何もかも面倒くさすぎる

 無性に眠い夜、できることなら何もせずに眠りたい。瞼が思うように上がらず、鉛でも引きずっているのではないかと錯覚してしまうくらい体は重い。疲れとだるさが絶え間なく押し寄せてきて、一刻も早くベッドに潜りたくなる。

 だけど、そんな意思とは裏腹に、寝るまでにやらなければならないことは山ほど残っている。その中でも、一番の課題はお風呂だ。何かと工程が多い。服を脱がなければ入ることができないし、化粧を落とさなければ肌がボロボロになる。顔だって髪だって体だって洗わなければ不潔だし、湯船でまったりした後にそこから出るのも気力がいる。体と髪をよく拭いて、パジャマを着なければ風邪を引く。お風呂の後は、スキンケアだってしておかなければ不安だし、歯を磨かないと虫歯になる。髪だってよく乾かしてから寝ないと、翌朝の髪のセットが大変になる。

 こんなにしなければならないことがあるのに、一向に自分に課せられたタスクを消化できる気がしない。一歩を踏み出す気力がまるで湧かない。時間は刻々と過ぎていくばかりなのに、スマホから視線を離すことができない。現実逃避だ。

 こんなとき、自分の代わりに終わらせくれる誰かがいればいいと、いつも思う。何もしなくても、寝ている間に全部終わっていてほしい。そう何度も願い続けているのに、それは叶わない。

 寝ている自分を脱衣所に運んでほしい。服を脱がせて、服が傷まないように洗濯ネットに入れてほしい。丁寧に化粧を落として、顔と体と髪を洗ってほしい。湯船に肩まで浸からせて、適度に時間が経ったら湯船からあげてほしい。体と髪を優しく拭いて、服を着せてほしい。化粧水をたっぷり塗って、美容液を浸透させた後、クリームで保湿してほしい。ヘアオイルを髪になじませて、ドライヤーで丁寧に乾かしてほしい。歯垢が残らないように、一本一本丁寧に歯を磨いてほしい。そして、静かにベッドへと運んでほしい。


 こんなことを言っていたら、「それは病気の手前だよ」と言われたことがある。妙に納得した。そういえば、無理をしすぎていた気がする。体も心も悲鳴をあげていたのに、それを見ないようにしていた。気力が湧かないのは、私が疲れすぎているせいなのかもしれない。

 きっと、休むのも大切なことだ。もう少しだけ、自分をいたわってあげたいと思った。そうしたら、お風呂の時間をゆっくりと楽しめるのかな。そうだといいな。

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