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積読を一冊消化し、強くなった私達|会話ログ#16

 積読の多さに悩むもの同士でお互いの積読している本を紹介しあい、「じゃあこの一冊読んできてよ」から数週間……。無事に読んでくることができました。積読が一冊減ったぞ! すごーい!

『隣の席のふたり』
日々の思ったこと、楽しかったこと、挑戦してみたことを、仲良しのふたり【osi = デザインする人】【しづむ = 漫画を描く人】が話します。(毎週水曜日更新)

積読を一冊消化し、強くなった私達|会話ログ#16

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 おもしろそう、と買ったものの読む機会を失ってしまう本。われわれふたりもつい「積読」してしまい、置き場所に困り、罪悪感を抱え、誰か助けてほしいと思いながらまた本を買ってしまう……という日々を過ごしています。

 過去記事「積読を消化したいので、積んでいる本を紹介しあいました|会話ログ#13」では、積読している本の中からお互いに5冊を選んできて紹介しあいました。プレゼン(読む前にプレゼンというのも変な話ですが……)を聞いた相手がその中から一冊選び、指定された本を実際読んできました。


しづむ:
読めたね。読めないかと思ったけど。(「読んできてね」回をやったあと)すぐ読めた?

osi:
いや、ぜんぜんすぐ読めてないです。

しづむ:
あー、同じく同じく。

osi:
本、どうだった?


しづむの読んできた本 ── 窪美澄「やめるときも、すこやかなるときも」


しづむ:
どうだったか、か。よかったよ。それだけだと、すごい雑な感想だけど。

osi:
(窪美澄さんの本を読むのは)2冊目だったんでしょ?

しづむ:
そうやね。窪美澄さんの「やめるときも、すこやかなるときも」をわたしは読んできました。2作目だったんやけど、(前読んだのが短編集だったのに対して)これが長編だったというのもあると思うんだけど……まだ窪美澄さんらしさみたいなのを自分はつかめてなくて。けっこう窪美澄作品の中ではイレギュラー(新しい?)らしくて。だから「他のも読んでみようかな」と思ったのがいちばん最終的に思ったことだったな。

osi:
いいじゃないですか。

しづむ:
osiさんは何を読んできた?

osi:
わたしはね、しづむさんご指定の「わかりやすい民藝」っていう本をぜんぶ読んできました。なんか、思ってた内容とは違ったんよ。

しづむ:
ほお。

osi:
この本って、「民藝」っていうものがどういうものか、っていうことについて書かれてた本だったんだけど。本の最初で、今「民藝」という言葉があるけどその「民藝」が意味しているものはいろいろあって……っていう話から始まって。それこそ、私が勘違いしてたというか、あまりよくわかってなかったのが、作者さんの言う通りなところがあって──私がこの本を買ったのはいわゆる「伝統工芸」みたいな日本に色々ある竹細工とかがいろいろ詳しく紹介されてるのかと思ったの。でもぜんぜん違ったっていう。

しづむ:
なるほどなるほど。

osi:
だからなんか作者さんの狙い通りじゃないけど……「民藝ってこういうことか」と、なるほどなと思った。今における「民藝」を語ってくれてた本だから、面白かった。

しづむ:
作者さんも届けたい人に届いたんだろうね。

osi:
しづむさんは、内容的にはどうでした? なんか、ネタバレせずに、「これを聞いて買おうかな」と思えるくらいの……。

しづむ:
ネタバレせずにか、むずいなぁ。なんかなあ、でもすごく伝えたいのは──。このタイトル「やめるときも、すこやかなるときも」から察するに、おそらく結婚が関わる話かなというのはというのはわかるでしょう。

osi:
うんうん。

しづむ:
わたし個人がいわゆるラブストーリーにあまりそそられないタチで(この話をすると長くなるので割愛します)。この本は一言でいうと、結婚、そして結婚も含んで家族がテーマ。純愛物語なんですけど、この主人公の男女ふたりが、「過去のトラウマを乗り切るために、信頼する人の存在が必要な男性」と「実家の居心地が悪くなって、その環境から出るために結婚相手が必要な女性」で。聞いててわかるかもしれないけど、ふたりとも「打算」的なところがかなりあって。結婚を、人の存在をこういうふうに使おうとか……打算みたいなものをかなり率直に書いてて。付き合うときも好き同士じゃなかったり。

