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11月18日 これからの未来、人間の脳は進化するのか、劣化するのか……?

 作業しながらYouTubeを流していると、ちょっと興味深い動画が流れてきた。

 面白い動画でしょ?

 未来の世界、SFで描かれているように脳に直接記憶を送り込んだり、引き出したりできるのか? ……という問い。
 「記憶」というのは脳の中でも「海馬」という場所に保存されている……ということがほぼ確定している。1953年、重度のてんかん症のヘンリー・グスタフ・マレイソンは治療の一環として海馬を摘出した。その結果、新しいことは何一つ記憶できなくなってしまった。ただし過去の記憶、体に身についた感覚(車の運転など)はそれまで通りできたという。
 こういったできごとから脳で「記録」がなされていることはほぼ確定しているのだが、しかし「いったいどういう状態で」保存されているのか、いまだに不明だ。ハードディスクみたいに理路整然とファイルが並んでいる……というわけでもない。海馬を引っこ抜いたら記憶できなくなったからそこにファイルが記録されていた……ということしかわかってない。

 記憶というのは厄介なもので、憶える必要のないものはよく憶えているのに、憶えるべきことはぜんぜん憶えていない。意識の中で「これは重要だ」と思ったものを選別して記憶に定着させることができない。せっかくいい本を読んで、素晴らしい知識を得たのに、1週間もたたないうちにほとんど忘れてしまう。これはどうにかならないのだろうか……。

 こちらの動画はNeuraLink(ニューラリンク)社が研究の成果として発表した動画だ。このお猿にはN1リンクと呼ばれるインプラントが脳に埋め込まれており、これがBluetoothでデバイスと接続できるようになっている。
 お猿が「ポン」というゲームを遊んでいるのだが、動画の途中から(1分30秒あたり)コントローラーのケーブルがゲーム機本体から外れている。しかしそれでもゲームはお猿が意図した通りに動き続けている。
(お猿が棒を加えているのは、勝利したご褒美としてバナナスムージーが出てくるため)
 お猿はケーブルが繋がっていなければゲームが動かない……ということを知らないので、コントローラーでゲームが動いている、と騙してゲームを続行させている。お猿は知らないうちに、「自分の脳波だけでゲームを遊ぶ」……ということをやっている。
 動画の2分15秒以降を見てみよう。お猿はコントローラーを握らなくてもゲームができる……ということに気付いて、完全に脳波だけでゲームを遊ぶようになっている。

※ NeuraLink(ニューラリンク) ブレイン・マシン・インターフェイスを研究開発するアメリカの企業。共同設立者はイーロン・マスク。脳波コントロールマシンや電子機器、ロボットなどの開発を携わる。その実験過程で猿や豚の脳にインプラントを埋め込んでいるために、動物愛護団体(PETA)からは非難されている。

 おそらくこれが未来におけるゲームの姿。これからの未来、VRやメタバースなどが日常に入り込んでくるかも知れない。こういう時、画面の中にコントローラーを呼び出して……というのは面倒だ。VRなんてものを着けていると現実世界は見えないので、コントローラーがどこに置いているのかもわからない状態になる。それにいつまでもアバターにコントローラーを握ったポーズをさせるわけにもいかないだろう。これに対する解決策として、脳でいつでも必要なコントローラーを呼び出して、それから選択する……という方式になっていくだろう。
 VR中の刺激も当然、脳で受けるようになっていく。VR上での体験の共有、さらにすすんでVRセックスというのも可能になっていくだろう。

 と、こういう話を聞いて、ブレインストリーミングコントローラーになっていけば、自分のゲームの腕前が上がるんじゃないか……と思った人もいるんじゃないだろうか。残念ながらそういうわけにはいかない。
 普通のゲームプレイでボタンを押し間違えたり、判断が遅れたりする人、というのは脳から直接指令が送られるようになっても、相変わらず判断ミスや遅れを出したりする。形式が脳から直接であろうが、脳から指へ、というプロセスを間に挟もうが、判断力や判断スピードそのものはほとんど変わらないはずだ。そもそも判断力や判断スピードの速い人は、どっちの形式であってもゲームは上手いだろうから。ブレインストリーミングであればプロeスポーツ選手に勝てる、というわけではない。

 SF映画によく出てくる「電脳化」という話になると、どうしても「脳みそを切り開いて、電極を差し込む」……という話になっていく。でも、そんな必要ないんじゃないか……と私は考えている。
 そのヒントとなるのが経頭蓋磁気刺激(TMS)治療。
 経頭蓋磁気刺激治療とはなんなのか、大雑把にまとめると、脳の特定部位に電波を与えて、抑うつ状態を回復させよう……というもの。脳の仕組みというのはそれなりにわかってきていて、脳のどの部位に刺激を与えるとどのような反応かがでるか、かなりわかっている。抑うつ状態の時の脳がどんな状態で、ハッピーな状態に変えるのはどうすべきなのかもわりとわかっている。
 この経頭蓋磁気刺激治療によって発達障害、睡眠障害、不安障害、パニック障害、摂食障害……その他の精神的問題がほぼ回復するという。
 といっても、「経頭蓋磁気刺激治療には効果はない」という反対意見もあるので、どれだけ効果があるのかは私にもよくわからない。なんにしても体験してみないことには……。

