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3月20日 STADIAが発表されたね、というお話。

STDIA発表前夜

 発表前夜。19日。
 確か今日、グーグルのなにかが発表されるはず……と勘違いして色んなゲームサイトを巡り歩いたが何もなし。この段階では日本のゲームメディアで発表を中継するとか、編集者が見ながら実況するとか、そういうものもなかった。静かなものだった。
 調べている内に、「20日深夜2時発表」だったとわかったので、じゃあ今日はもう寝ようか。で、寝た。

 翌朝、起きて情報をチェックすると大騒ぎになっていた。ゲームメディアが一斉に取り上げていたし、Twitterでもみんなが話題にするトピックスになっていた。

 とりあえず、各ゲームサイトのリンクを貼り付けよう。

電ファミニコゲーマー:Googleがゲームプラットフォーム「STADIA」正式発表。YouTubeで視聴中の『アサクリ』を5秒でブラウザにて起動、スマホやテレビへ中断無しで切り替え可能

ファミ通:Google新プラットフォーム“STADIA”発表詳細リポート。ハードを問わないストリーミングゲームサービス。将来的には8K120fpsも想定【GDC 2019】

4Gamer:[GDC 2019]Google,ゲームストリーミングプラットフォーム「Stadia」を発表

IGNJapan:Googleが新たなゲームプラットフォーム「Stadia」を発表!ゲームや機能、詳細が明らかに

GZIMODO:Googleの新ゲームサービス「Stadia」まとめ:これは歴史に残るぞ

4Gamer:[GDC 2019]Googleのクラウドゲームサービス「Stadia」は,他社のサービスと何が違うのか?
STADIAのスペックはこちらで推測されています。参考に。

発表直後の感想

 STADIAがなんなのか、ざっくりした説明をすると、ゲーム機のないゲーム機。ゲーム機はネットの向こう側にあって、モニターがあればPCでもスマートフォンでもゲームができる……というもの。ストリーミングゲームの最新版のようなものだ。
 ストリーミングゲームの仕組みはすでにあるものだけど、そのやり方がエグい。凄い。
 世界200ヶ国にデータセンターを置き、動かす機械のスペックは問わない。PCであろうが、スマートフォンであろうが。どんなマシンであっても、最強スペックのPCゲームと同等のものが動く。
 4K解像度、HDR、60fps(将来的には8K、120fpsを目標としている)、GPU演算性能は10.7 TFLOPS。PS4 Proが4.2 TFLOPSで、Xbox One Xが6.0teraflopsなので、1人に割り当てられるインスタンス(1プレイヤーに割り当てられる単位)だけでPS4、XBOXoneを凌駕する。あと明らかにVRを意識した発言も見られた。VRゲームも近いうちに発表されるのかも知れない。
 今は100人同時対戦のバトルロワイヤルものが大流行だが、1000人同時参加のバトルロワイヤルを描くことだって可能だという(ただ、それって「本当に面白いの?」という疑問も。面白いのは上位20人くらいじゃない?)。
 オンラインゲームの形はSTADIAによって確実に変わるだろう。映画『レディプレイヤー1』で描かれたような高精細なアバターで、ど派手なゲームが現実に動くかも知れない。
 細かい仕様については、上のリンクのどれかに詳しく書かれているので、まだ見ていない、気になった人は見てほしい。

 STADIAには様々な驚きがあるのだが、私の注目はYouTubeとの連携。
 シェアボタンを押すだけでYouTube配信ができて、それを見ていた人が「面白そう」と思ったらその場で介入、一緒にプレイができてしまう。
 これからはバトルロワイヤル系、ボードゲーム系のような、「配信もできて一緒に楽しめる」タイプのゲームがより強い存在感を持つ可能性がある。格闘ゲーム配信者に乱入もできるぞ。「一緒に遊べる」は強いキーワードになりそうだ。
 YouTubeでゲームのPVを見て、「面白そう」と思ったらワンボタンでそのゲームそのものを遊ぶこともできるそうだ。それこそ、「あったらいいな」が丸ごと実現する、というような話だ。