osi:
うんうんうん。

しづむ:
キャラクターの設定とかはフィクションらしさもあるんだけど、そういうところがリアルさを感じたというか。普通さ、ラブストーリーって惹かれ合うふたりが「結果」結ばれたという感じがするんだけど、この物語のふたりは計算とかの上で自分のために相手を必要としてるところから結ばれるのか? という展開だから。よく結婚はゴールじゃなくてはじまりとかいうけど、結婚とか付き合うことがゴールじゃなくて、本当の意味で始まりになるふたりが描かれてたなと思う。だから読んでよかったなー、って。

osi:
へえ。

しづむ:
単純にめちゃめちゃ文章がうまくて読みやすいというのもあった。

osi:
ただきれいじゃなくて……ていう感じなんだね。おもしろそう。このふたりのこと好きになった?

しづむ:
うん、やっぱね、このなんか、リアルだから。打算的に考えちゃうこととか、「弱い部分」をふたりが見せてくれるから……。ストーリー的にもこのふたりはお互いの「弱い部分」を先に見せ合うんよ。そこも読んでるうちに応援したくなるじゃないけど、自分(読者)に対して弱さを開示されてるから、見守りたくなるところはあった。

osi:
いい小説を読み終わった後のひたる感じもありました?

しづむ:
ありました。読んだ後、ぼーっとして、お散歩しながらそのふたりのことを考えてみたりとか。

osi:
あるよね、そういうの。「わたしたちの間の繋がりはなくなったけど、あのふたりはその後どうかな……」って考えたりすることあるよね。

しづむ:
わたしのように、恋愛小説にひん曲がった思いがある人でも楽しめる本でした。

osi:
でも恋愛小説ではある?

しづむ:
そうだね。でもそれだけに限らないというか、家族って何だ? ひとが一緒にいるってなんだろう? っていう問いがあった。いろんな人、いろんな家庭が出てくるし。考えさせられるじゃないけど。何だろうね、家族ってねえ。


osiの読んできた本 ── 高木祟雄「わかりやすい民藝」

しづむ:
民藝の話。osiさんに授業してほしい。

osi:
この本三章に分かれてて、一章目が「柳宗悦が民藝っていう言葉をどうやって作っていったか」っていう話で。民藝って言う言葉が生まれてから柳がどういう運動をしてきたか、歴史的なまとめが第一章でされてて。いわゆるこれまでの「民藝」ね。じゃあ民藝という概念が生まれてから今はどうなってるか、が第二章であって。で、第三章はこの作者──「工藝風向」の高木さんが工芸店をやる上で……っていう構成だったんだけど。

しづむ:
なるほどね。

osi:
第一章は前提とおさらいで、わかりやすくまとめてあるから面白かったんだけど、やっぱ自分が面白かったのは第二章かな。現代の中の民藝の話。それこそなんか、民藝っていう伝統工芸的な、地方にある民芸館みたいなのをイメージする人が多いと思うけど、そういうことじゃないんだよな。……んー、むずかしい。言葉にするの。だから読んでほしいって感じ。

しづむ:
たしかに、面白そう。

osi:
第二章がトークの文字起こしだったんだけど。高木さんとD&depertmentの長岡さんを含めた複数人で話してて。「民藝=ロングライフデザイン」という話をしてて。それがけっこうわかりやすくて、しっくりきた。どうやったら一番使いやすいかとか、人の手にしっくりくるかを考えこまれて作られたからいいもの。人々が使ってきた歴史があるからいいもの。(いいものっていうのは)ただ美しさだけじゃなくて使いやすさや馴染みがあることが大事で、今から新しく作っていく人もそういうものが作れるといいよね、という話をしてて。

