私信　独善　－地底で小躍り－

あなたは
古い屋敷の庭園の
玄関までのアプローチから
世間を見渡す主の子孫で
あなたの町を導いた
DNAの末裔で
由緒正しい血統が
育み続けた言動は
どんな人にもやさしく届き
誰の心も遍（あまね）く癒す
 
そんな「幻想の品位」を抱いて
見られていたい人にだけ
見られていたい「幻想の品位」を
見せつけたくて
あなたは下僕を搾取して
下僕を殴った言葉の拳で
あなた自身が砕けようとも
自覚の無いまましなやかに
ノースリーブの上着を択（えら）び
透明なショールをなびかせて
突然
隣家の戸口に立って
独善まみれの
聞き覚えのない不気味な口調で
躊躇もせずに語り始め
搾取の品を施し始める

あなたは
一段
また一段
有頂天へ上る気分で
地面の裂け目の底を目指して
小躍りしながら堕ちてゆく