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やさしく、ふかく、おもしろい組織開発新論 #1 組織開発の謎を解き明かせ!


■はじめに


企業組織にすっかり浸透した感のある「組織開発」ですが、その本質や定義は何?って聞かれて、あなたはご自身の言葉で説明できますか?


はじめまして。とんがりチーム®︎研究所のAKIと申します。本名は野口正明ですが、ビジネスネームで「AKI」と名乗っております。

どうぞよろしくお願いします。2006年から組織開発のコンサルタントをしています。

そのときからずっとお世話になっている南山大学の中村和彦先生は、

最も気に入っている組織開発の定義として、著書の中で、ウォリックのものを挙げていらっしゃいます。

「組織の健全さ、効果性、自己革新力を高めるために、組織を理解し、発展させ、変革していく、計画的で協働的な過程」

『入門 組織開発』中村和彦より

これ、まったくそのとおりだと思いますし、さまざまな企業現場での実例も思い浮かびます。

でも、そんなにご経験のない実務担当者の方にとっては、わかったようでわからないという感覚はないでしょうか?

このコラムでは、アカデミックな世界ではなかなかカバーしにくい部分を独自の実践論の切り口から解き明かしていきたいと思います。

■自己紹介

改めて、僕の自己紹介をさせてください。

1988年に新卒で日清製粉に入社し、加工食品の新製品開発と工場での生産・購買管理を経て、1995年に人事部へ異動。

その後、グローバルに活躍できるHRを目指し、2000年からはファイザーなどアメリカ企業2社のHRマネジャーへ。

新人事制度の企画・設計・導入も含め、採用、人財開発、評価、給与、労務管理、組織変革などHRのほぼ全領域を経験しました。

その中でも、実は職務要件にはなかったのですが、組織課題に直面している部門や部署に入り込んで、

チェンジエージェント的な動きをしながら解決に貢献することに一番喜びを感じていました。

その志向が高じて2006年、日本における組織開発コンサルティングの老舗とも言えるスコラ・コンサルトで、対話型組織開発支援の仕事をスタートして17年になります。

2017年末に独立して、いまは「ひとり起業家」として動いています。

■コンセプト

大胆な仮説となぜ必要か?

このコラムでは、組織開発を実践論的な切り口から、ちょっと大胆に「3つのつながりの再生」として定義し直してみることにします。

組織開発を実務として担当している方にとって、前述のウォリックの定義があまりピンとこないとすれば、その本質をわかりやすい言葉で共有することが必要だと考えています。

また、企業現場に日々接してお話を伺っていると、組織開発まわりの仕事が個々の課題に分解されて捉えられ、その結果、対症療法的アプローチになってしまっていると感じています。

どんな人におすすめか

  • 企業人事や人財開発のマネジャー、担当者の方々

  • 経営者や企業現場のリーダーの方々

  • 組織・人財開発の同業の方々

同業の方々も入れているのは、僕のは仮説と受け取っていただき、そこから意見交換しながら組織開発支援業界のクオリティを高めていきたいという想いがあるからです。

メリットは

いろいろなお役に立てると考えていますが、いま一番ホットなテーマで言えば「人的資本経営」の本格的な実現にかなり効くと思います。

流行りとしての人的資本経営まわりでは、人的資本情報の開示義務に絡めて、人材の多様性、従業員の教育・訓練、雇用形態などの指標に焦点が当たっているようです。どれも重要な要素ですが、正直、これだけでは表面的なレベルに止まってしまうでしょう。

人的資本経営の肝とされる、人材のスタティック(静的)な管理でなく、人財をダイナミックに生かすためには、僕自身は、組織開発への本質的な踏み込みが不可欠だと考えています。

■こんなお悩みありませんか

  1. そもそも組織開発が何物であるかよくわからない。いまさら他の人に聞けない。

  2. 自分自身は組織開発の重要性がわかっているつもりだが、それがどのように結果につながるのかを、周囲や上に説明できない。

  3. 組織開発が大事だと認識し、さまざまに手を打ってきたが、実際のところあまり効果が感じられない。

組織開発について「知らない」「伝えられない」「効果の実感がない」のどれにも噛みごたえあるヒントをお伝えします。

■こうなっていたら要注意!