しづむ:
今の民藝か。プロダクトとかそういうのも込みというか。

osi:
そうそう、いろんなものが対象になる。デザインされるもの全部。たしかにと思ったんだよね。それがイコール民藝という概念なんだなって。なるほどなと思ったんだよね。いわゆる骨董、田舎的なものが民藝ではなくて。どういう作り方をするかとかが大事なんだって。無印良品のものとか、D&depertmentの活動を踏まえながら話しているから面白かった。

しづむ:
うんうん。

osi:
活動家だった柳宗悦のように、こういうものがあるよ、新しいものの見方があるよ、と発信してきた人たちがいて、それを受け継いで高木さんたちが走っていってるっていうのがいいな、と思った。

しづむ:
民藝運動。

osi:
そう、「運動」っていうことがメインなんだなって。だから、思ってた内容と違ったんだよね。あとD&depertmentの長岡さんの言葉なんだけど、「日本のホームセンターがぜんぶおしゃれになったらいいのにな」って思っていた、っていうのがあって。めっちゃ共感した。美しい、美しくない、だけではないけど美しい、は大事。

しづむ:
わかるわかる。

osi:
なんかデザインってさ──「わかりやすさ」とか「使いやすさ」が大事なところだとは思うんだけど、なんか今は「美しい」心惹かれるデザインが町に少ない気がして。例えば、昔の電車って映画とか旅行先とかで見るとあーなんか素敵だな〜って思うんだけど、いまの電車にはそれをあまり感じない。あれって何でだろう。そこが疑問。

しづむ:
「いいもの」のなかに「美しさ」も含まれる感じかな。美しさという言葉の定義も難しいけど……。

osi:
そうなの、難しいんだよね。この本で「いいものは時間性がある」とも言ってて。使い込まれた時間というか。人が受け入れられる形じゃないと、そのものは受け継がれていかないという話もあって。とにかく、いろいろ考えさせられるいい本だったよ、ってこと。面白かった。

しづむ:
見え方が変わるわね、民藝という言葉を得て。


いい機会だったね

しづむ:
よかったね、読めて。

osi:
いい機会にめぐまれましたね。

しづむ:
なんでもさ、読んだらさ、めちゃくちゃいい本だったかどうかは置いておいても何かしら吸収できるというか、なんらかの学びがあるよね。その機会を積読してしまうことで逃すのはもったいないよねぇ、と思いつつ……読むのは面倒くさい。

osi:
なかなかねぇ。やっぱスマホがあるからな……罪深い。

しづむ:
なんか、この読んでくる回をやるにあたって、最終的には「この日のこの時間は本読もう」って決めてやってた。

osi:
なるほどね。朝読書ってあったじゃん、学生のとき。そういうのを作れたらいちばんいいのかな。

しづむ:
うん。……ひさびさに本読んだわ、よく投げ出さんかった。ちゃんと読了できて。読みやすかったからな〜。

osi:
本って面白いよね、これからも買い続けましょう。

しづむ:
買うぞ買うぞ。……あとはこの2冊目以降、積読消化できるかだよね。

osi:
繋がっていくか、ですよねぇ……。まあいつかまたね。もう一回選び直して今回みたいな読んでくる回をやってもいい。その中に今回選んだ本が入ってるかもしれない。まだ読んでなかったんかい! っていう。

しづむ:
みなさんも積読している本を友達と責任を押しつけあって読んでみては? ……実際めちゃめちゃありよね。だって今回読んだし。

osi:
読んだわ。


 ひとりだと消化がむずかしい積読でも、誰かとだと消化できるかもしれない。一冊でも読めたら自己肯定感も爆上がりです!



 前回の記事「大人になれてないって大人にしかない感情だわ|会話ログ#15」で「スキ」のお礼コメントを設定した報告をしました。たくさん「スキ」を押していただきありがとうございました! ふたりで考えたのに気の利いたお礼コメントにできずすみません。が、励みになるのでぜひ「スキ」押していただけると嬉しいです!



 ではまた来週にお会いしましょう。


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