衝撃的な夏の出会い


スポンジを使って皿を洗っていた

スポンジとそれを持つ手の指の間に何か挟まっているようだ

どうせ野菜の切れはしかなんかだろう

洗う面ではないし気にせずに

そのまま洗い続けて

洗い終わってスポンジを置いた

水で食器についた洗剤を流していると

先ほど置いたスポンジの上で何やら動いている

なんだろうと思って

眼鏡を外してみてみると

なんと

泡のついた

小さな

クワガタさん


なんということだ

急いでその小さな泡付きのクワガタさんを傷つけないように慎重に

スポンジから引きはがして

水で洗い流してあげた

小さなクワガタさんはその間

6本の脚を真っすぐに伸ばして

床屋さんでシャンプーされているお客さんのように

大人しくしていた

念入りに流し終わった後

外の実のついた椿の木の葉の上に載せてあげた

さようなら小さなクワガタさん


もう二度と来てはいけないよ

恩返しはいらないからね

仕返しはもっといらないからね

そんなことを思いながら

麦茶を啜り

蝉の声を聴きながら

行く夏を惜しんだ





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