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やさしく、ふかく、おもしろい組織開発新論 #5 新しき地図“あすbe”が描く未来

5回連続でお伝えしてきた『やさしく、ふかく、おもしろい組織開発新論』もいよいよ最終回となりました。

「人と人」、「人と仕事」、「人と組織」のつながりを再生するには、複雑な状態をありのままに観ることが不可欠で、そのための道具として【らしんばん】と【四季のリズム】というフレームを取り上げてきました。

最後に、このふたつを掛け合わせて、企業現場でリアルに実践してみるための「雛形」をお示ししたいと思います。


■組織開発を取り巻く環境変化

2006年、僕は日本発組織開発コンサルティングの老舗とも言えるスコラ・コンサルトで組織開発支援の仕事をスタートしました。

世の中では、まだほとんど組織開発の意味や価値が認識されていない中、企業現場に丸腰で飛び込んでいくような状況でした。

「日々の仕事に直結した話は一旦置いて、みなさんの人生や仕事観など、日頃は話すことのないテーマで、職場の仲間たちと気軽に真面目に話してみることから始めましょう」とか言いながらお邪魔するわけですが

「お前ら、何しに来たんだ」という感じで鎧兜に身を包み、身構えていらっしゃる方々を相手に、なぜそのようなことが必要かから始まるわけです。もちろん、スムーズにスタートできることは稀でした(笑)。

ただ、そのような考え方や動きが組織の変革に不可欠だと認識し、推進しようという中心人物の方々の想いや行動力は半端なく、

大手企業の全国に点在する事業所をまるごと対象にしたり、われわれも社員のように常駐に近い形式でかかわったり、週末の宿泊を伴う合宿もよくありましたし、始めたら5年以上取り組むようなプロジェクトが当たり前でした。


一方で、最近は、組織開発的な取り組みの重要性は広く認知されてきましたが、同時に以下のようなことが強く求められる傾向にもあると感じています。

  • 働き方改革の流れもあり、時間は極力かけない

  • 取り組みの期間も短めに、予算も抑えて

  • でも、明確なアウトプットは出してほしい

2017年末に独立し、ひとり起業家の組織開発コンサルタントとなった僕は、このような要請に、大手ではできない価値を提供することを目標に置きました。

ちょっとキャッチーな言い方をすれば・・・「研修並みの時間や予算で、コンサルレベルの成果を!」実現してやろうと思ったわけです。

あっ、このコラムは売り込みを目的にしていませんので、ひとつの方法論として「こんなやり方があるのか」と知っていただけたらという想いです。

■"あすbe"とは

試行錯誤の末、ようやくカタチになったものが、"あすbe"という対話を軸にしたアクションラーニング型の組織開発オンラインプログラムです。

その全体像を図にしたものがこちらになります。

◎構成

縦方向に並ぶものが【らしんばん】の4つの象限であるパーパス→戦略→アクション→カルチャーです。

横方向に並ぶものが【四季のリズム】の4つの流れである支度→発散→創発→収束です。

象限ごとに、横方向の流れでプログラムを進めていくことになります。

つまり、【らしんばん】✖️【四季のリズム】によって、プログラムの全体像は構成されています。

【らしんばん】✖️【四季のリズム】

◎対象

基本的に、ある組織/チームをマネジメントしているほぼ同格のリーダー/マネジャー層が対象です(フラットな議論がしやすいように「同格」としていますが、必須条件ではありません)。

職位としては、役員〜部門長〜部長〜課長〜チームリーダーまでさまざまな階層が考えられます

つまり、「人と人」「人と仕事」「人と組織」のつながりを再生する領域は、起点として、全社でも事業本部でも部でもグループでも構わないということです。

役員による経営チームから始めるのが理想的ではあるのですが、ミドル層から始めてミドルアップ/ダウンすることも十分可能です。形式よりもまずは意思のあるところからが大事ですね。

参加人数は3〜10人程度が目安です。対話に適したグループサイズを基本にしています(6人以上の場合は、テーマに応じて適宜オンライン会議のブレークアウトルームの機能を多用します)。

