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005 メンタルスキル

メンヘラ※という他人を傷つけるためだけに存在するスラング(俗語)が一般化して久しいですが、今回はまさに自身のメンタルを可能な限り健康に保つ整心力のスキル「メンタルスキル」を取り上げます。
※医学的な見地における「精神障害を患っている人」の意 ( weblioより )

考えると思うの違い

前々回前回で「論理思考」と「水平思考」というふたつの思考を取り上げ、その過程で「考える」の定義をご紹介しました。ところで、仮に思考を「思+考」に分けるなら「考えるとは何か?」に続けて「思うとは何か?」についての説明が必要となるでしょう。ですので、まずはそこから片付けておきましょう。

考える:知的に分析すること(理性)
思う:感情すなわち感覚的・情的な心の働き(情緒)

上記のように、思考の半分は “感情論” でできています。言い換えれば、今回ご紹介するメンタルスキルが無ければ、思考の制御すら難しくなるということです。人は後先を “考え” てからキレるのではなく、むしろそれを失ってキレることからも分かるように、考えを下支えしているのは感情すなわち心=メンタルです(「002 コミュニケーションスキル」に掲載の図をご参考ください)。自身の感情をコントロールする「メンタルスキル」を高めることによって初めて、広く深い思考が可能となるといっても過言ではありません。

心は心臓にある訳ではなく

また、いくら「心の蔵(くら)」と書くからといって、心や感情が「心臓の中に入っている」と考える人は少ないでしょう(ご存知の通り、心臓は血液を全身に送り込むポンプです)。

では、心や感情が体のどこに仕舞われているのかを一言でというと、ずばり “脳” です。ただし脳は複数のパーツで出来ており、その複数箇所が連動したり、しなかったりして感情は生まれます。またこれまで、感情をコントロールしているのは主に大脳辺縁系と考えられてきましたが、現在では「視床下部で作られるホルモンが生み出す電気信号こそが感情の正体」というのが主流の考え方のようです。

ただし、もちろん視床下部だけで感情が決まるのではありません。私たち人間には、少なくとも「喜怒哀楽 × 知情意」の複数組み合わせ以上の感情があるように、その要因も千差万別です。たしかに「腹側被蓋野(ふくそくひがいや)に電気刺激を与えると目の前の人が好きになる」という様な大雑把な理解の仕方も可能ですが、日頃私たちを悩ませる心の機微は、もっともっと繊細なイメージではないでしょうか?


しなやかな心

こうやって考えると「心を病む」という日本語は正確性を欠いた表現だと気付くでしょう(心は人間を構成するパーツではなく、人間が生み出す “現象” にすぎないからです)。またそれと同時に、メンタルスキルを「自らの脳を上手く操り、自らの考えを邪魔せず、感情を最適にコントロールするスキル」と定義付けられるようになるでしょう。

さらにそう定義すると今度は「メンタルが強いとは何も頑なな態度(頑固)を指すものではない」と言えるようになります。── 頑なさが態度として最適な場面は少なく、こと仕事においてはそのような “ハードさ” より “タフさ” を求められることの方が多いからです(どんな状況であっても泰然自若※を保ち、目的にあった態度や行動を選択することが、 “ハード” とは異なる “タフ” のあり方です)。
※泰然自若(たいぜんじじゃく):どっしりと構えて何事にも動じないさま

そのためにはまず体力をつけ、それによって集中力注意力を体得することが必要です※。そうすれば目的に集中して本質に意識を向けられる(余計なことから意識を逸らせられる)ようになり、メンタルスキルを築く土台が生まれます。まさに「運動が脳に影響を与え、脳が心をつくる」と言われる所以です。
※詳細は次回「006 フィジカルスキル」でご紹介します

そしてその上にいくつもの細かなメンタルスキルを積み重ねれば、誰でも泰然自若になれる筈です。そうして泰然自若を実現すれば「何があっても折れず、流されず、逆境に立ち向かうことも受け流すこともできる “しなやかな心” の持ち主」と周囲から認識されるようになります。

心は所詮 “電気信号の産物” にすぎませんが、万人がその存在を認めれば、その限りにおいて “真” です。ぜひ、折れたり流されたりしない “しなやかな心” を築き、心身の健康を実現していただきたいと思います。


[参考]これまで&これからの記事

法人/個人を問わず、論理思考やコミュニケーションスキル、メンタルスキルなど各種ビジネススキルを、基礎の基礎から分かりやすくお伝えいたします。   (株)トンパニ https://tongpanyi.co.jp/