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私信 ねじれた自己愛

初夏
あなたは喫茶店で
相変わらず
天皇論やら国家論やら憲法論やら
よどみなく語り
必ず「どう思うのか」と、問うてくる
 
あなたには
既にしかるべき答えがあって
私の答えなど どうでもよくて
どんな言葉も
あなたのレクリエーションに過ぎなくて
 
あなたは
相変わらず
水を得た魚のように
私を激しく「分析」し
指導しなければならい私に帰結し
指摘を重ね
同意を求める

あなたは
私の聞こえないふりをすぐに見破り
軽やかに次のステージへと駆け昇り
あなただけの高みから
私の生存のあり方を否定する

あなたは
このステージでは同意を求めることはせず
「そうでしょ」「そうでしょ」と
表情を変えず
頷きがちに
自身に応答し続ける

あなたは
自身の論理のどこに躓いたのか
急に私に詰め寄ったから
私は
「被爆者が【核を持って敵国に落とせ】という声を聞いたことがあるのか」
と問うた
あなたはしばし口を噤み
話題を変えた

あなたは
『はるかなる山河に』
『きけわだつみのこえ』
「峠三吉」も知らなかった

あなたは
ねじれた自己愛で
あなたに称(かな)う「あなたの善」を
あなたの世界で粉飾し
「日本の美徳」の文字のみ纏い
「非核」の2文字を武器にして
あなたの「欲」を顕示し続ける

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