 こちらの商品(↑)を見てほしい。経頭蓋磁気刺激治療の効果を家庭用にしたアイテムがこの商品。気軽にヘッドバンドから脳に刺激を与えて、集中力が高まった状態にセットしてくれる……という商品。
 といっても、本当かどうか……と聞かれるとよくわからない。でも物は試しというやつで、お金ができたらちょっと試してみたい、という気持ちもある。
 経頭蓋磁気刺激治療の装置を家庭用に転用することはできない。技術問題……とかそういう問題ではなく、「規制」の問題。じゃあ上の商品はどうして商品化しているのか、というと「これを装着するとゲームのスコアが良くなりますよ」という商品だから。「この商品で鬱状態が緩和されます」とは説明に書いてない。規制をうまい具合にかわすために、そういう回りくどい方法で販売している。

 でも将来的にはこういう商品も市場に出るようになったら、どういう社会になるだろうか。いつでも誰でも、脳を自在にコントロールできる。仕事や勉強で集中しなければならない! ……というときはこういう機械を使えば良い。つまり「やる気スイッチ」の外部化だ。悲しいとき、鬱状態の時も、スイッチ一つで気分を変えられる。
(逆に俳優をやっている人は、意図的に悲しい気持ちを作ったりなんかもできるかも。演技で泣かなければならない、というときにどうしても涙を出せない……というときとかに)

 人間の脳に刺激を与え、コントロールすることはこういうヘッドバンドとかそういうものでもできるといえばできるんだ。だったら帽子のようなもので脳からの刺激を受けて、それを機械に反映させる……ということもできるんじゃないか。わざわざ脳みそを開けて電極を埋め込む……なんて大変なことはしなくても、未来の人間はわりと気軽にブレインストーリーミングのエンタメで楽しむことはできるんじゃないだろうか。

 私が気になっていることは、未来における人間の能力。こういった優れたマシンがどんどん開発されていった後、私たちはそれに頼り切って、どんどん能力は衰え、バカになっていくのではないか。
 2030年を目標に、すでに6Gに向けた研究開発が始まっているのだが、その通信速度は100Gbps以上(1テラを目標にしているところも)。このデータ量は人間が脳で判断し、処理するデータ量よりも大きくなる。2030年以降の未来になると、人間の側が「あれなんだっけなぁ……」と考えている間に、コンピューターが推論して、ネット上のあらゆる集合知と照合し、「あなたが考えようとしていたことはこれではないですか?」と答えを出してくれる。
 そうなると人間はアレコレ自分で考えたりしなくなるんじゃないかなぁ……。という心配が。なにしろあまりにも便利すぎる自分専用コンシェルジュが常に側にいる、みたいな状態になるわけだから。しかもそいつは、自分より確実に頭が良くて、何か考えるより先に先に答えを出してくれる。もう人間は考えたり悩んだり……という苦悩から解放される代わりに、考えなくなる。

 ほんの少し前の話。携帯電話が出てくる以前、私たちは友達や職場の電話番号をみんな記憶していたはずだ。私たちはそれくらいの記憶力があったはずなのだが……今となっては一つとして記憶できなくなった。便利すぎる道具が一つ出てくると、人間の能力は一つ劣化していく。

 人間の劣化を防ぐために、どうにかして記憶力、認知能力を高く維持させる方法はないだろうか。それこそ『ドラえもん』の暗記パンのように記憶したいものを確実に記憶する、学習すべきことを直接脳に送り込む、さらに忘れないようにいつでも引き出せるようにする……みたいなことはできたりしないのだろうか。
 そこまで可能になったら、欲張って認知能力をより高めるアイテムもできたりしないだろうか。
 人間の問題は、結局のところ認知能力の低さだ。人はどうして相手を思いやれないのか、どうして国家に関わる職業の人は庶民のことを思いやれないのか、どうして人は愚かな判断を下してしまうのか……。みんな認知能力がそんなに高くない、ということに起因している。人間はどんなに知識を身につけたところで、考えられる「領域」にはそもそもの限界点があるのだ。
 こういうのも、何かしらの補助アイテムのようなものを帽子に乗っけて、それに助けられて物事を視野広く、深く考えられるようになったりしないものだろうか。

 でも、それを外してしまったら、いきなりバカになってしまうんだよなぁ……。
 人間が今以上に賢くなる……ということはもう無理なのかも知れない。

【追記 11月21日】
面白い記事を見付けたので紹介。

 障害で全身をほぼ動けない……という人が脳波コントロールによってゲームを楽しめるようになる……という話。
 ブレイン・マシン・インターフェースはまだ発展途上で、使用者の思い通りにコントロールできるものではないようだけど、そう遠くない将来、健常者と障害者が同じフィールドに立ってゲームを楽しめるようになるはず。
 こういう技術には期待したい。


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