顕微鏡、倍率が大きいと視野はせまく・明るさは暗くなる理由
どんな理科のテキストにも、「顕微鏡を高倍率にすると、見える視野は狭くなり、明るさは暗くなる」と書いてあります。
なぜでしょうか?
★顕微鏡の仕組み
顕微鏡が見える仕組みから考えるとわかります。
われわれの眼が、顕微鏡で拡大された像を見ることができるのは、反射鏡で集められた光がプレパラートを通過し、その光が眼に届くからです。
(光が通過しないと、顕微鏡でものを見ることはできません。だから、例えば植物の茎の断面を顕微鏡で拡大して観察したいとき、茎のかたまりを顕微鏡にごろんと載せても、光を通さないので見ることはできません。光が通過するように茎の断面を薄く切ってプレパラートを作って初めて茎の断面を観察することができます。)
★視野
理解しやすいように、模式図を使って考えてみましょう。
光は、光の粒子が直線状に飛んできているものだと考えられます。
今、低倍率で顕微鏡を覗いたとき、約20個の光の粒子が通過した場所を、眼が見ていると仮定します。
次に、もとの場合の2倍の高倍率にして見るとします。
もとの見えていたものより狭い場所を拡大して見ているのが「高倍率」の意味ですから、視野(見える範囲)が狭くなることはすぐに納得できます。
★明るさ
次に明るさです。
低倍率のとき、光の粒子が20個、視野に含まれていました。この20個の光が眼に届いて見えていたことになります。
もとの2倍の高倍率にすると、面積が狭くなった分、その場所を通過している光の数も減少し、視野に含まれる光の粒子の数は約5個に減りました。
眼に届く光の数が5個に減った分、当然、暗くなります。
これが、高倍率にすると暗くなる理由です。
★倍率と視野・明るさの関係
最後に、顕微鏡の倍率とは「長さ」の拡大比のことです。
倍率が2倍というのは、長さが2倍になることを表しています。
面積はすべて長さの平方(平方=2乗)になります(だから面積の単位は平方~なのです)。
長さが2倍だと、面積は2×2の4倍になります。
通過する光の量は、模式図からもわかるように面積に反比例します。
したがって、倍率をもとの2倍の高倍率にすると、視野は4分の1になり、明るさも4分の1になります。
俊英塾代表。「塾学(じゅくがく)」「学道(がくどう)」の追究がライフワーク。隔月刊誌『塾ジャーナル』に「永遠に未完の塾学」を執筆中。関西私塾教育連盟理事長。