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特別編:看護系大学院は誰が行くんですか?

 さぁさぁやってまりました。尾っぽがないと書きまして「尾無」(おなし)でございます!!

 最近、災害後のメンタルヘルスを中心に紹介してきたのですが、「メンタルヘルスばっかりやん!!」という声を聞こえてきそうですので、気晴らしに特別編を放り込もうと思います。

 で、何がええかなぁと考えていたところ、後輩も大学院に進んだり、質問もちらほらいただくようになったので、今日はそのことについて私の考えを書きたいと思います。
【用語の定義】
 本noteでは「大学院」を「博士前期課程(修士)」と定義する。なぜなら尾無はまだ博士後期課程(博士)に進学していないからだ

 偉い先生や大学教員経験豊富な先生等、別のご意見をお持ちの方も多いとは思いますが、私の一意見として見流してください!それではどーーーぞ!!

●大学院で身につく力とは?

 大学院に行こう!と思うためには、少なくとも「そこで何が得られるか」を考えると思います。では、大学院を卒業すると何ができるようになるのか(何がもらえるのか)ですが、「思ったほど何も得られない」というのが答えだと思っています。



 がちょーーーーーーーん。



多くの人は以下の3つの理由に当てはまるのではないかと思います。
(1)研究力をつけたい(病院で研究しろって言われる、研究を指導しなくてはいけなくなった、実践の中から研究をしたい分野が出てきた(素敵)等)
(2)勉強をし直したい(実践現場での疑問を大学教員から指導を受けつつ、理論や先行研究に結びつけながら学びたい等)
(3)教員になりたい(教員に既になり修士を取らなければいけなくなった、このまま現場で頑張れるだろうか…修士を持っておけば何かチャンスが…)

では、これらが得られるのでしょうか、というのが重要なところ。

(1)研究力をつけたい、についてはさほどつきません。(がーん。)
 「え、それが大学院に行くメインでしょ?!」って思われる方も多いと思います。もちろん、研究とは何かといった知識もつきますし、一連の流れは学びつつ、修士論文を書きながら実践もします。ですので、研究力はつくはつくのですが、イメージしているほどつきません。

 修士論文を書いてもその大学に保管されるだけで、その後、学会へ投稿して査読を受け、承認されないと世に出ることはありません。
 研究力とは何か、という根本的な話になりかねませんが、基準として研究計画→研究費獲得→倫理審査→調査→分析→執筆→論文投稿→査読との戦い(笑)→承認までの一連のプロセスをできるようになることを研究力というならば、修士をでた段階でこれをできるようになっている人ほとんどいないのではないかと思います(尾無調べandそもそも尾無もそうだった)

(2)勉強をし直したい、は大学によるかもしれませんが、思ったほどできないのではないかなと。
 カリキュラムを確認してほしいですが、自分が何を学びたいか、というよりも、準備されたカリキュラムで学びますので、自分が学びたいと思っていることばかり学べるということでにはなりません。

 だからこそ視野も広がったりしますし、同期から学ぶことも多いですが、そもそも勉強したいことがその学部で学べるかを知っておくというのも必要かと思います。

(3)教員になりたい、は既に教員になって通学されている人はいいですが、これからなりたいと思ってとる人は必ずなれるわけではありません。
 修士を持っていれば声がかかる可能性が高くなったり、募集要項に「修士以上」と書かれていることもありますので受験のスタートラインに立つことはできます。しかし、どんなに優秀でも席が空いていないとなれないし、既にいる教員との年齢や研究分野のバランス等もあり、自分がそこにマッチするかも微妙。

 いやはや、じゃあ何のために修士へ進むのか…

●それでも大学院に進むメリットは? 

 私は、資格や学位は、「(まだできないけど)その仕事、私します!!」という表明をするものだと思っています。はい、謎の発言ですね(笑)

 どういうことかというと、例えば、健康運動指導士の資格を取ったからといって、すぐにバリバリの運動指導ができるようになるわけではありません。公認心理士だって、すぐに誰もを癒すカウンセリングができるわけではないはずです。

 ですが、資格を取得した瞬間、周りから「そういえばあの人健康運動指導士とったよね?運動教室頼んでみよう!」ってなるわけじゃないですか。

 修士も一緒だと考えています。
 修士をとっても研究の一連のプロセスを自立してできるようになるわけでもないし、かめはめ波を打てるわけでもない。ましてや元気玉も無理。
 でも、「あの人修士出たよね?ちょっと分析頼んでみようよ」「今度研究しなきゃいけないよね。。。あ、あの人に声をかけてみよう!!」



 こんな感じ。

 そしてこれを断らずに、巻き込まれることがポイント。
 巻き込まれると必然的に勉強をするようになり、少しずつできるようになる。
 巻き込まれる回数が複数回になると、一般の方々よりも研究ができたりする。
 こうして自分の強みができていく。

 なんか苦行…(笑)って思われるかもしれませんが、強みを持って仕事をするのは楽しいはずです。私は、社会人入学でしたので、保健師として働きながら、学んだことをすぐ実践で試していました。

 全地区周ってグループインタビューをし、生活習慣病に関連する要因の探索をしましたし、死亡・介護・医療費・生活習慣との関連も資料化したりしました。実践報告等も率先してやりました。

