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やさしく、ふかく、おもしろい組織開発新論 #3 日本企業の問題構造を【らしんばん】が明かす



■はじめに

2022年後半に、ある大手研修会社の依頼を受け、彼らのクライアント企業約70社の人事マネジャーの方々へ、組織開発実践論の講演と簡単なワークショップをする機会がありました。

そこで【らしんばん】のワークをご紹介をしたら、とてもいい反応がありました。さらに自組織の状況について深掘りしたい場合は、個別に【らしんばん】インタビューをさせていただきますよと投げかけたら・・・

十数社のご希望があり、30分〜1時間程度の時間で、インタビュー形式での面談をさせていただきました。

業界・業種、規模、歴史などさまざまな属性でしたが、【らしんばん】を下敷きにすると、どうも共通する3つほどのお悩みのパターンが見えてきました(ざっくばらんな形式で実施したものなので、あくまでも傾向としてご覧くださいね)。

■3つのお悩みパターン


1. 組織のパーパスや戦略が、実質的に空洞化しているので、現場に降りてくる上からの方向性もブレブレで、その都度右往左往せざるを得ない。


2. 時代環境の変化に合わせ、目指す世界や事業構造の転換を、経営が主導して描いてはいるが、現場の認識は従来のままであるため、変革が進まない。


3. 組織として時代環境の大きな変化に適応すべく、考えうる施策をさまざまに打っているが、全体として意味があるのか不安である。


それで僕は 1を「パーパス、戦略不在型」(Aパターン)2を「経営/現場乖離型」(Bパターン)3を「施策不整合型」(Cパターン)とそれぞれ名づけました。

■問題が進行すると・・・

上記の3つのお悩みパターンで、それぞれに状況が悪化するとこんな風になってくるようです。

1.「パーパス、戦略不在型」(Aパターン)

現場にとって安心できるのは、自分たちのお客様の目の前のニーズに忠実に答えていくこと。

経営層からの思いつきの施策に下手に手を出すと、現場が混乱することになりかねないので、聞いたふりをしてひたすら受け流し、過ぎ去るのを待つ。

業界や社会の変化が激しい中でこのような状態が続けば、ニーズの本質的な変化に気づかないまま、自組織との乖離が大きくなっていくばかりです。

このような構図が見えてきている優秀な若手や中堅社員は、中長期的な組織の未来に夢や希望が持てなくなり、上位層の無策に愛想を尽かし、離職するリスクも高まることになります。


2.「経営/現場乖離型」(Bパターン)

経営層が決断した意図や背景が伝わっていないので、現場の実態を知らない経営が間違った方向に進んでいると受け取られがちです。

たとえば、事業構造を思い切って再編すべく選択と集中を実行しても、選択されない部門からは、大事なお客様を切り捨ててしまうのかといった反発が起きたりします。

あるいは、組織としてグローバル市場で選ばれるように成果主義型のしくみに転換したが、そこからこぼれ落ちたミドルやシニア層の不安や不満が募るようなことも。

これではせっかく大胆に舵を切っても、【らしんばん】の上部(パーパス、戦略)をもとに生み出されるはずのエネルギーが、堰き止められ、多大なロスが生じてしまいます。

3.「施策不整合型」(Cパターン)

業績の大きな落ち込みもなく現状を維持できており、さらに組織をよくするための各種施策にかける予算や時間もそれなりに確保できているところに起きています。

いろいろと手を打ってきているにもかかわらず、たとえば定期的に調査しているエンゲージメントサーベイの結果も変わりばえせず、どうすればいいのかわからなくなっていたりします。

こういうところは、【らしんばん】でいえば、各象限における施策を講じているので、一見、全体が循環しているように見えます。が、実は、象限ごとの整合性やつながりがないので、本来的な循環とは程遠い状況であったりします。

こうして労多くして益なしの状態を続けると、社内には疲弊感が徐々に漂い、施策そのものが形骸化してしまうリスクがあります。

■全体のサイクルに滞り

3つのお悩みパターンは、どれにも共通する問題構造があります。時代環境に適応する新たな価値を生み出す全体のサイクルが意識されず、実践もされていない状態にあるということです。

