スピッツ「YM71D」 演じてた君に恋して 素の君に惚れ直して
「YM71D」って、なんと読むか分かりますか?
「ワイエムナナイチディー」でもいいらしいです。
草野さんは明確には提示していないようですが、歌詞に「やめないで」と語呂合わせのような解答があるので、「Y(や)M(め)7(な)1(い)D(で)」と読むことにします。
アルバム「見っけ」の8曲目ですね。
さわやかさ全開の曲ですが、歌詞はそれなりに「陰」がありますね。
少しずつ見ていきます。
「演じてた君に恋して 素の君に惚れ直して」
って、とてもいい表現ですね。どういった場面を想定しているのか分かりませんが、どんな場面でも人はたいてい本当の自分そのものを出すことは難しいです。大小はあるでしょうか、演じている人がほとんでしょう。
どんなときも変わらず、ルフィのように生きられる人なんていないのです。
「普段よりよく見せよう」か、はたまた「落ち度がないように演技する」のかは分かりませんが、それが演じきっている「君」にまず恋をして、その後、飾らない本当の「君」を知って、惚れ直したって、なんかいい口説き文句ですね。いつか使ってみようかしら?
2番の出だしが気になります。
「反則の出会いなんだし 目立たぬようにしてたけど
きまじめで少しサディスティックな 社会の手ふりほどいた」
そうか。草野さん、こういうさわやかな曲調にこういう歌詞をよく放り込んできますよね。そこが大好きです。
「反則の出会い」・・・?不倫?浮気?許されない恋?
「きまじめで少しサディスティックな社会の手」は不倫を許さない社会規範とかルールとかそんなものを指しているのでしょう。
それを「ふりほどいた」と。
「平和だと困る街 駆け抜け」
ってどういう意味だろう。
平和な世の中こそ、不倫なんかが目立って、報道されちゃうみたいなことかしら?災害やら事件やらがバンバン起きたら、不倫なんて関係ないもんね。
「『王様は裸です!』と叫びたい夜」
社会規範のばかばかしさをいつも叫びたいけど、私は我慢している・・・。
サビ。
「やめないで 僕らまだ 欠片すら 手に入れちゃいないさ
初めては怖いけど 指と指 熱を混ぜ合わせよう」
「やめないで 長すぎた 下りから ジャンプ台にさしかかり
マグレにも 光あれ どこまでも 跳べるはずさ2人」
どっちかが、引いたら終わりなのよ。
日常に戻りたくなったら、終わりなのよねえ。
スピッツのさわやかさの中に紛れ込ませてくるこういうテーマ。
でもさあ、不倫とか浮気とかって、どちらかと言えば、「純粋な気持ちの吐露」とも言えなくない?
草野さんはいつもこっそり、そういう部分に光を当てて、美しい歌を完成させていく。
2022年7月29日 トラジロウ