 いつかゲーム機の形はなくなるかも知れない……。ゲーム機はなくなり、オンライン上のプラットフォームだけになるかも知れない……。
 そんな想像はしていて、来るとしても漠然とPS5の後くらいのことかな……。早くても5Gが始まり、一定以上普及してからだろう。そう考えていたけど、STADIAによっていきなり来てしまった。
 グーグルには資金と技術があり、なにより「ゲーム機」という形そのものへのこだわり(と愛着)がない。だからこそ「あったら良いけど、もうちょっと未来の話かな」という世界にぬるっと割り込める。
 しかもそれを世界中に独自のデーターセンターを置いて動かす、というようなエグいやり方もできてしまう。コントローラーだけが発売されるそうだが、これもインターネットすら介さず、Wifiでグーグルのデータセンターと直接やりとりするそうだ(Wifiというのがどうかしている)。そんなエグいやり方、グーグルくらいでしか実現できない。

 これからE3に向けて、マイクロソフトやソニーが新ハードの情報を公開しよう……という段階に入っていたと思うが、とんでもない横槍が入ってしまった、という感じだ。ええ、もう串刺し状態ですわ。なにしろ、PS、XBOX、Switchが持っていた個性、優位性を全部包括してしまい、さらに新しい遊びができてしまう。
 STADIAはこのままゲーム史をガッと変えてしまうかも知れない。任天堂、ソニー、マイクロソフトという三つどもえの歴史はまあ終わるでしょう。ゲームハードの世界、「4番手は消える」という法則は昔からあるが、この3社の内どれが消えるかね、という話は出てくるだろうし、それ以上に影響力は大きいかも知れない。三つどもえ構造すら消えるかも知れない。
 これからはゲーム機はいらなくなったし、グーグルのような独自のサーバーをあちこちに置ける会社が一番強い……ということになる。対抗できるのはGIZMODOが取り上げているけどGAFA。Amazon、アップル……Facebookだけはよくわからない(ARグラスを作っているそうだが)。任天堂やソニーでは太刀打ちできないし、ゲームしか作っていない任天堂はさらに分が悪い。ソニーや任天堂が消えて、ゲームの世界もGAFAが支配する……そういうステージに入ったかも知れない。

 が、懸念材料もある。
 ゲームプラットフォームがいかに凄くても、ソフトがショボかったら流行らず姿を消す。今のところ『アサシンクリード』などが発表されているが、どれも既存タイトル。オリジナルの新規タイトルではない。
 NintendoSwitchはゲーム機の中で一番スペック下だが、魅力的なオリジナルタイトルで今もっとも売れている。ゲーム機にとって一番重要なのはゲーム機のスペックではなく、どんなゲームができるか。みんなそのゲームを遊びたいから、仕方なくゲーム機も買うのだ。これを一番に考えなくてはならない。
 ゲームユーザーの気を引くオリジナルタイトルを発表できるか。これに応えられなかったら「PS4でいいよ」「Switchがあるから」で話は終わってしまう。結局、既存のゲーム機で充分、ということになる。STADIAは発表時は凄かったけども……で終わる。『ポケモン』と『スマブラ』があるSwitchが一番強い……という結果で終わる。

 ハイスペックは一部のマニアックなユーザーには好まれるが、大多数のユーザーに「難しそうだしよくわからない」と思われる危険性もある。経験的に言えることだが、スペックの凄さというのは、大多数の一般ユーザーには「何が凄いかわからない」世界なので、そこをいくらアピールしても効果は薄い(10.7 TFLOPS……と言ってもわかる人は少ないだろう。私もこう書いていて、実は意味を理解していない)。PS4proとXboxoneXのどちらが優れているか詳しく知っているユーザーは実は少ないだろうし、知ったところで「スペックの高い方」ではなく「面白いソフトがたくさんあるほう」が選ばれるだろう(実際に、一番スペックの低いSwitchがいま一番売れているという現実があるし)。ここでPRの手法を間違えるとコケる確率が高まる。
 ただスペック推しというだけのハードは思ったほど振るわないものだ。これもこの世界における真理。さてどうなるやら。