 大変ではありますが、やりがいを感じれましたし、成長スピードが上がったように思います。これがメリットかな、なんて思います。





 で、ここらへんで書くのをやめておけばいいのに、いらんことを書くのも尾無(笑)。
 上記のように、修士で学んだ後に何もしなければ、どんどん力は落ちていきます。私の尊敬する、岩手県立大学看護学部前学部長の武田先生が、私が修士を修了する際にこう言いました。

 「修士課程修了、おめでとうございます。きっと私がこの挨拶で「ますます研究力をつけて頑張ってください、活躍してください」というと思っていると思いますが、そんなことは言いません。現状維持!!これに努めてください。」





(教員、修士生含め会場内爆笑)





 でも、この意味が最近、よ〜〜〜〜くわかります。
 修士を卒業して、論文を出さずにいる人、地域貢献をしていない人、組織内で何もしていない人もいます。それは教員でも同様です。
 私はその人たちをディスるつもりは全くありません。仕事が忙しかったり、組織で他のことを求められたり…いろんな状況がそれぞれにあるし、修士を取ったらそれらをしなくてはいけないなんてことはありません。

 しかし、現状を維持するためにはやはり、動かないといけない。
 修士では少なからず血を吐くような努力をします(笑)私は凡人ですので、出血量が多かった(笑)
 だから、その力を保つためにもそれなりの努力はしないといけないんです。力を向上させたいならなおさら。
 こういったことを入学前から意識され、いい意味で卒業すればOkではなく、それからが、より一層勝負なんだ!!と思って入学されると良いのでは、と考えています。
 

●大学院を選択する基準とは?

 最後に、偉そうなことを書きます(笑)
 大学院を選択する時、何を基準にすると良いですか?という質問をよく受けます。私は修士の学生を指導できる立場にもありませんので、偉そうなことは言えませんが、自分と周囲の人たちを見ていて感じることを書かせていただきます。

(1)研究したい分野はどこ?
 まずはここからスタートする人が多いのではないでしょうか。それでいい!そのまま進め!!って感じです(笑)自分の関心がある分野じゃないと続かないし、自分が活用する分野の方がいい。私は約10年前の災害看護。当時、専門家がほとんどいませんでした。また、山田町は岩手県の沿岸部にありましたので一番近い看護大学が岩手県立大学で片道3時間。←殺傷能力あり

 東日本大震災の中で働き続けながら、ということを考えると、県大一択。私が幸いだったのは、地域看護学講座に災害看護分野で活動・研究をしている教授がいらっしゃったこと。災害後の保健師活動を学びたい・研究したい!という思いで選択させていただきました。

 皆さんもお金と時間(命)を費やすわけですから、絶対こだわった方がいい。と私は思っています。

(2)どの研究法を学びたい?
 先生方は研究法をそれぞれに質・量・実験などの研究法を「極めて」いらっしゃいます。質は質でも、グランデッドセオリー、KJ、現象学などなどそれぞれの流派に分かれています(教授・准教授であればほぼどれでも指導できると思いますが)。量も「やったことがある」レベルではなく「私は量の研究者です」と言い切る頼もしい先生がいらっしゃいます。

 修士では、カリキュラム上、量も質も学びます。でも使えるレベルまで行かれる方はそう多くないという実感です。

 ですので、今後の「修士」の使い方を考え、自身の修士論文で使う研究法を選択し、指導教員の主となる研究法と合わせられるとベストではないかと思います。

 余談ですが、保健師や地域で働く看護職は、「研究法」と相性がいいと勝手に思っています。保健師の対象は「個・集団・地域」というように、質から量の研究、どれもマッチしますし、どれもできることでたっくさん保健師活動も研究も地域貢献もできます!!保健師で修士に進む人が少ないのが悲しいですが(岩手県だけかな?!)今後はぜひ進んでいただきたいと思っています!!

(3)尊敬する先生、学びたいと思う先生を見つけよう!
 2年以上付き合う先生です。
 尊敬できる先生、学びたい!って思う先生がいいに決まっています(笑)
それ以上でもそれ以下でもなし!ぜひ下調べとご相談をしてすすまれてください。

(4)自分のブランディング
 最後に。よくあるのは「せっかく行くなら名門校に!」と思うのですが…ということです。個人的に(1)〜(3)がよっぽど大事だと思っています。結局は実力がつくことが大切だと私は考えているので。

 しかし、自分のブランディングも重要です。
 「未だに学歴重視する人いるんだ〜」等と言う人もいますが、事実、有名校を出ることで一目置かれることはありますし、きっと統計的に素晴らしい人も多いんだと思います(不確実な尾無調べ)。学歴が無駄になること(本人にとってプレッシャーになることはあるかもですが)はありませんし、私はブランディングという観点からはそれを重視することも悪くないと思っています。

 地方大学教員としては、ぜひ後輩には狭き門や有名校・有名な先生のもとに弟子入りし、しっかり学んでほしいと思っています。そして、雑草尾無と切磋琢磨してほしい!!と心から願っています。

 と、あまりおもんないことをつらつら書いてしまったようにも思いますが、今後修士課程へ進もう!とか進むまでは決めていないけど、ちょっと話聞いてみたいという方はご連絡ください!!

 ちょー気軽に話せる尾無ですので(笑)


 次回は、今回の延長として特別編「看護系大学教員のお仕事」あたりを書いてみよーかな、なんて思っています。それでは!!

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