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映画感想 ゴジラ 2 決戦起動増殖都市

 アニメ『ゴジラ』はNetflixが協賛している作品なので、劇場公開からほとんど間もないタイミングで視聴可能。今までは時間がなかったのでとりあえずマイリストに放り込んでいたが、やっと見ることができた。

 前回、ゴジラついに撃破……と思いきや実はそのゴジラは本体ではなかった。その直後、体長300メートルにもなる超巨大ゴジラが。ハルオは謎の未開民族に救われ……というところで前回は終わっている。

 前回の感想で書いた通り、この作品は実は『シドニアの騎士』だ。地球にやってきたのが奇居子ではなく、ゴジラだった……とだいたいこのように捉えればいい。もはやあの『ゴジラ』とはまったくの別作品だ。『シドニア』の世界観になぜか迷い込んできたゴジラを討伐するのがこの作品の趣旨である。このテイストは今回も基本的に変わっていない。

 今回初めて登場するのは、マイナとミアナを始めとする謎の未開民族だ。彼らは人類の生存者なのか……?
 いや、どうやら昆虫から突然変異した新たな種である、という。それで彼らは謎の卵を守っているという……。
 はい、モスラですね。もうモスラ登場以外の何者でもない。
 ネタバレになるのであの件についてはここには書かないが、第3部の展開があまりにも見えすぎてしまって……。第3部は要するにアレをやるつもりなんですね。ここまで話を引っ張った以上、アレをやる以外に話を畳む方法はもうないでしょう。

 とりあえず、マイナミアナは可愛い。あんな悲惨な環境下で、あんなふうに衣装や入れ墨を洗練させる余地なんかあるのだろうか……という疑問は無粋なのでやめておく。
 気になったのは入れ墨……くわしく見ることができなかったが、マイナミアナの2人で何かの形を示しているのだろうか?

 映画は1時間40分。前半1時間は戦いはほぼなし。一度、翼竜のようなもの(今回やっと気付いたが、皮膚がゴジラと同じ感じになっている)と戦う簡単なシーンがあるが、それくらいだ。ほとんどが新たに出てきた新種族や、今回の舞台となるメカゴジラシティの解説に割かれる。
 ガルグはマイナミアナが持っている矢尻がナノメタルであったことからメカゴジラがまだ健在であることに気付く。
 しかしながら、実は「メカゴジラ」は登場しない。メカゴジラを構築するナノメタルは自立的に修復、増殖する性質を持っているので、2万年放置した結果、単一の「メカゴジラ」ではなく「都市そのもの」になっていた。この都市がメカゴジラであるという。
 この設定はなかなか面白かった。ゴジラが新たな生態系を作っている……という大胆で遠大な設定を大風呂敷に広げているのだから、メカゴジラの設定も同じくらい大胆に作っている。この発想の転換は面白かった。
 メカゴジラシティを再起動させ、ゴジラ討伐のための都市として改めて再構築するのだが……。

 その間にちょっとしたラブロマンスが描かれる。ハルオとユウコとのラブロマンス。そこになぜかミアナが間に入りたそうにしている……という構図だが。
 ハルオユウコの間に特に物語がないのに進行していく恋愛ドラマ。これはもはや「物語」とは言わず「設定」で、その後に起きる悲劇的なシーンを作るためのものに過ぎない……というのが見えてしまっている。何かを起こすためのフラグ……というのが見えてしまっている。
 そこに、遠くから見守っているミアナ……なのだが、なぜミアナがハルオを気にしているのかまったくわからない。ここに物語がない。
 そもそもこの作品の弱さは、それぞれの登場人物の行動原理を描かなかったことにある。行動原理不明で、「設定」として進行してしまっている。こういった「設定」のみで進行させてしまう手法は、テレビアニメなんかではそこそこ通用する手法だが、ドラマ的な厚みが必要となる劇映画となると少し弱い。ハルオは打倒ゴジラに燃えているわけだが、その行動原理がどこにあるのかわからず、第1部からずっと不気味だった。
 とりあえず、そんなことよりユウコが隠れ巨乳だったことが一番の収穫であった。(そして巨乳キャラを失ったことが一番の損失である。私たちは今後、どの巨乳を追いかけて観ればいいのだろうか)