 任天堂・ソニー・マイクロソフトの時代が終わって、ゲーム業界もグーグル・Amazon・マイクロソフトの時代が来るか……それとも?
 コケたら「ゲームもGAFAが支配する」という未来が回避されて、実はハッピーかも知れない。
 個人的になにもかもGAFAというのはどうかと思うので、任天堂とソニー踏ん張れ。
(グーグルは超巨大なので、コケて撤退……というのは絶対ないんだけどね。5年ぐらい普及せず赤字状態でも、ノーダメージ。「絶対に負けない」企業だから、とても強い)

 ところで、STADIAのローンチは2019年だがアメリカ、カナダ、イギリス、ヨーロッパなどで、日本では展開されない。日本外されたかー。

 追記

 あれからしばらく考えていたけど、グーグルがゲーム業界に入ってきて、現在の状況が劇的に変化するか……というと実はあまり変わらないんじゃないかな、と思うようになってきた。

 まず任天堂。任天堂は『マリオ』『スマブラ』『ポケモン』『ゼルダ』『Splatoon』という業界屈指の強コンテンツを有しているので、この牙城は容易には崩されない。日本とアメリカでソフト売り上げトップ20の上位は半分以上任天堂が独占している。これをひっくり返すのは難しい。

 ということはグーグルのライバルはソニーとマイクロソフトだ。方向性的にも、グーグルVSソニーVSマイクロソフトだ。
 でもXboxoneXとXboxoneSの日本国内での週売り上げの合算はだいたい50台。マイクロソフトもGAFA“M”だが、日本での存在感はこんなもんだ(これに対して、NintendoSwitchの週売り上げは4~5万台)。欧米ではもっと売れてるとは思うけど、ちょっとデータがないんで。とにかく、圧倒的にプレステが勝利しているんだ。

 この中に――ソニーVSマイクロソフトVSグーグルのゲーム機が並んでいて、普通の人がどれを手に取るか、というとやっぱりソニーのプレイステーションでしょう。ブランドの力が違う。スペックが上かどうか、じゃなくて、プレステなら面白いソフトが出るという安心感がある。プレステのほうが独占タイトルもたくさんあるし。この中なら、だいたいの日本人はプレイステーションを選ぶだろう。

 するとグーグルのライバルは、週販50台のXboxだ。グーグルは週販50台のゲーム機と争うことになるんじゃないかな。Xboxと比較すると、「ゲーム機」という形のないSTADIAのほうに分があるように感じられる。もともとPCゲームが根づいている地域なら、STADIAは勢いを持って拡散するかもしれないが、日本においては任天堂とプレステというブランドが強力なので、すぐにはひっくり返らないだろう。
(STADIAがもっとも猛烈に力を発揮するのは、任天堂やソニーがいまだリーチできていない新興国。需要はありまくりだけど、供給されていない地域では力を発揮するだろう)

 なんにせよグーグルは超巨大なので、なかなか普及しないという状況になってもダメージにならない。無限コンテニュー可能みたいな状態だし、HP999999のボスに1ずつダメージを与えるようなものだ。負けを認めない限り負けないのがグーグルだ。じわじわと効いてきて、10年後には業界の趨勢をひっくり返しているかも知れない。というかそういう計画かも知れない。
(あとグーグルには「任天堂を倒す」ための究極の一手も使える。すなわち、任天堂を買収することだ――グリーの社員はきっと思いついていたであろうけど。任天堂が応じるとは全く思わないが)
 ゲームもGAFA化――この流れだけは止めたいので、国内企業には頑張って欲しいところだ。

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