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#4 コアトレーニングについて Vol.1 : 定義と構成

コアトレーニングは、一般の方からスポーツ選手の様々な方々に広く行われていて、健康増進から競技パフォーマンスを向上、腰痛などの傷害によるリハビリテーションなどで取り入れられています。

スポーツ選手では、コアの強さが競技でのパフォーマンスの向上と障害予防の上で重要であることは言うまでもありません。もちろん、日常生活でもです。

一時期、コアトレーニングがテレビやSNSなどのメディアでも多く取り上げられていて、すごく流行ったと思います。

例えば、コアトレーニングをすれば「相手にタックルされても倒されにくくなる」とか、「空中姿勢のバランスが良くなる」などと言われていて、多くの子供から大人のスポーツ選手が実践していました。

注目が集まって浸透するのはいいんですが、誤った情報を鵜呑みにしていたり、他のトレーニングは置き去りにして腹筋や背筋群にアプローチするコアトレーニングがメインに取り入れられている印象がありました。

そんなコアトレーニングについて考察していきたいと思います。

コアの定義

コアと言っても何を指しているか分からないですよね。一般的にコアと言えば、腹筋や背筋をイメージするかと思います。例えば、仰向けの状態で脚を固定して行うシットアップ(上体起こし)などがそうです。

それに対して、コアとは、辞書では「物の中心部、中核、核心」、「地球の核」などと指しています。

トレーニングやリハビリの専門家の方々は、

・身体の中心の筋:Vern Gambetta
・体幹部や臀部などの身体の中心:Gray Cook
・脊柱、腹部の筋、伸展筋群、腰方形筋、広背筋、臀筋群で構成:Stuart McGill

と提唱しています。

このことからコアの定義は、身体の中心部分を指し、頭と手足を除いた胴体部分と言えます。コアはすべての動きが始まる部位でもあります。さらに動作中のパワー発揮、バランスと安定性の維持、コーディネーションの向上にも重要になります。

コアで重要な部位は腹筋群であるが、コアトレーニングは腹筋のコンディショニングではありません。それは、腹筋群は完全に単独で働くことはないためです。腹筋群は、臀筋、背筋群などのあらゆる筋群と協調して働いています。

例えば、野球の投球動作で速く投げる方法は、下肢で発生したエネルギーを、体幹を通して上肢に移行し、肩・腕・手の運動連鎖(キネティックチェーン)をすることです。

これは他のスポーツ動作にも共通していてほぼ全てが、脚から腕などといったエネルギーの転移を必要とし、コアはその共通要素になります。

コアの構成

コアは身体の中心部分を指し、頭と手足を除いた胴体部分と上記で説明しました。

その身体の中心部分には、多数の骨格や筋肉から構成されています。

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骨格では、脊柱(頸椎・胸椎・腰椎・仙骨・尾骨)、胸郭(肋骨や肩甲骨)、骨盤(寛骨)を指し、その骨に付着する多くの筋肉で構成されています。

その筋肉では、腹部の筋(腹直筋、腹横筋、内・外腹斜筋)、股関節周囲の筋(腸腰筋、大腿四頭筋、ハムストリングス 、臀筋群、内転筋群、深層外旋六筋)、背部の筋(脊柱起立筋、腰方形筋、僧帽筋、多裂筋、腸肋筋、回旋筋、広背筋、前鋸筋)などがあります。

こうした筋群により、姿勢が保たれ、動作が起こり、筋の活動が調整されて、全身の安定、力の吸収、力の発生、力の伝達が可能になります。

つまり、動作や運動の種類にかかわらず、身体の中心は活動しています。スプリント、ジャンプ、スローイング、プッシュ・プルなど動きの内容に関係なく、コアの筋が様々な動作平面で、筋活動(コンセントリック、エキセントリック、アイソメトリック)を行い、動作パターンを完了させています。

ちなみにコアの各筋の筋活動は下記のとおりになります(1)。

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コアトレーニングの誤解

コアトレーニングは、傷害予防とパフォーマンス向上に欠かせない要素です。

トレーニングによりコアの剛性と安定性を高めることでパワー発揮が可能となり、運動連鎖(キネティックチェーン)を通じてそれを伝達することができます。

しかし、コアの剛性と安定性が弱くて四肢が強い場合は力がうまく伝達できなくなる可能性があります。その状態だと強い力を出そうとして四肢に大きな負担をかけ余分なエネルギーを使ったり、コアが弱いので高い強度の動作を繰り返すと腰部に負担がかかりケガをする可能性が高くなります。

また、コアの剛性と安定性が強くても四肢が弱いとそもそもの力発揮能力が低いままです。ジャンプ、スプリント、スローイングなどの運動動作は、下肢から力を発生させて体幹、上肢と力を伝達するので、そもそも四肢が弱いと元々のパワー発揮自体が低くなります。

なので、コアトレーニングをメインに取り組んでいるだけではパフォーマンスを高めることが難しくなります。

あくまで、コアトレーニングはトレーニングの一要素なので、まずは全体的にバランスよくトレーニングの実施をオススメします。

まとめ

コアは多くの筋群によってあらゆる動作平面、筋活動を要するので、腹筋・背筋群ばかりではなく、機能的に連動させてトレーニングを行う必要があります。次回、コアトレーニングについて詳しくしていきたいと思います。

引用

1. 中村千秋 他. ファンクショナルトレーニング -機能向上と障害予防のためのパフォーマンストレーニング-. 文光堂. 2010. 







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