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[読書記録]「掬えば手には」(瀬尾まいこ) / 誰かの何か

涙がぽろぽろと出ました。優しさに。
ここのところ優しいお話に触れっぱなしで心が緩んでいるようです。
人に寄り添うことって年を重ねる毎に体力なのかなんなのか、範囲が狭くなってくるな、と感じている私ですが(特に子どもを産んでからは尚更に)、なんだか大切なことを思い出したような気がします。

人の気持ちを感じとることはできるのに、何かを犠牲にしなければならないようであれば、それを見ないようにしないといけないこともあるし、そこに付き合い続ければどこかに穴があきそうになることもあります。
結局残酷なことになってしまうことを避けるため、人との関わりには線引きが必要だといつからか思わないと、自分が潰れてしまう、と感じるようになりました。
それを、ああ、こんな気持ちだったな、と思い出すような、懐かしいみたいな気持ちになりました。
この本で「前を向こう」とか、誰かを思い浮かべて、「寄り添いたい」と手を差し出す人がきっといる。

大学生の梨木匠は平凡なことがずっと悩みだったが、中学3年のときに、エスパーのように人の心を読めるという特殊な能力に気づいた。
ところが、バイト先で出会った常盤さんは、匠に心を開いてくれない。常盤さんはつらい秘密を抱えていたのだった。

「掬えば手には」本の帯より

高野さんも常盤さんも、とても強くて美しい、と思いました。世の中にはいろんなことを抱えて、それでも息をしてなんとか前を見ようと思っている人ってどのくらいいるんだろう。
私は私のまわりを見渡して、思い当たる人が殆どいないように思います。でも、私がそれを知らないだけかもしれない。私だって日常に触れ合う人に話さずにいることはたくさんあるし。
人には人の事情があるものなのかもしれません。思いの深さだってそれぞれだろうし、ただ、今を「やれ」と何かから言われて生きているのだろうな。

やれと言われている間は私も、お楽しみをかき集めてやっていこう、と思います。おいしいものを食べて、寝て、一枚の花びらくらいの大きさでも、何かの役に立てるなら、そのために生きて行くのだな、と思います。

とても優しいお話でした。

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