◎期間

各象限の最後のプロセス(=収束フェーズ)で、プログラムに参加しているマネジャー/リーダーたちが、それぞれマネジメントする組織やチームに仮説を持ち帰って、対話する場を設けているので、

象限ごとに2週間〜1ヶ月程度のインターバルを置くことをお勧めしています。したがって、基本形として最短8週間〜4ヶ月程度の期間となります。

◎時間

各象限ごとに、<支度>は事前学習動画の視聴が30分<発散>事前学習課題の個人ワークが60分<創発>オンライン上で集まるワークショップが2〜4時間<収束>それぞれの組織で集まって対話する時間が60〜90分

なので、約5〜7時間程度×4回が目安になります(もっと丁寧にじっくり進めたい場合、時間設定はこのかぎりではありません。ただ、時間をかけたからといって、よりクオリティの高いプロセスやアウトプットになるわけでもありません)。

◎「非同期」コミュニケーションの活用

上記でご紹介したプロセスは、取扱うテーマの割にかなり時間が短いのではないかという印象を持った方が少なくないでしょう。

実は、そこで重要な機能を果たしているのが、ビジネスチャット(Slack、Chatwork、Teamsなど)による「非同期」コミュニケーションです。

非同期コミュニケーションとは?

オンラインワークショップは、異なる空間ながらも、ZOOMなどのビデオ会議ツールを使って、リアルタイムで同じ時間に集まりますが、これを「同期」コミュニケーションと言います。

一方、複数のメンバーが異なる時間&異なる空間で協働することが、「非同期」コミュニケーションです。

"あすbe"の一連のプログラムを有機的につなぐ日々のテキスト上でのやりとりであり、「同期」と同じくらい大事な役割を担います。ビジネスチャットですから、ダイレクトなテーマだけでなく、周辺領域などの「雑談」を効果的に使うことで、チームの関係性や思考も向上します。

話は少しそれますが、日本の組織は、対面/オンライン問わず「同期」の会議が多すぎると感じています。社会的課題にもなっている日本人の仕事の生産性を高めるのに、この「非同期」の活用は不可欠と思います。

■"あすbe"の進め方

各象限ごとの進め方に移りましょう。象限ごとに「◯◯クエスト」と表現しています。新しい世界の探究的な意味合いを込めているからです。

クエストごとに、ワークの軸となる「キャンバス」をひとつずつ用意しています。ここでは概要だけお示しして、具体的なワークの進め方は、別途機会を設けるつもりです。

1. パーパスクエスト

「自分たちって結局、何者だっけ?」「そもそも何をしたいのだっけ?」という問いへの答えが、パーパスということになりますが、

事業を通じて、誰の悩み事や願い事がどのように解決されるのかが、ユニークな文脈で解像度高く描かれることが必要で、【未来創発キャンバス】というフレームを雛形として使います。

ちょっとした実務的なこだわりがありまして、順番を①から⑧まで見ていただくとおわかりのとおり「パーパス」を一番最後に置いています。

本来は最初にくるべきものなんですが、これを最初にやると、とてもふわっとしたどこにでもあるようなパーパスになりがちなんです。

なので、①〜⑦を設定した上で、こういう絵姿を目指して私たちって何者だっけ?を定めると、ぐっと臨場感が増してくるのです。


2. 戦略クエスト

日本企業においては、「戦略」と呼ばれているもの(典型的には中期経営戦略など)が、本質的な意味での戦略になっていないことが少なくありません。

よい戦略は、十分な根拠に立脚したしっかりした基本構造とロジックを持っており、一貫した行動に直結するもの(by 戦略論の大家リチャード・P・ルメルト)なので、

【未来創発キャンバス】で描いた世界を実現するためのシンプルかつ筋のよい戦略をストーリーとして【戦略生成キャンバス】で定めます

一橋大学・楠木建先生の『ストーリーとしての競争戦略』を土台にさせていただいております。 

3.アクションクエスト

研ぎ澄まされた戦略を立てた場合、それが日常業務との齟齬を生む可能性があります。このような状況では、日常の慣性によって新しい戦略の実行が遅れてしまうことが避けられません。