さらに、あなたがいまかかわっている組織において、以下に挙げるような組織開発の取り組み状況になっているとすれば、危険信号です。

まずは、立ち止まって、なぜそのようになっているのかをしっかりとみた方がいいかもしれません。

  • 組織開発を「人と人の関係」に限定して対応してしまっている。→「人と人の関係」はあくまで組織開発の一部にすぎません。目の前で展開されているビジネス、そのお客様のことなどを切り離しても意味がないのです。僕はこの状況を”人と組織に閉じる”と表現していますが、結構、企業現場で見られる現象です。

  • 組織の課題を、人財開発と同様に「研修」で解決しようとしてしまっている。→人財開発のことはあとから改めて触れますが、研修という場だけで集中的に課題解決のノウハウを学んでも現場の問題には刺さらないことも少なくありません。

  • 上記とも重なりますが、組織の課題を、一つひとつ切り分けて「個々に対応」しようとしてしまっている。→組織の課題は、ますます複雑化してきており、一つひとつに個別対処することは、もぐら叩き的な状態に陥ってしまうリスクがあります。

■真の原因は・・・

このような危険信号の数々について、実は根っこのところに大きな原因がひとつ横たわっているのです。それを解説していきますね。

ハイフェッツのリーダーシップ論より

ハーバード大学リーダーシップ論の権威であるR.ハイフェッツによれば、世の中には2つのタイプの課題が存在するといいます。

ひとつは、既存の経験や知識によって技術的に解決することが可能な問題。答えのある問題にどれだけ効率的に答えられるかという世界で「技術的問題」とされます。

もうひとつが、これまでの思考・行動パターンでは解決できないほど複雑な問題で「適用を要する課題」と言います。

こちらは答えがない世界なので、自分自身の価値観・信条・前提にまで踏み込んで、実は自分が問題のお先棒を担いでいたということに気づいたりすることも少なくありません。

氷山をメタファーにしてみると・・・水面より上の目に見える部分が「技術的問題」で、水面下に広がっている目に見えないより大きな部分が「適応を要する課題」と言えます。

組織開発のテーマは、ほぼ「適応を要する課題」

上記の組織課題への対応として危険信号として挙げたものは、すべて「技術的問題」として対処ししようとするからうまくいかなかったり、事態を悪化させたりするのです。

たとえば、エンゲージメントサーベイなどを実施すると、組織の諸問題が浮き彫りになってきます。

「経営理念や事業戦略の浸透が不十分」「これという新規事業が出てこない」「働き方改革推進が遅れている」「組織の一体感が欠如している」「社員の離職率が増えている」などなど・・・


これらを一つひとつ、水面下から取り出しては、対策を打っていくわけですね。


でも、それをやっても、また同種の問題が次々とわきあがってきます。なぜなら、対症療法を行っているだけなので。


組織開発まわりの課題は、概ね、技術的問題としては対処しにくい、より複雑な「適応を要する課題」に入ることが多いのではないでしょうか。

たとえば、上記の問題をこんな風に捉えてみることはできないでしょうか?

「経営理念や事業戦略の浸透が不十分」

→そうすると、組織として何を実現していくのか軸が明確でないので、新規事業を考える上でも、コアが見えにくく「これという新規事業が出てこない」

→それは、仕事の効率化を考えるときも同様です。働き方を変えるには、何を守り/何を捨てるかの判断基準がないと手がつけられません。結果として「働き方改革推進が遅れている」

→そのような方向性が見えない中では、社員はバラバラに動かざるをえず「組織の一体感が欠如している」

→そして、未来に可能性を見出すことのできない若手を中心に「社員の離職率が増えている」ような連関で捉えてみるわけです。

■解決の方向性

となると、組織まわりの複雑な課題をどうみればいいのでしょう?