 もう1つ、中盤において、かなり長い尺を使って、メトフィエスを始めとする異星人「エクシス」と、ガルグを始めとする異星人「ビルサイド」との思想的対立が描かれていた。恋愛パートより、こっちのほうがはるかに比重が大きいのがわかる。
 ハルオはエクシスとビルサイドの両方に挟まれ、煩悶する。
 エクシスとビルサイド、それぞれがハルオを迷わそうと、自分の陣営に引き込もうとしているように見えたのだが……。この思想対立が最終的にどんな意味を持つのか、もしかしたら第3部で明らかになる話かも知れない。なにしろ、第2部ではビルサイドの本質が見えたのだが、エクシスの本質はいまだに見えていないのだから……彼らは地球人の味方なのか、本当に協力者なのか、それ自体あやしいところがあるのだし(第3部で何にもなかったら、ずっこけそう)。

 動画は今までと同じなのだが、ひさしぶりにポリゴンピクチャアズの動画を見て、これもいいものだなぁと思った。ポリゴンピクチャアズの動画の手触りが独特なのだが、その感触がいいなぁと。どうにも最近見た手書きのテレビアニメがボロボロだったので、久し振りに「ああ、ちゃんと動いている」という実感を読み取ることができた。
 人が斜めになっている時の肩から肩への距離感と、背中の肩胛骨、背骨への凹凸表現や、皺になっているところの立体の厚みなんかがきっちりと表現されている。当然ながら、パースは正確。手書きだとこの辺りの表現がどうにも甘くなりがちで……。「なんとなく決まったポイントに陰影を載せている」だけであって、ちゃんと服の立体が表現するに至ってない作品が多い。この辺り、きちっと表現するのは本当にスキルが必要なので、これはCGに負ける。
 ただ、気になったのは歩く動き。荒れ果てた大地を歩く場面があるのだが、キャラクターたちが地形の動きを無視して、真っ直ぐに歩いている。
 そこまで問題にするポイントではないが、個人的に「歩くときの姿勢の動き」を気にしていて、こういうところはデジタルアニメだからこそ表現して欲しかったなぁと思うところ。

 後半、1時間を越えた辺りからゴジラ・アースとのバトルシーンに入る。
 史上最大300メートルのゴジラなのだが(あ、てことは東京タワーなぎ倒せる高さだ。やったね!)、巨大な感じが全くしない。ゴジラ・アースが描かれる時はいつもカットの中に単体で、対比するものが描かれない。そうすると、ゴジラ・アースが本当に巨大なのかどうかがいまいち掴みづらい。お馴染みの吠え声もいつも通りでさほど空間が意識されてないし、やっぱり巨大さは感じない。
 アニメの弱点は質感、巨大なものを表現するには相応の質感が必要になるのだが、アニメになるとこの質感が飛びやすい。こういうところでフォトリアルで負ける。ゴジラ単体を画面にクローズアップしても、いまいち質感からスケール感を読み取りづらい。目元のアップも、いかにもCGっぽいツルッとした感じで、巨大さは特に感じられない。
 これで史上最大300メートルって言われてもなぁ……。

 このゴジラと戦うために、3体の衛人が出撃する……ん? なんか間違えたか? いや、この作品は『シドニア』だから、衛人で合っているはずだ。3体の衛人で出撃して、後ゴジラ・アースを作戦地点へと誘導する。
 ここからの戦いはかなり引き込まれた。前作の緊張感のなさが嘘のように、めくるめく戦いの場面へと突撃していく。
 で、結果的にゴジラ討伐に失敗するわけだが……。うーん、どうにもエクシス側がわざと敗北するように誘導したように見えるのだが。ビルサイド側のやる通りに進行していたら、ゴジラ討伐に成功していた可能性があったはずなのだが。これ第3部への伏線かな、それとも私の思い込みかな? エクシス側がハルオを惑わして、まんまとビルサイド側を死に追いやった……そういうふうに読めなくもないんだが。

 第1部の不調をだいぶ取り戻した『ゴジラ』第2部。ちょっと「おや?」というところはあるのだが……実は第3部はかなり期待している。だって役者が全部揃うわけだから。あと気になるのは……メトフィエス=櫻井孝宏は黒幕なのかな、違うのかな……そこが気になる。(第3部に入ったら、○○○を引き連れて「はっはっはっはっ、御苦労だったな地球人たちよ」とか言いそう)
 第3部の展開はだいたい予想はできるのだが、しかしだとするとアニメゴジラは、SFにした必要あったのだろうか? という疑問に行き着いてしまう(ポリゴンピクチャアズの表現手法では日常世界を表現できないから……というのが理由としてありそうだ)。今回、メカゴジラが街そのものになってしまっていた、という発想がかなり面白かったので、同じくらいの意外性があったら大いに期待を持てる。
 第1部、第2部と少しずつ面白くなっているので、ここで……という期待を持っておきたい。

8月22日

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