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【美術館やアートの楽しみ方】 #08 “印象派の画家”を年代差で分析しておくと理解が深まる。 (コートールド美術館展を鑑賞して)

美術展『コートールド美術館展 魅惑の印象派』(2019年9月10日~12月15日・東京都美術館(東京))を鑑賞した。

日本でも人気のある“印象派”が中心の展覧会だが、有名な画家がたくさんいる時代なのですぐ誰が誰かややこしくなるので、より理解を深めるために、“印象派の画家たちの年代層”にフォーカスをあてて分析してみることで、頭の整理をしておきたいと思う。

1、コートールド美術館について

コートールド美術館は、イギリスが誇る美術館のひとつで、ロンドン大学に併設されており美術研究機関も兼ねているという。今回は19世期末の印象派絵画を中心に、東京上野にてキュレーションされた。
会の概要については美術手帖のレポートが詳しいのでそちらにゆずる。

本展では、美術館のコレクションより、エドゥアール・マネの最晩年の傑作《フォリー=ベル ジェールのバー》や、ピエール=オーギュスト・ルノワールが第1回印象派展に出品した記念碑的作品《桟敷席》、ポール・セザンヌの《カード遊びをする人々》、ポール・ゴーギャンの《ネヴァーモア》など選りすぐりの絵画と彫刻約60点を一堂に展示。

今回の展覧会の目玉は、上記にある、マネ、ルノワール、セザンヌ、ゴーギャン、この4作品である。

2、印象派画家たちの“世代差”

マネ、ルノワール、セザンヌ、ゴーギャン。それに加えて、モネ、ゴッホ、シスレーなどの作品も展示された。
これらの作家はすべて印象派周辺の作家であるが(正確には印象派とは呼べない考え方もあるので“周辺”とする)、これらみんなをひとくくりにするには“世代が広すぎる”

そこで、まず、代表的な印象派周辺の画家たちを“生まれ年の順”で並べてみよう。こんな感じだ。

エドゥアール・マネ 1832年-1883年(51歳没)
エドガー・ドガ 1834年-1917年(83歳没)

アルフレッド・シスレー 1839年-1899年(60歳没)
ポール・セザンヌ 1839年-1906年(67歳没)
クロード・モネ  1840年-1926年(86歳没)
ピエール=オーギュスト・ルノワール 1841年-1919年(78歳没)

ポール・ゴーギャン 1848年-1903年(55歳没)
フィンセント・ファン・ゴッホ 1853年-1890年(37歳没)

大きくいうと、三世代が混在しているのがわかる。

マネは、印象派画家たちの先輩世代にあたる。それはこの年代層をみてもわかる。
マネは“1830年前後生まれ”の世代で、印象派画家のボリュームゾーンである“1840年前後生まれ”の世代に比べると、10歳の開きがある。
ゴッホやゴーギャンにいたってはもうひと世代下の“1850年前後生まれ”である。

印象派周辺の画家たちには、1830年前後、1840年前後、1850年前後の、“3つの世代”が含まれている事がまずわかった。

3、“第1回印象派展”時点の年齢で分析

1874年、旧来の権威であるサロン評議会(国営の美術展)からは相手にされない(入賞できずに落選が続いていた)“進歩的な画家たち”が寄り合い、独自の自分たちで手づくりの展覧会を企画した。これがのちに第1回印象派展と呼ばれることになる記念碑的な展覧会である。

この展覧会にモネが出展し、批評家たちから酷評を受けた作品が『印象・日の出』というタイトルで、ここから名前をとられて、一連の画家たちは“印象派”と呼ばれるようになった。批評家たちからは「スケッチのような画風ばかりで、完成した作品とは言えない」と断じたという。


この「第1回印象派展」にルノワールが出展したのが、今回来日した『桟敷席』である。
ルノワールが頭角をあらわすキッカケとなった代表作。

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それでは、この「第1回印象派展」の頃に、印象派周辺の画家たちの“年齢がいくつ”だったのかを整理してみよう。

◆1874年「第1回印象派展」時点の画家の年齢

エドゥアール・マネ 42歳
エドガー・ドガ 40歳

 アルフレッド・シスレー 35歳
ポール・セザンヌ 35歳
クロード・モネ  34歳
ピエール=オーギュスト・ルノワール 33歳

ポール・ゴーギャン 26歳
フィンセント・ファン・ゴッホ 21歳

こうやってみると、「印象派展」を企画した中心の画家たちはまだ30代半ばで、ここらで一発勝負をしておきたい最後の戦いだったのかもしれない。

そして少し先輩に頼れる40代のマネがいて、下には印象派展に憧れる20代のゴッホたちがいる。
こうして実年齢でみると、より3世代の世代間の差がリアルにイメージしやすいのではないか。

以上、
今回は展覧会の本題ではなく、印象派画家の整理方法のひとつを紹介した。
本来はここの世代分析に重ねて、1870年の普仏戦争の影響や、19世紀半ばの蒸気機関車発展の影響などをみると興味深いのだが、次回にゆずる。

(おわり)
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