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[自作楽器]電気擦弦楽器・回擦胡

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回擦胡(Kaisatsuko)は、私、尾上祐一が2003年に開発した2弦のエレキ擦弦楽器である。胡弓ような形をしているが、弓で弾くのではなく駒(ブリッジ)の近くに回転する円盤があり、それが弦を擦って持続音を出す。「回転する円盤が弦を擦って音を出す胡弓のような楽器」から回擦胡と名づけた。西洋のハーディガーディーと東洋のスパイク・フィドル(胡弓)のあいの子ともいえる。 

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円盤の回転機構は、ボディ真ん中を横に貫くシャフトをハンドルで回すと、その回転は傘歯車(マイタ・ギア)により90度の関係にある別なシャフトに伝わり、そのシャフトには擦弦部である円盤が付いておりこれが弦を擦って音をだす。

回擦胡の演奏風景や音がどのような物かは、久田祐三氏との自作楽器デュオ、サンピンによる回擦胡と打楽器(自作Darbuka)の演奏をご覧ください。

※更に様々な音楽形態での演奏例は後ほどこちらでご紹介します。

回擦胡 各部写真

この回擦胡は2004年製作の2本目の物で、以降2019年現在まで、この一本を月2~3本程度ペースで、ライブやレコーディングなど様々なシーンで活用し続けている。余談だが2003年製作の1本目は、試作機レベルでパフォーマンスが悪く翌年以降は使用していない。また演奏活動重視の状態が続いていることも有り、3本目は2019年現在まだ製作していない。

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ボディ

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ボディ横

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ボディ裏

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ボディ拡大を4枚

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ギアと車輪

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ヘッド

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底面

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寸法

回擦胡の設計図を作ってなかったこともあり、自分用の備忘録の意味も含め、写真に各部の寸法を記しておく。

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ネック端のシム(詰め物)入れ

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ネック端に30mm×20mm、厚さ0.4mm程度のシム(詰め物)を入れてネックを微妙に角度をつける。これによりハイポジションの音が大分良好に鳴る。

部品

木材
ボディ:アガチス 300mm×100mm×15mm→東急ハンズで表札用の板として売られているもの。
ネック:タモ角材 1.5cm×3.0cm×1m→これも東急ハンズで購入。
私的には、材質に対するこだわりは無く適当に選んだ。

ピックアップ
ピックアップは、エレキギターに使われる電磁式ピックアップと同じで、ミシンのボビンに0.1mm程度の被覆線を巻きつけた(これはミシンを使って巻いた)ものを2つ用意し、真ん中に(磁石につく)鉄棒(ネジを使用)を通しポールピースにし、下にはフェライト磁石を置いている。

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ナイロン・ホイール
キッチンのワゴンなどの車輪に使われているもの。DIYショップで200円弱で買える。外径32φ、内径5φ。民族音楽で使われる擦弦楽器の弓の部分にテグス糸が使われることがあるが、テグス=ナイロンであることがナイロン・ホイールを採用する切欠となった。演奏するときは、これにバイオリンの松脂を塗る。

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マイタ・ギア
協育歯車製 M80B20-M-1605

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5φステンレス・シャフト

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ハンドル
4φのシャフトに対応なのでドリルで5φにして使用

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アルミストッパー
シャフトの固定に使用

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ブッシュ(軸受け)
5φシャフトに合った物を使用

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ブリッジ部分
6φの長いビス→柱 六角ナットで本体に留める。
6φ蝶ナット→コマの台(アルミ板)を留める。そしてその高さ調整する。
コマの台→アルミ板 80mm * 10mm * 2mm
コマ→ステンレス細棒 2φ程度

ペグ
レスポール型エレキギターのペグを使用。余談だが、これは私の壊れた1stギター(1984年購入)の残骸。

電気配線

ピックアップ2個を並列接続する。2弦側のピックアップは100KΩ程度のVolumeを直列につける。これは、1弦と2弦の音量バランスを変更したいことがある為に2弦側のみにボリュームをつけている。全体のボリュームコントロールは、汎用品のフットボリューム使用で足で行っている。