パーパス→戦略→アクション/しくみ→カルチャーが、それぞれ有機的につながりながらスムーズな循環ができることが理想ですが、

残念ながら、どこかに滞りのある状況になっており、本来の組織や事業の能力が発揮できていないということです。

■解決のしかた(パターン別)

最後に、まとめとして、上記で見てきたパターンごとに、解決のしかたをお示しします。

1.「パーパス、戦略不在型」(Aパターン)

経営層がまず率先して動きだし、本来の役割を果たしていく必要があります。時代環境のパラダイムシフトを自ら認識し、自社の存在意義や戦略の方向性を定め直すのです。

経営層がそれぞれの管掌を越えて、真剣勝負の対話を行い「経営チーム」として自分たちの納得できるパーパスと戦略をつくります。

ただし、日本企業の場合、経営層が重い腰を上げ、このような動きを自らつくり出すには時間がかかることが少なくありません。

★実際のところ、僕の行う支援で最近一番数が多く、また手応えを感じている方法は、問題意識の強い事業部の責任者やリーダー層が自分たちの影響の及ぶ範囲で小さな【らしんばん】を回すことから始め、それを起点に経営層や他部門を巻き込んでいくというものです。

このあたりの効果的なやり方については、第5回コラムにて触れる予定ですので、少しお待ちくださいね。


2.「経営/現場乖離型」(Bパターン)

経営層が打ち出した方向性を、現場のリーダーやマネジャー層が、まず正面から直視することが必要です。

そのためには、経営が現場にわかりやすくパーパスや戦略を伝える努力をしなくてはなりません。耳の痛いことこそ丁寧に説明するということです。そうでなければ、想いは決して伝わりません。

人がある決定に対して、それを受け入れて自ら動くには、理解<納得<共感というように、右にいくほどその可能性が高まると考えています。

そして、現場のリーダーやマネジャー層にある程度の納得感が生まれたら、次は、経営の方向性を受けて、自部署の状況に照らし新たな実行戦略を設定し、小さくとも質的インパクトのあるチャレンジを実践してみることをお勧めしています。


3.「施策不整合型」(Cパターン)

これは、とてももったいないパターンと言えます。実際にさまざまに手を打つという実践はしているわけですから。

それらが全体としてどんな目的に対して行われているのか、施策間のつながりを見ていくことが重要です。

この手の施策は、人事部や経営企画部などいわゆる管理部門が担当していることが多いようですので、彼らが一緒に全体像を眺めてみるのが効果的です。

結構やっかいなのは、人事部という人・組織を領域にした部署と、経営企画という戦略や事業を領域にした部署がまったく連携をしていないような場合です。

両者が分かれてしまうと、決して本質的な全体像は見えてこないからです。


A、B、C 3つのパターンは明確に区分けできるものではなく、一部が重なり合っていることも十分ありますので、自組織の状況を3つのパターンを参考にしながら、的確に把握していくことが求められます。

さて、次回(第4回)は、ここまで触れてきた【らしんばん】とは切り口をちょっと転換して、もうひとつ大事なお話をしたいと思います。

物語りなら、起承転結の「転」にあたるところです。僕の専門は、対話型組織開発ですが、そのど真ん中の部分でもあります。楽しみにしていただければと思います!


いかがでしたか?


『やさしく、ふかく、おもしろい組織開発新論』は、5回シリーズでお伝えしております。

おもしろいな、なんか気になるなと感じた方、「スキ」や「ブックマーク」いただけるととても嬉しいです。また、お読みになったご感想などコメントいただけたら泣いて喜びます。

※他の回のコラム(連続5回シリーズ)
 

第1回  組織開発の謎を解き明かせ!

第2回 日本企業の問題構造を【らしんばん】が明かす

第3回 日本企業の問題構造を【らしんばん】が明かす

第4回【四季のリズム】がもたらす成長と発展

第5回 新しき地図“あすbe”が描く未来



最後に、他で僕が発信しているもろもろのメディア情報もお載せしますので、つながっていただけるとうれしいです!!それでは、また次回お会いしましょう。

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