣事業者にとっては、むしろ事業機会の増加となる。なぜなら、建設業界の企業各社では、固定費である人件費を削減し、変動費化したいというニーズは増加しているからである。


また労働人口が減少する中、現場で働く人のための作業着など、いわゆるガテン系の用品市場は衰退市場とみられていたが、ワークマンはファッション性を重視し、革新的な製品をとうにゅうすることで、用途を拡大し、顧客対象を女性にまで広げることに成功した。新業態ワークマンプラスでは、アウトドアファッション、ガーデニングなど幅広いアウトドア衣料、用品のブランドになりつつある。

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このように成熟・衰退市場であっても、新たな視点を持つことにより事業機会を増加させることは十分可能であり、もし、その市場規模が大きければ、事業機会は中長期的に安定して増加する可能性は高い。反対に急成長市場であれば、短期的に事業機会は急増するが、コア・コンピタンス戦略や事業ドメイン戦略などをうまく考えていかなければ、中長期に事業機会を獲得することは難しく、生き残れない可能性もある。中長期に増加する事業機会を見つけることとは、着眼点①の「コア。コンピタンスをどのようなものにするか」、着眼点②の「事業ドメィンを基本的にどの市場に置き、どのような切り回の戦略で事業の範囲を設定するか」ということを、妥協なく徹底的に考え抜く思考プロセスの結果だと言える。
その際の発想の原点は、市場の変化であろう。図のように変化する市場を独自の視点でうまく捉えることが、事業機会発見の重要なコツである。

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