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使用弦、チューニング

エレキギター用スチール弦の1弦(009)と2弦(011)を張っている(電磁式ピックアップを使用している為、ナイロン弦は使用不可)。チューニングは、私は元々ギター奏者であることもあり、4度チューニングにしている。
2弦:1弦=A:Dが一番多く、曲によってG:C、B:Eにすることもある。極まれに5度チューニングを使用する。

奏法

2弦をドローン、1弦をメロディで弾く場合→代表例
1弦と2弦の両方を和音弾きした場合→代表例
ピチカート代表例
トレモロ(ハンドルを細かく動かす)→代表例
といったものがある。

エフェクター

KORG AX1Gマルチエフェクターを使用して、さまざまな音色に加工している。この機種は、歪、コンプレッサー、EQ、ディレイ、リバーブといった常套的なものだけでなく、共鳴弦効果をだすDRONE、喋っている様な効果を出すVOICE、アナログシンセ的な音を作るFILTER、サンプリングした音を変則再生する特殊サンプラーなどなどバラエティに富んだ音つくりが可能になっている。私にとってこのAX1Gは、おまけ的な物ではなくアコースティック楽器のボディ、三味線やシタールのサワリ、サロードなどにある共鳴弦、シンセサイザーのモジュール・・・といったものに相当する楽器の一部分といえる物である。ちなみに私はこのAX1G(1998年発売)の開発者(DSPプログラミングと音色つくり担当)でもある。

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演奏例

回擦胡の応用例として、これまで行ってきた様々な音楽形態での演奏をご紹介したい。エフェクターの項でも記したように変化に富んだ音色にもご注目を。

まずは、尾上の自作楽器+ベース×2+ドラムによるロック・インスト・バンド、ワナナバニ園。曲は、回擦胡で作曲したオリジナル"Still Life"。このようにエレキなのでエフェクタで音色を加工したり、大音響でも十分に対応可能。

これもワナナバニ園によるパワーポップなオリジナル曲"Kara-Age"。こちらもエフェクタにより音色が加工されている。

こちらは、筝奏者の森川浩恵さんとのデュオで、曲は、現代邦楽曲の"鳥のように"

ラップトップPCのLeo Duplex氏とのデュオ。KORG PX5Dに内蔵の無限上昇エフェクトをかけて非常にスペイシーな音響を創出している。

再び自作楽器デュオ、サンピンの演奏で、曲はその名もズバリ「回擦ブルース」。勿論、回擦胡で作曲。中盤、フルパワーで演奏。

エレ・アコ混成のドラムデュオ、南たけし町田浩明両氏によるアシムトートと一緒にトリオで演奏したときのもので曲は両者共作の"漸近極限"。徐々に盛り上がり、非常にヘヴィでサイケデリックな演奏を展開。

韓国と日本を股にかけて活動する、ロック/フォーク・ミュージシャン、佐藤行衛氏の歌と山本耕一郎氏(perc)共に。韓国プサンでのライブ。

更には、こちらの回擦胡プレイリストをどうぞ。

回擦胡を製作した方々

Jeff Pollackさん製作。なんとアコースティック版の回擦胡!

こちらは、私の音楽仲間の小日山拓也さんによるもの。ペグ(弦巻き)がブリッジ側にあるのにご注目。なぜか可愛らしい感じがする(笑)。

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以下は、ロシアの方の製作っぽい。音や演奏はちょっと、、、だが、うれしい。

External Links

尾上鳥小屋サウンド
Odd Music
Noise Junk
Wikipedia
Make Magazine
Make Magazine(Japan)
学研大人の科学 エレキ特集号(回擦胡が紹介) ここで試読可能
米本実著"楽しい電子楽器 自作のすすめ"(回擦胡が紹介されている)

[自作楽器]リボンコントローラー
フレットが異様にスキャロップされたベトナムのギター


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