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#前川徹
溜池随想録 #13 「XP(エクストリーム・プログラミング)その2」 (2010年6月)
XPのプラクティス(続き)
今回は、前回に引き続きXPのプラクティスを紹介する。
(7) 小さなリリース(Small Releases)
システムが一部でも動く段階になれば、すぐに発注者に引渡しを行う。XPではこうしたリリースを小規模に何度も繰り返す。ウォータフォールモデルでは最終段階にならないとシステムの引渡しを行わないために、終盤になって要求仕様の誤りが発見されてプロジェクトが火を
溜池随想録 #12 「XP(エクストリーム・プログラミング)」 (2010年5月)
XPとは何か
XP(エクストリーム・プログラミング)は、アジャイルソフトウェア開発手法の中で最も有名なものの一つである。
歴史を辿ると1996年にスタートしたクライスラー社(自動車産業のビッグ3の一つ)の給与システム開発プロジェクトにその源流がある。このプロジェクトのリーダーであったケント・ベック(Kent Beck)は、その経験をまとめた書籍”Extreme Programming Ex
溜池随想録 #11 「アジャイルソフトウェア開発」 (2010年4月)
アジャイルソフトウェア開発とは何か
一般的に、アジャイルソフトウェア開発とは、1~3週間程度で反復(イテレーション)を繰り返すソフトウェア開発手法の総称である。XP(エクストリーム・プログラミング)やスクラムが有名である。
反復するという点で、前回取り上げたスパイラル・モデルなどの「反復型開発プロセス」と同じであるが、根本的に異なるのは、かなり短期間で反復を繰り返す点と、計画より変化への対
溜池随想録 #10 「反復型開発プロセス」 (2010年3月)
米国防総省のIT調達標準
ウォーターフォール・モデルが、業界に深く浸透した原因の一つは、1980年代に米国の国防総省が、ウォーターフォール・モデルとドキュメント重視のアプローチをIT調達の標準としたからである。それが、DOD-STD-2167と呼ばれるものである。
しかし、国防総省はウォーターフォール・モデルが内包している問題に気付き、90年代半ばに開発工程を何度も繰り返してソフトウェアの
溜池随想録 #9 「『ウォーターフォールモデルは間違いだ!』」 (2010年2月)
システム開発遅延の原因
現在、日本における受託ソフトウェア開発の大半は、ウォーターフォール・モデルで行われている。ウォーターフォール・モデルとは、ソフトウェア開発の工程を(1) 要求定義、(2) 設計、(3) コーディング、(4) テスト、(5) 保守のように分けて、それらを順に実施していくという手法である。
最初にきちんとした計画や設計書をつくり、それに従って実行するという方法であり、作業は
溜池随想録 #7 「プライベート・クラウド」 (2009年12月)
プライベート・クラウドとは何か
国防総省の情報システム局(Defense Information Systems Agency (DISA))は、2008年からRACE(Rapid Access Computing Environment)と呼ばれる情報システムを運用している。このRACEは、ちょうどAmazon.comやGoogleが提供しているクラウドと同じように、DOD内のユーザーに対し
溜池随想録 #6 「クラウド・コンピューティング」 (2009年11月)
SaaSとクラウド・コンピューティング
「クラウド・コンピューティング」という言葉は、2006年8月にサンノゼで開催されたサーチエンジンに関するカンファレンスで、GoogleのCEOであるエリック・シュミットが最初に使ったという説が通説になっている。しかし、コンセンサスのとれた定義はない。人や会社によって微妙にクラウド・コンピューティングの定義は異なっている。とりあえず、ここではインターネット
溜池随想録 #4 「SaaS と規模の経済」 (2009年9月)
規模の経済
SaaSと規模の経済の話をする前に、規模の経済とは何かを簡単に説明しておこう。
まず、事例としてパッケージソフトのビジネスを考えてみよう。あるパッケージソフトの開発に要したコストが1億円で、このソフトをCDに格納し、説明書をつけてパッケージにして販売するコストを1本につき1000円かかると仮定しよう。
もし、このソフトを1万本生産すれば、総コストは1億円+1000円×1万本=
溜池随想録 #3 「SaaS (Software as a Service)」 (2009年8月)
SaaSとは何か
SaaS(サース)とは、ソフトウェア・アズ・ア・サービスの略で、直訳すれば「サービスとしてのソフトウェア」となる。簡単に言えば、ソフトウェアが提供していた機能を、インターネットを通じてサービスとして提供(あるいは販売)する仕組みのことである。
これまではソフトウェアを自分のパソコンや社内のサーバーにインストールして利用していたが、SaaSの場合には、ソフトウェアはインター
溜池随想録 #2 「ソフトウェアのオーバーシューティング」 (2009年7月)
オーバーシューティングとは何か
先月紹介した”IT Doesn’t Matter”の中で、カーは、ITが抱えるもう一つの問題を指摘している。それが「オーバーシューティング」である。オーバーシューティングとは、目標に向けて何かを調整する場合に目標を超えてしまうことをいう。ここでは、ITの技術進歩が利用者のニーズを超えてしまい、IT製品が利用者の必要とする以上の性能や機能を持つことを言う。
実
溜池随想録 #1 「ソフトウェアのコモディティ化」 (2009年6月)
IT Doesn’t Matter
もう6年前になるのに、今読んでも”IT Doesn’t Matter”に古さは感じられない。この論文は、ハーバード・ビジネス・レビュー2003年5月号に掲載されたもので、著者はニコラス・G・カーである。
当時、この論文の結論を「IT投資はお金の無駄遣いである」だと誤解した人が少なくなかったが、カーの主張は「ITは、もはや企業にとって持続的な競争優位の源