すーぱーのゔぁ
通勤中の電車で読みきれるような 短編小説です。 読んで頂けると嬉しいです📚
着火剤に火をつけて その上に炭を積み上げていく。 30秒もすれば間から煙が上がって 後は炭に火が移るのを待つだけだ。 食材の準備も順調に進んで行って 手の空いた純菜がみんなにビールを配って回る。 「さて、ひと段落ついた所で!」 という純菜の乾杯の挨拶に 純菜だけだよ!!と総ツッコミをいれながら 僕らはビールを流し込んだ。 「いやぁ最高だね やっぱり夏のバーベキューって」 「天気も良いしそんなに暑くないし キャンプにして正解だったね!」 「まさか飲み会での思い出話から 本当に
相談があるのは僕の方なのに コーヒー代を払って貰った事に 申し訳なさを感じながら お礼を言って席に着いた。 「で、どうした?」 「彼女が留学に行く事になって。」 今から2ヶ月前、陽奈が9月からカナダに1年留学に行く事を伝えられた。 「先輩の元彼女さんが留学に行った時の事を聞きたくて。僕は彼女に待ってるって言ったんですけどここに来て不安になってきて。」 「俺も待ってるって言って送り出したよ。 最初の3ヶ月くらいは全然平気だったんだけど 4ヶ月目に入った位から 連絡の
実家に帰るだけだから 今ある家具は別に何も必要ない。 本当に捨てられないものだけを カバンに詰めたって 大きめのリュックサックで十分だった。 スーツケースだって必要ない。 携帯を開き着信がない事を確認して 要る物と捨てる物の分別を続けた。 通過者には昨日までに連絡が来ている。 連絡がない人はダメだったという事だ。 この3年が長かったのかどうか…。 3年という時間が長いのかどうか…。 私は考えていた。 高校の3年間よりは早く感じた。 だけれど自分の過ごした時間しか 比較
予定時刻になったがまだ電車は来ない これからどこに行くか まだそれは決めてはいない ただこの電車に揺られて パリに向かえば 何かが変わると信じている 沢山のものを置いてここへ来たのだから 投げて捨ててしまいたいものも 大切に取っておきたいものも だけど本当は少しずつ気付いて来ている 置いて来た沢山のものが 今の僕には光って見えている事に それに気付く為の旅だったのか それとも新しい何かを見つけられるのか アナウンスが流れた パリに向かう電車が もうすぐホームに入ってく
僕以外に2人だけ乗せたこのバスは 彼奴の元へ向かっているのだろうか。 少し硬いシートに頭をつけて 窓の外に目をやった。 どちらかと言えばインドアな僕が 気付いたらこんな所にいるなんて。 その理由を最後に見つけられるかは 今はわからない。 いや正確には, ここに来たことに意味があるのかさえも 今はわからないのだ。 30分は経っただろうか シャンティイ駅からバスに乗って サンリスと言う街についた。 湊が居るであろう街に。 湊が僕を誘ってきたのは2ヶ月前の事だった。
ドアが開くと, 懐かしい海の匂いがした。 1番線のホームからは家と家の間に静かな海が見える。ここの海は僕にとって1番近い海だ。 両親は既に着いているらしく, 「気をつけておいでね」と言う母からのラインに返信をしながら祖父の家に向かって歩く。 父方の祖父が胃癌になったと知ったのはつい数日前の事だった。 「おじいちゃんが胃癌になってしまいました。前の病気の検診のお陰でわかったみたい。日曜日に入院するので手伝いに来れたら来て。」母からのラインには詳しい事は書いていなかった。この