そこで、戦略を実行するための施策を包括的に作成するのではなく、短期間で質的なインパクトを持つアクションに絞り込み、まず実践することにしまています。これにより、日常業務との両立を可能にする工夫を行っています。

この取り組みでは、【行動実験キャンバス】を活用します。このキャンバスは、従来の枠組みからあえて逸脱した高いレベルの目標を設定し、結果に臆することなくチャレンジできるように、人事評価に結び付けないこともあります。

ここでもちょっとした工夫がありまして、認知行動療法における行動と感情の相互作用を活かせる形態にしており、ビジネスの一般的な目標計画シートとはかなり仕立てを違えています。

4. カルチャークエスト

パーパスクエストからアクションクエストまでの一連の取り組みにより、【らしんばん】を迅速かつ効果的に回すことができます。

日常の活動ではなかなか経験する機会のない貴重な体験をしっかりとふりかえり、言語化し、それを持続的に発展させるためにカルチャーとして定着させる意義は非常に大きいと言えます。

ふりかえりのフレームとしては、組織行動学者のD.コルブが提唱する「経験学習モデル」を活用します。

各クエストのプログラムに取り組んでいる際には、主に内容に集中しますが、この「ふりかえり」の段階では、内容だけでなく、その体験をしたときの感想や気づきを把握し、次の1周に向けた準備を整えていきます。

■"あすbe"がお届けする価値

このプログラムを実践することによって、以下の5つの価値を実現することができます。

  1. リーダー層がパーパス→戦略→アクション→カルチャーのサイクルを主体的に取り入れ、組織内で本質的なテーマを具体化することができます。

  2. リーダー層同士の相互作用を基盤にしながら、組織メンバーを巻き込んでのマネジメントを展開することができます。

  3. 小規模ながらもインパクトのある事業の変革を通じて、リーダー層が成長する経験を得ることができます。

  4. オンラインの特性を生かして、時間や空間を超えた効果的な「飛び石ラーニング」を実現することができます。

  5. 「重要だが緊急ではない領域=明日への備え」という『7つの習慣』にもある理念に基づいて行動することができます。


ここで"あすbe"のネーミング由来をお伝えします。

江戸時代、人々は明日も元気に暮らすために、知恵比べや言葉遊びのような「明日備(あすび)」に励み、活力を養っていました。その活気ある姿勢や行動が次第に「遊び」へと変わっていったとされています。

"あすbe"は、「あす(未来)」「be(在り方)」を組み合わせ、組織や事業における理想的な未来の在り方を、実践を通じ探究するプログラムとして生まれました。

私たちにとって、明日への備え未来の在り方を考えることは、ますます重要な課題です。"あすbe"は、そんな未来への探究心を鼓舞し、主体的な行動を起こすことを促します

ここに共感いただけるみなさんと一緒に道を切りひらいていきたいと願っています。

いかがでしたか?

おもしろいな、なんか気になるなと感じた方、「スキ」や「ブックマーク」いただけるととても嬉しいです。また、お読みになったご感想などコメントいただけたら泣いて喜びます。

今後は、【らしんばん】を左上から思い切りスタートさせるための内発的動機をチームで高める方法、思いがけない創発を生むための第三の思考「アブダクション」、今回挙げた各種キャンバスを描くための具体的な方法、"あすbe"実践の事例 などについてさらに詳しく発信していこうと思っています。

逆に、みなさんから、こんなことを知りたい、これについてどう考えるのか的なご関心やご質問があれば、お気軽にコメントいただけたらありがたいです!!

ここまでお読みいただき、心から感謝申し上げます。ほんとうにありがとうございました。

※第1〜4回までの記事

公開済み:第1回  組織開発の謎を解き明かせ!

公開済み:第2回 日本企業の問題構造を【らしんばん】が明かす

公開済み:第3回 日本企業の問題構造を【らしんばん】が明かす

公開済み:第4回【四季のリズム】がもたらす成長と発展


最後に、他で僕が発信しているもろもろのメディア情報も末尾にお載せしますので、つながっていただけるとうれしいです!!

※発信中のメディア情報(とんがり研)

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