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ほんわりもやもや

渋谷から都庁へ向かう予定があって、電車でもよかったけれど天気もいいし、地下に潜るのがなんだか惜しかったのでバスに乗ることにした。

都バスや東急バスはなんだかんだで乗ることがあったけれど、京王バスはもしかしたら初めてかもしれない。

時刻表の間隔の短さに需要を感じる。

田舎の生まれなので、通学は専らバスだった。
自転車で通う人も多かったけれど、昔から体力のなかった私には到底無理な話だ。

バスはざっくり1時間に2本。
ぎりぎりだと一つ逃すと遅刻するので、あえていつもえらい早い時間に登校していた。

雪の日の、バスに乗った瞬間のほっとする感覚、ちょっとカビ臭いような暖房の匂い。
この時期になると思い出す。

3分ほど待って、バスがきた。
最近のバスはほとんどノンステップで優しい。

手入れの行き届いた車内、物腰の柔らかい運転手さん。
初めて乗るけれど、京王バス、好きだ。

ちょっと幅の広い1人席に座る。
特別感があって、空いていると必ず選んでしまう席。

バスが走り出す。

車内が賑やかで聞こえずらいけれど、運転手さんが何か話している。

耳を澄ます。

…天気予報だ…。

京王バスって運転手さんが天気予報教えてくれるのか。
それともこの人だけなのか。

東京の天気、割と細かく教えてくれるじゃん。
昨日との比較で話してくれるの分かりやすいじゃん。

「お体暖かくしてお過ごしください」の締めくくり。

なにこれ。好き。

太陽の光と、暖房と、ほんわりした空気が運転手さんの言葉でよりあったかくなった気がする。

この言葉、今乗車している人はどれだけ聞いているのだろうか。

この運転手さんは毎回天気予報をお知らせしてるのだろうか。

眠くなるようなやわらかいもやもやを抱えたまま、私は下車した。

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