国内SaaSにおけるプロダクトデモのWeb上の活用事例まとめてみた【2023年更新】
今回は、SaaS導入検討中の見込み顧客向けマーケティングコンテンツとして、サイト上で、プロダクトデモを作成・提供している国内SaaSの事例をまとめてみました。 (2023年8月:事例を追記しました)
Web上に設置するプロダクトデモの意義
昨年頃からSaaSでは、PLG(Product Led Growth)が話題になっていますが、SaaS導入の際には当然買う対象の”モノ”であるソフトウェア自体を見てから検討したいと思うのは、セールスを介さないで販売するPLGのプロダクトに限らず、自然ではないでしょうか。
勿論、無料トライアルが存在するサービスもありますが、セールスと商談しなくてはトライアルアカウントがもらえないケースも多く、Webでの情報収集や検討段階では、そのプロダクト自体に関する情報は不足しがちです。
そういった見込み顧客の情報ニーズにクイックに応えるコンテンツとして、いくつかのSaaS企業ではWeb上のプロダクトデモコンテンツが使われています。
プロダクトデモコンテンツの活用シーン
大きくはデモを見るのにフォーム入力が必要なケースと、不要なケースに分かれています。
それぞれ、LPで興味を持った人がプロダクトの詳細を見るためにフォーム入力するケースや、プロダクトへの興味を喚起するためにLPの説明の一部として設置されるケースなど、各施策が対象とする見込み顧客の温度感・フェーズに合わせて作成・提供されているようです。
ここでは見つけたそれぞれの事例を順にご紹介します。
①リード獲得コンテンツの例
ferret One(ベーシック)
「プロダクトツアー(無料デモ体験)」としてLP上から導線があり、興味を持った方はフォームを入力して見られるようになっています。
実際に拝見したのですが、主要機能で実現出来ることや、操作の説明が網羅されており、売りである使いやすさが伝わるような構成になっていました。
他社製品などと使い勝手などを比較・検討している際には非常に役立ちそうなコンテンツです。
②プロダクト理解促進コンテンツの例
一方、LPやサービスサイト上に埋め込まれており、誰でもすぐに見ることが出来るコンテンツもあります。
主に図や言葉だけでは伝わりにくいプロダクトや機能の価値訴求に使われている印象です。
無料プランや無料トライアルがあったとしても、プロダクトの価値はデータが入っていない初期状態では感じにくいケースもあるためか、そういったSaaSでもデモ体験を通じてプロダクト理解を促進する取り組みがされているものと思いました。
kintone (サイボウズ)
kintoneには、アプリ作成画面の体験と、ストーリー形式のシミュレーターの2つのデモコンテンツが存在しました。
まずkintone アプリ作成画面の体験です。
kintoneでは手軽に独自の「アプリ」を作成できるという自由度の反面、幅広い使い方が出来るためにイメージが湧きにくい部分があると思います。
見込み顧客の「何に使えるかわからない」「使いづらいのでは?」というような懸念を払拭できるような説明として、主要なユースケースでのアプリ作成画面が体験できるようになっていました。
続いてkintoneシミュレーターのコンテンツです。
こちらは、営業部でのkintone活用をストーリー仕立てで使い方を知ることができるコンテンツになっています。
体験したいストーリーを選んでツールの具体的な利用シーンのイメージが湧くように作られていました。
よくある業務上の"負"に対応したストーリーがリアルです。
freee受発注 (freee)
freeeでは、無料で使えるfreee受発注のLPの中に利用イメージが掴めるデモコンテンツがありました。
受注・発注という複数の立場で利用されるというツールの特性上、文字の説明だけではイメージがつきにくい部分があるのだと思いますが、このデモでは双方の画面を切り替えながら、順を追って利用手順を理解できるように説明されています。
このfreee受発注は現在無料(フリーミアム)のプロダクトのため、LPだけで価値を伝えきるための施策としてデモが使われているのではないでしょうか。
また、受発注の片側だけでは使えないツールのため、「このページのURLをコピーして取引先に共有することもできます」という注記があり、利用していない取引先に対して、そのまま操作マニュアルとして送ることも想定されているようです。
Backlog (ヌーラボ)
2020年の新機能(カンバンボード)のリリース時のキャンペーンの一貫で、LP上でカンバンボードを体験できるデモコンテンツがありました。
実際にドラッグアンドドロップでタスクカードを動かすという操作性が売りの新機能のためか、実際に体感できることで良さを体感してもらい、利用を促進しようという意図が感じられます。
SALESCORE (セールスコア)
サイトトップのファーストビューに「デモ画面を触る」ボタンが設置されており、スクリーンショットをつなぎ合わせた形式で、ダッシュボード画面を見ることができるようになっています。
Excelライクな「使い慣れたUIでのデータ入力」という特徴が、テストデータが入った状態のスクリーンショットで理解できるものになっていました。
③体験版・デモ環境の例
同じく連絡先情報不要で体験できるコンテンツとして、無料トライアルに加えて、実際にデータが入ったデモ環境を実際に触ることが出来る例もありました。
Garoon (サイボウズ)
サイト上に公開されているデモ用のID、パスワードを利用してログインすると、データが入っているデモ環境にアクセスすることができます。
クラウド版を無料トライアルで体験することもできますが、実際にデータが入っていないと中々活用イメージが湧かないグループウェアだからこその施策かなと思いました。
TimeCrowd (タイムクラウド)
TimeCrowdでは、サービスサイト上に、実際のプロダクトと同じ機能をログイン不要で体験できるデモ版へのリンクが設置されています。
稼働時間をワンクリックで打刻する機能や、記録した時間を分析するレポート機能などを、一切情報の入力などなしで、実際に試すことができるため、サイトで訴求されている内容の理解を深めることができました。
無料登録も可能ですが、データが空の状態ではどんな分析ができるか理解しにくい工数管理ツールならではのアプローチだと思いました。
競争も激しいと思われる工数管理ツールのカテゴリの中で、見込み顧客に手間をかけずすぐに使い勝手を確認できることは、競合よりも早い段階で自社プロダクトの理解を深めさせ、優位に立つことに繋がっているのではないでしょうか。
まとめ
このようにいくつかのSaaSでは、各マーケティングファネルの見込み顧客に対して、プロダクトの具体的な提供価値を分かりやすく訴求するためのコンテンツとして、プロダクトデモが用意されていました。
「LPでの文言や、PDFのプロダクト紹介資料、一方通行の動画などでは伝わりにくい価値を訴求するコンテンツ」としても有用ですし、「まずはプロダクトを見て価値を知りたい」という見込み顧客の情報ニーズにも応えることができるため、競合を一歩リードすることにも貢献できているものだと思います。
実際に制作するには工数・コストもかかりますが、SaaSならではのコンテンツとしてプロダクトのグロースに貢献しているのではないでしょうか。
【追記】番外編:パソコンバンク Web21 (三井住友銀行)
いわゆるSaaSとは性質が異なる点もありますが、三井住友銀行の法人向けネットバンキングでも、操作感がわかるデモコンテンツが用意されていました。
このネットバンキングは、無料でも一部機能が利用可能で、プランを上げると機能が追加されていくような課金形態になっています。
そのため、例えば「振込の一括承認」のように、言葉ではわかるが、どのような操作で実現できるのかまではわかりにくいような機能のアップセル向けの説明として用意されているように思いました。
SaaSに限らず、このように広くソフトウェア商材に関する情報提供という文脈でも、デモコンテンツが果たしている役割が大きそうです。
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