記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。

[読書記録]宙ごはん(町田そのこ) / 生きることと食べること

ここのところ体調を崩して、ごはんを作るのに大変な労力を費やしていました。
体調や心の状態に直結している家事、それがごはんを作ることだなぁ(いや掃除もそうだなぁ)、と実感します。
元気な時は何が食べたいのか自分に聞くとわりと広範囲であれもこれもと答えが得られるのですが、心か身体に元気がないと、「あれもなぁ…うーん」と献立段階からとても頭を使います。

宙ごはん、主人公の宙ちゃんが「食べること」に何度も救われて、そして何度も救われる人たちを見て、前を向いて歩いていくお話でした。
丁寧に作られたごはん。食べさせたい、と心から思っている人。噛み締めて食べる人。私の場合は自分で「おいしいなあ」と思えることに重きを置いている節がありますが。

佐伯さん(やっちゃん)のことが途中から好きになりすぎて、かっこよすぎて、やっちゃんが本の中で私の生きる希望になるほどだったので、途中ちょっとうちのめされてしまい、しばらく本を閉じて先に進めませんでした。
でも、やっぱり生きていかなくては、と宙と花野さんと一緒に、少しずつ元気を出しました。


昔よしもとばななさんが吉本ばななさんだった頃、ばななさんの本で、こういう取り戻し方をしたなぁ、とうっすら思い出しました。生きるか死ぬかの間をふわふわしている主人公が、花火を見て、うなぎを食べて、あれはなんのお話だったかな(調べました「白河夜船」でした、他にも吉本ばななさんの小説には食べることがテーマになっていたものがたくさんあったはず)。
多分読んだのが大学生くらいの頃で、深く心を打たれた私は、それ以来自分の中で「食べること」は「大切な何かを支えること」となって、できるだけ「おいしいものを食べること」をないがしろにしないようにしたいな、と思っている気がします。(その後私の実感として、荻上直子さんが監督した映画や群ようこさんの小説などにはじまり、食べることを大切にする物語がたくさん出てきているように思いますが、私の中のはじまりが吉本ばななさんであったことは間違いありません。)

話が逸れましたが、食べることは、人として生きることの重要なポイントになり得るのだ、ということをたくさんの人がずっと変わらず仰っていて、でも、どうしてもその日食べるものを作れなくても、なんとかして食べて、それでも生きていく、ということを最近は大切に思うようになってきています。そしてそんな作品もまた増えてきているように思います。誰かが作ったおいしいものをそれを求める誰かが食べられるといいな。

というわけでおいしい晩ごはん、「ピンポーン」と私に誰か持ってきてくれないかなー、とよく思います。笑
今日はどうだろう、ちょっとだけお肉のスープ、サラダはたくさん、さっぱりデザートもあるといいな。スプーンに5匙くらいのグレープフルーツのゼリーみたいな。


この記事が参加している募集

ありがとうございます!