「地域政党」と党内民主主義の関係について なぜ「都民ファースト」「大阪維新」は、代表選無しで生き残れるのか?
国民民主党と都民ファーストの合流協議が進展中
参院選に向け、国民民主党と都民ファーストの連携・合流へ向けた協議が進展してきている。
11日の党大会で決議された活動方針には盛り込まれなかったが、党大会後の代表会見で、玉木雄一郎代表は、東京選挙区での統一候補擁立を表明した。また、党大会には、荒木ちはる都民ファーストの会代表が、祝電を送っていた。さらに、翌12日のネット番組では、玉木代表は、14日にも、国民・都ファ間の共通政策についての中間報告を発表することを明らかにした。
両党の連携ないし合流は、選挙目当ての「野合」ではなく、政策的な立ち位置がかなり近いことによるものである。政局の行方ばかりに焦点が集まりがちであるが、既に国民民主党と都民ファーストの会は、数回にわたってコロナ対策などに関する政策勉強会を行っている。政策を重視した連携は、有権者からの理解も得やすくなるだろう。
「都民ファースト」が代表選挙を行っていないことは問題か?
さて、今回の主題は、「地域政党」と党内民主主義の関係性についてである。
都民ファーストの会は、規約上代表選挙の規定はあるものの、実態としては荒木代表が無投票で選出されている。また、党員込のフルスペック代表選挙ではない。
フルスペック代表選挙を行わないのは、他の有名な地域政党も同じである。大阪維新の会は、昨年初めての代表選挙を実施したものの、一般党員は参加できない選挙であり、予定調和的に吉村洋文大阪府知事が当選しただけで、盛り上がりに欠けた。また、減税日本に関しては、規約上代表選挙に関する規定がない(総会で選出するという文言のみ)。事実上河村たかし名古屋市長が代表であることが前提とされているといえる。このように、地域政党は、一般党員込みの代表選挙を行っていないことが、普通となっているのだ。
そして、このように、首長を代表とする地域政党がフルスペック代表選挙を行わないことは、民主主義との関係で特段問題とならない。実際に、大阪維新の会は、党員込みの代表選挙を一度も実施しないまま、結党10年間で「大阪の与党」として一大勢力を築き上げた。都民ファーストの会も、党内民主主義の点で批判されたことがあるものの、結局は2020(令和2)年の都知事選挙、2021(令和3)年の都議会議員選挙で、負けずに生き残っている。
その理由は、地方政治と国政の構造的な違いによるものである。以下で詳しく解説したい。
「地域政党」が代表選挙をやらなくても良い理由は、代表=首長が、4年に1度、全有権者からの審判を受けるからだ
吉村洋文大阪維新の会代表、松井一郎同前代表、小池百合子都民ファーストの会顧問、河村たかし減税日本代表、これら4人に共通することは、4年に1回、その地域の全有権者から、選挙により審判を受けていることである。
ただのフルスペック代表選挙であれば、負けたとしてもせいぜい冷や飯を食う程度で、政治家としての職を失う訳ではない。しかし、首長選挙であれば、4年に1回、1番にならなければ職を失う選挙があるわけである。そこで、直接選挙という有権者の意思が直接反映される形で選ばれたのが、上記の首長である。
したがって、有権者から首長として選ばれた政治家をトップにするから、フルスペック代表選挙を行わなくても、「民意無視」などという批判を受けずに済むのだ。そして、それゆえに、地域政党は、フルスペック代表選挙を行わなくても、政党として存続し続けることが出来るのである。
国政と比較して考える
以上のことは、国政と比較すると、より分かりやすい。
そもそも、国政においてなぜ一般党員込の代表選挙が必要とされ、自民党や立憲民主党がフルスペック総裁(代表)選挙を行わなかった時に批判されたのはどうしてか。
それは、国政における内閣制度が、「議院内閣制」であるからだ。つまり、日本国民は、国政の最高責任者である総理大臣を直接選ぶことができない。総理大臣の選出においても、日本は徹底した間接民主主義なのである。そうすると、国民が自己の意思を総理大臣の選出に反映させるには、①国政政党の代表選挙において意中の候補を当選させること、②国政選挙において意中の者が代表を務める政党を勝たせること、の2つしかない。その中で、人を選べる機会は、①しかない。だから、国政政党において、代表選挙に一般党員を参加させることが必要とされているのだ。そうでなければ、国民からの人気が高いにもかかわらず、それが総理大臣候補(各政党の代表)選出において、一切そのことが考慮されないこととなる。
国民(住民)がトップを直接選べるか選べないか、このことが国政と地方政党の重要な分岐点であり、一般党員込の代表選挙が必要とされるかどうかの分岐点でもある。なぜ一般党員込の代表選挙が必要とされるかという、制度の目的、趣旨まで立ち返った、深い分析が必要な問題であるのだ。
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