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1枚の写真からアイデアが生まれた。 唯一無二の手書きロゴができるまで。

2019年7月、AIのスタートアップABEJA(アベジャ)はメディア「Torus(トーラス)」をはじめました。私はABEJAでプロダクトデザインを担当している上野真由美です。私がつくった「Torus」ロゴ完成までの道のりをふり返ります。

編集チームの想いを知る。

プロジェクトの立ち上げから、メンバーとして編集会議に参加していた。
メディアの名前が、Torus(トーラス)に決まると、自然と私がロゴを作ることになる。その後は、週1回ある定例ミーティングにできる限り参加するようにした。

理由は、編集チームの会話の中から、彼らの想いを汲み取るためである。

なにかモノをつくるときに一番大事なのは、話を聞くことだと思っている。それが不十分だと、中身のない、愛着のない、ただのオブジェクトになってしまうからだ。

いま手元にブレストしたときのメモが残っている。

メディアのコンセプトづくりメモ:
「当たり前」に、とらわれない。
「新しい」をつくるメディア。
テクノロジーと人の営みが行きかうメディア
テクノロジーの窓から人の営みを覗いてみる
テクノプレナーシップを構成するテクノロジーとリベラルアーツ。
中でもリベラルアーツは、これまで蓄積されてきた(広義の)「知」から、「価値」と「視点」を得て、「当たり前」から自由になるための学問。
転じて、このメディアは、人を「当たり前」(既成の概念、因習、規範意識)から「自由」になれる「価値」と「視点」を得られる場と位置付け、世の中の関心(社会的文脈)に載せたファクトで伝えたい。
メディア:実験場、研究所=Lab
かたちにして、何かを残している人はかっこいい。
そういう人を世に広めるのもメディアの役割。

<記事の判断軸:アイデンティティ=私が私たる所以↓>
それは、お金に重きを置かないものか =自分らしく生きるため。
それは、発想の転換につながるものか
それは、チャーミングなものか。
それは、ワクワクするものか
それは、知的に「変態」か

横軸の左に「クール」、右に「ABEJA」
→「言葉」「コンテンツ」に一貫している地下水脈
自分たちもなにかできそう、みたいな親近感
学びを続ける、やめない
窓を開ける=心、思考、思想、=循環させるための風(=知)=風が心を吹き抜ける感覚

既成概念へのモヤモヤを抱き、新しい価値感や広い視野を得て「自由」に生きたい人へのメッセージ。

ブレストを繰り返すうちに「どんな世界観のメディアにしたいのか?」といった方向性が見えてきた。

編集メンバーからはこんな話も出た。

「メディアの色を最初から決めない」

「みんなにわかってもらおうとしない。わかる人には深く伝えたい。(本当はたくさんの人に伝えたいけど)」

ある日の編集会議で、キーとなるひとつのフレーズが生まれた。

テクノロジー化する時代に、あえて人をみるメディア。

このロゴは正味4時間ぐらいで完成した。ヒアリングを重ねたことで、頭の中では、すでにロゴが完成していたからだ。

言葉のデザインをそばに置く。

私はロゴをつくるとき、ブレないように自分の中の想いを言語化する作業からはじめる。プロダクトのUIを作るときもそうしている。

その文章を見ながらロゴをつくるのだが、キレイに整ったアルファベットのロゴではしっくりこなかった。

フォトグラファー・西田香織さんの写真と、そこに映る人の魅力に、そして編集メンバーの書く文章に負けてしまうのだ。

1枚の写真からアイデアが生まれた。

ロゴをつくるとき、西田香織さんの写真と、取材対象者、そして文章をなんども見比べた。

ロゴはあくまで、素材の持つ魅力をさらに引き立てて、そこから伝わる人の生き様や内面を体現しなくてはいけない。だから少し不格好でも生命力のあるロゴにしたかった。

そこで手書きにすることにした。

恵比寿のアトレで買った青いインクの筆ペン。これ以外にも何個も違うペンで書いてみたが、この筆ペンの文字がしっくりきた。そして100個以上のロゴを書いた。その中から筆のかすれ具合と無骨さが気に入ったロゴを使うことにした。

編集会議でレビューしたところ「ふりがなをつけたほうがいい」と声が上がり、カナをつけることにした。青インクの万年筆で書いた。私は青インクと万年筆が好きなのだ。

写真の上に載せてみる。しっくりきた。

TorusのColorを決める。

色は青がいい!という私の好みと想いを編集メンバーへ提案した。デザインを考えるときに使ったのも青いインクだ。

温度の高い炎や星ほど青色になる。
ガスバーナーなどの火も化学反応により青色になる。
内なる燃える想いを表現。

決定案はこれになった。

編集チームも「いい!」

この一声で決まった。公開前に取材対象者に編集チームがこのロゴを見せると、良い反応が返ってきたという。それを聞いて、ホッとしたのがもうすでに懐かしい。

まとめ

ここまで想いを込めて取り組めたのも、編集チーム、人の内面を映し出す写真、魅力的なストーリー、文章、それらすべてにファンになっていたからだと思う。

私のつくったロゴで、Torusの魅力を伝えられたら嬉しい。そして、ぜひ記事も読んでほしい。期待は裏切らない。

文・デザイン:上野真由美 写真:西田香織

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