ずいぶん引っ張ってしまいましたが、冒頭でご紹介したように、実践論的な切り口から、ちょっと大胆に組織開発を「3つのつながりの再生」として定義し直してみたらどうだろうというのが僕のご提案です。

実は、このように考えたのには背景があります。友人の組織開発コンサルタントでジェイフィール社長の高橋克徳さんの記したおもしろいコラムを読んだのです。

組織開発の定義ということではなく、「つながる組織づくり」を進める重要なステップとして挙げられていたものが「3つのつながりの再生」でした。高橋さんの論を僕なりに図にしてみたものがこれです。

で、ちょっと飛躍をお許しいただき、組織開発の対象は、この「人と人のつながり」、「人と仕事のつながり」、「人と組織のつながり」の3つだと大胆にとらえたらどうかと思ったのです。

この3つのつながりは、すべて人と◯◯の「あいだ」にあるので、目にみえないんですよね。

「わかったようでわからない」現象は、このあたりから生まれているのではないでしょうか。

そして、「人と人」、「人と仕事」、「人と組織」のつながりを再生することが、組織開発であると置いてみると、実践論的にはかなりしっくりくるように思えませんか?

例えば、組織開発と言うと、人と人の関係性にばかりフォーカスがあたり、コミュニケーション改善活動となって、事業活動とは別物的に扱われている事例などを多々目にしていると

それは組織開発の一面であって、組織・事業の目的や戦略あるいは、それらを実現するためのしくみなどが伴ってはじめて意味を成すという問題意識を、僕自身は持ってきました。

「人と人」に限定せず、「人と仕事」や「人と組織」にまで広げて、本来のありたい姿に向けてつながりを再生していけたら、組織開発の提供価値はもっと高まるはずです。

■組織開発 VS 人財開発

組織開発の特性をより理解するためのまとめとして、人財開発との対比でみておきましょう。

人財開発は、社員個人のスキル、能力、知識を向上させることというシンプルな定義ができ、そんなに解釈も分かれないのでは。

組織開発は「人と人」、「人と仕事」、「人と組織」のつながりを再生することであり、人と◯◯の間が対象となるのに対して、人財開発は、社員個人のスキル、能力、知識を向上させること。

どうでしょうか?組織開発の特性がクリアになってきたなら、このコラムの目的は果たせたことになります。

人財開発と組織開発のちがい

■まとめ & 「次」へ

最後に、簡単にまとめます。

このコラムでは、「組織開発」の本質や定義について考察し、実践論の視点から解明してきました。組織開発は企業の健全さや効果性を高めるための計画的で協働的な過程という、ウォリックの定義がよく使われます。

しかし、これは実務担当者には理解がちょっと難しいかもしれません。そのため、組織開発を「3つのつながりの再生」と定義し直し、複雑に絡み合う企業現場での事象をみていくことを提案しました。

組織開発の重要性や効果を共有し、実践の質を高めるために、経営者や人事・人財開発担当者にとってお役立ちできる情報になればうれしいかぎりです。

次回は「人と人」、「人と仕事」、「人と組織」のつながりを”対象”とする組織開発について、どのような”視点”でアプローチすればいいのかを【らしんばん】というフレームをご提示しながらお伝えしたいと思います。


いかがでしたか?


『やさしく、ふかく、おもしろい組織開発新論』は、5回シリーズでお伝えしています。

おもしろいな、なんか気になるなと感じた方、「スキ」や「ブックマーク」いただけるととても嬉しいです。また、お読みになったご感想など、メンション付きでコメントいただき、そこから意見交換していけたらと思います。

※他の回のコラム(連続5回シリーズ)
 

第2回 複雑な世界を観るための【らしんばん】

第3回 日本企業の問題構造を【らしんばん】が明かす

第4回【四季のリズム】がもたらす成長と発展

第5回 新しき地図“あすbe”が描く未来

最後に、他で僕が発信しているもろもろのメディア情報もお載せしますので、つながっていただけるとうれしいです!!それでは、また次回お会いしましょう。


※発信中のメディア情報(とんがり研)

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