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話すチカラ—日本屈指の話し手となった2人による対談

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はじめに
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こんにちは。伊藤 航です。
いつも本の紹介をご覧いただき、誠にありがとうございます。

本日は明治大学文学部教授の齋藤孝さんとTBSアナウンサー安住紳一郎さんの『 話すチカラ—日本屈指の話し手となった2人による対談 』をご紹介いたします。

15秒以内で短く話す

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 人の集中力は、いったいどのくらい続くと思いますか?
実は、たった「15秒」程度で集中力は切れてしまうのです。ずいぶん短いですよね。人が15秒しか集中できないのを踏まえて仕事をしている人たちがいます。それは、「CMプランナー」と呼ばれる人たちです。CMの多くは15秒でつくられています。短く感じますが、人の生理に照らし合わせると十分な長さといえます。集中力が切れた人に向かって「この商品、いいですよ」などといくら繰り返しても効果がありません。ですから、視聴者が集中できる時間内に「いいですよ」と簡潔に伝える工夫をしているわけです。

人の集中力は15秒も持たない。このルールから、15秒をすぎて同じ話を続けてはいけないことがわかります。

私が放送で30秒の時間を与えられたときには、15秒が2セットあると考えて話題を展開します。たとえば、TBS系列で毎年夏に生放送する『音楽の日』という番組を告知するとき。30秒にわたってダラダラと「○日の土曜日、TBSでは『音楽の日』をお送りします。7時間ほどの生放送です。ぜひご覧ください・・・・・・」などと続けると、確実にダレてしまいます。

そこで、前半15秒で「このところ、関東地方では雨が続いていますが」といった天気の話をしてから、後半の15秒で『音楽の日』の告知をする、という具合に構成します。

45秒であれば、「序破急」の3分割。60秒であれば、「起承転結」の4分割。いずれも15秒単位で話を組み立てるのが理想です。

さて、そうやって話にメリハリをつけても、どうしても時間を持て余すことはあります。その場合は、話の前か後に「無意味な余白」をつくるというテクニックもあります。たとえば、ものをゆっくりととり出すのに3秒を使い、残った秒数でとり出したものについて説明する、という具合です。

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余計な言葉を入れない

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人は話の中で言葉を選び切れないとき、「えー」「あのー」などの場つなぎの言葉を入れがちです。北朝鮮による拉致被害者、横田めぐみさんのお父さん・横田滋さんが記者会見をされたとき、ほとんど「えー」としか発言しなかったことがありました。それは、横田めぐみさんの消息が不明であるという状況を受けて行われた会見でした。

横田滋さんからは、ほとんど具体的な言葉はなかったものの、そこにいる記者たちの全員が納得していました。「えー」としか口にできない心痛を理解できたからです。

このように、心情を雄弁に伝える「えー」「あのー」はあります。
ただし、それはあくまでも例外です。

一般的に「えー」「あのー」「まあ」などを連発していると、「イエス・ノーの結論が出せない」「思考がまとまっていない」と受けとられます。

要するに「相手になめられてしまう」のです。「えー」「あのー」と言ってしまうクセを直すには、言わないように強く意識するしかありません。これは無意識に出るフレーズなので、本当は他人に指摘してもらうのが確実なのですが、現実的ではありません。地道な「セルフ矯正」が唯一の道なのです。

放送局のアナウンサーでも、「えー」「あのー」のフレーズをしっかり抜くには、3年はかかります。

「えー」「あのー」を入れないことを強く意識すると同時に、話したい内容を明確に持つクセをつけることも重要です。

私が元卓球選手の平野早矢香さんに生放送でインタビューをしたとき、驚くべき経験をしました。平野さんは特別なアナウンスの訓練を受けていないはずなのですが、会話の中に「えー」とか「まあ」という音を一切挟まなかったのです。平野さんに「卓球の魅力は何ですか」などと質問すると、「卓球の魅力は相手のラバーの角度やボールのスピードによって、自分の対応が変わること。それを素早く自分の中で決断する楽しさです」といった答えが、よどみなく出てきます。

インタビューの間、私は驚きっぱなしでした。こちらが「あのー」を連発しました。

平野さんクラスのトップアスリートは、明確な目標を持ち、決められた時間の中で確実にトレーニングメニューをこなすというストイックな生活を送っています。

質問をされたときも、答える内容が自分の中でハッキリしているので、無意味な音を挟む必要がないのでしょう。

このように意識の持ち方によって、無意味なフレーズを少なくできるのです。私でも全部なくすのは無理ですが、数をコントロールするのが、理想です。

一方、「えー」とか「まあ」のフレーズが一切なくなると、AI(人工知能)のように感じられることもあるので、人間味を出すようなときには口グセや「えー」「まあ」などは有効です。

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語尾に曖昧な言葉を使わない

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語尾の使い方で話の印象は大きく変わります。たとえば、「○○ですね」のように語尾に「ね」をつけると、途端に話しやすくなります。特に、相手の同意がほしいときには、どうしても「ね」をつけたくなります。結果として、「ね」をつけるのがクセになり、多用しがちです。

たしかに「ね」は、便利な語尾です。やわらかくて親しみやすく聞こえる効果もあります。ただし、語尾に「ね」をつけすぎると、ちょっと押しつけがましい印象も出てきます。ですから、自分が「ね」を多用していると気づいたなら、意識して削るべきです。

私も放送で「ね」を使いすぎている日があります。すると、その次の日には、台本の一番上に「『ね』禁止!」と書いて注意します。

「~と思います」のように、話を曖昧にする語尾も要注意です。リポーターが「それでは、御茶ノ水に新しく豚丼のお店ができたということなので、これから私がリポートしてみたいと思います」と言っています。一見すると問題のない言い方ですが、厳しくみると、まわりくどいのです。

この「思います」は、あくまでもリポーターの心の動きです。
「あなたの心の動きはどうでもいいから、さっさとリポートしたら」と言いたい気持ちになるのです。

この場合は、思い切って曖昧な語尾を削り、「新しい豚丼のお店ができたようなのでリポートします」「新しいお店ができましたので、行ってみましょう」のほうがスッキリします。

前者のほうが使いやすい表現なのですが、後者のように使いづらいけれどニュアンスがより伝わるほうにも、たまにトライしてみてください。

「させていただきます」となると、さらにまどろっこしさが増します。

「このたび新しい映画を公開させていただくことになり、その映画で主演を務めさせていただきました私、俳優をさせていただいている○○と申します。お集まりいただいた皆さんに一言ご挨拶させていただきます。それでは失礼させていただきます」

このように「させていただきます」の連発は最近のトレンドともいえます。「なるべく周囲と波風を立てたくない」「出しゃばりすぎて目をつけられたくない」という潜在意識が働いているのでしょう。

でも、「させていただきます」を多用すると覚悟がないように思われます。「させていただきます」は、使って1回か2回です。

たくさんの人の前に出て「謙遜」のフレーズばかりだと、スピーチはだいたいダレるという話をさせていただきました(笑)。

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おわりに
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今回ご紹介した本書の要点をまとめると以下のようになります。

❶ 15秒以内で短く話す
人の集中力は、いったいどのくらい続くと思いますか?
実は、たった「15秒」程度で集中力は切れてしまうのです。CMの多くは15秒でつくられています。集中力が切れた人に向かって「この商品、いいですよ」などといくら繰り返しても効果がありません。ですから、視聴者が集中できる時間内に「いいですよ」と簡潔に伝える工夫をしているわけです。
❷ 余計な言葉を入れない
人は話の中で言葉を選び切れないとき、「えー」「あのー」などの場つなぎの言葉を入れがちです。一般的に「えー」「あのー」「まあ」などを連発していると、「イエス・ノーの結論が出せない」「思考がまとまっていない」と受けとられます。要するに「相手になめられてしまう」のです。余計な言葉を入れないことを強く意識すると同時に、話したい内容を明確に持つクセをつけることが重要です。
❸ 語尾に曖昧な言葉を使わない
「~と思います」のように、話を曖昧にする語尾も要注意です。リポーターが「それでは、御茶ノ水に新しく豚丼のお店ができたということなので、これから私がリポートしてみたいと思います」と言っています。一見すると問題のない言い方ですが、厳しくみると、まわりくどいのです。この「思います」は、あくまでもリポーターの心の動きです。「あなたの心の動きはどうでもいいから、さっさとリポートしたら」と言いたい気持ちになるのです。この場合は、思い切って曖昧な語尾を削った方がスッキリします。

※上記文章はダイヤモンド社『 話すチカラ—日本屈指の話し手となった2人による対談 』より一部抜粋しています。


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