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【今すぐ使える!】 情報の信頼度を見極める6つの質問

記者をしていると、「こんなことを目にした、聞いた」というタレコミがしょっちゅう寄せられます。

でも、人に聞いたことやネットで目にした情報を、そのまま記事にするわけにはいきません。情報の信憑性を確認する責任が記者にはあるからです。事実を間違って伝えることが何よりも恐ろしい。

なので取材中は、「この人はどれだけ信頼できるのか」「証拠はあるのか」「思い込みはないか」などと常に考えています。終わったら、聞いた情報が事実かどうか、一つ一つ確かめます。

アメリカのジャーナリズムには、「If your mother says she loves you, check it out.(お母さんが愛していると言ったら、本当かどうか確認しなさい)」という格言があるくらいです。

とにかく事実確認しないと気が済まない。職業病のようなものです。

今回は、私が情報の信憑性を判断するために、自身に問いかけている6つの質問「5W1H」を紹介します。

1. Who said it?(だれが言ったのか?)

2. When?(いつの情報?)

3. Why?(なぜ?何のために?)

4. How do you know?(どのように知った?どうして知っているのか?)

5. Where is the evidence?(証拠はどこ?)

6. What do others say?(他の人はと言ってる?)

これら6つの質問は、人から聞いた話、SNSで見かけた投稿、テレビやラジオで耳にした発言など、あらゆる場面で使えます。

以下では、分かりやすいように一つの具体例を通して、各質問を説明していきます。ここでは、仮に「納豆は癌(がん)に効く」と主張するTwitterの投稿を、友達がリツイートしていたとしましょう。

1. Who(だれが言ったのか?)

まずは、情報源が誰なのかを確認します。

当たり前のことだと思うかもしれませんが、ショッキングな内容に心を奪われてしまうと忘れてしまいがちです。特にSNSでは、投稿者のアカウント名やプロフィールを確認せずに、シェア(共有)してしまう人が多いように感じます。

今回の具体例では、癌に関する投稿をした友達、そして元のツイート主が情報源です。でも、もしかするとツイート主も、別の誰かの情報を引用しただけかもしれません。

覚えておくべきは、情報は大元から離れるほど、正確性や信頼性が低下するということ。伝言ゲームをやったことのある人は分かると思います。

それと、情報源の素性が不明であればあるほど信頼性は低下します。

逆にいえば、匿名よりも実名で発信している方が信憑性は高まります。実名で情報を発信する方が、責任を伴うので慎重になるからです。

アカウントが匿名、記事の執筆者が明かされていない、記事に実名が登場しないような場合は、特に気をつけましょう。

なりすましにも注意が必要です。TwitterなどのSNSでは、公式機関や報道機関、著名人であれば、本人であることを示す認証済みマークがついている場合もあります。

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2. When?(いつの情報?)

情報は鮮度が命です。

事件や政治、経済などは、状況が刻々と変わりますので、時間が経つほど情報は価値を失います。科学や医療なども研究が進み、通説が変わることがある。

本を読む時は、いつ出版されたものなのか。ネット記事は、いつ配信されたものなのか。必ず日付をチェックする癖をつけましょう。もちろん、古くても貴重な情報はありますが、いつの情報かを知っておくに越したことはありません。

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今回のケースでも、まずはツイートの日付を確認します。もし記事へのリンクが貼ってあったら、配信日を読む前にチェックしましょう。

ちなみに、Googleの検索結果に表示される記事は、時系列には並んでおらず、何年も前の記事ということも珍しくないので注意が必要です。古い投稿や記事が、最近のことかのようにシェアされていることもあります。

3. Whyなぜ?何のために?)

情報を発信する人の意図を考えることも重要です。

CMだったら、視聴者に商品やサービスを買わせるのが目的です。芸人さんだったら、あなたを楽しませること。ニュース番組だったら、事実を伝えること。

今回の具体例で、たとえば情報源が納豆業者だとしたら、見た人に納豆を買ってもらいたいからツイートしているわけです。納豆を賞賛する情報ばかりを取り上げ、都合の悪い情報は省くでしょう。

広告の情報は必ずしも嘘ではありませんが、偏りがあることは念頭におく必要があります。

厄介なのは意図が分かりづらい、もしくは意図的に分かりづらくしてある情報です。たとえば、ニュース記事のように見せかけた広告というのが増えています。この見極めかたについては、いずれ詳しく説明します。

また、皮肉やジョークのつもりで発信された作り話や加工写真を、事実だと勘違いする人もいます。

「これって嘘でしょ!?」と思うくらい出来すぎた情報は、実際に嘘である場合が多いです。ショックや嫌悪感など強い感情が湧いたら、いったん深呼吸をして、情報を精査するようにしましょう。

4. Howどのように知った?)

これは情報源の信憑性を判断するのに、鍵となる質問です。

「この人は情報を知りうる立場にいるのか」「語れるだけの専門家なのか」を考えなくてはなりません。

私は、記事を書くとき、「このトピックについて最も詳しい専門家は誰か」を考えて取材先を決めます。最も信頼性の高い情報を得るためです。

たとえば、道端の人に「アメリカの大統領選挙は誰に勝ってほしいか」を聞くのは分かりますが、「誰が勝つのか」と聞いても意味がありませんよね。普段から世論や選挙の調査をしているわけではありませんから。

今回の具体例では、まずは投稿者のTwitterプロフィールで、納豆や癌の研究について、どんな肩書きや経験、知識があるのかを確認します。匿名アカウントで専門性について何の記載もないようであれば、信じる理由はゼロです。

肩書きにも注意が必要です。

有名人やインフルエンサーだから、大学教授や弁護士だからといって、あらゆる分野の専門家ではありません。たとえ同じ医者であったとしても、整形外科と感染症では専門が異なります。

SNSのプロフィールは、何とでも書けるので、できれば名前をグーグル検索して、実際の仕事ぶりや第三者による評価なども調べたいところです。


5. Where(証拠はどこ?)

たとえ専門家でなくても、データや研究といった証拠を示していれば信頼性は上がります。

納豆の例でいえば、たとえば「癌に効く」という主張を裏付ける論文や記事へのリンクは貼っているのか?

しかし、ただリンクが貼ってあればいいという訳ではなく、証拠にも大きく質の差があります。

報道機関と匿名ブログの記事では、信頼性が全く違います。論文も、専門家によるチェック(査読)を経ているもの、権威ある学術雑誌に載ったもの、そうでないものなど様々です。

証拠が偽物でないかにも注意が必要です。

写真や動画を加工したり、文書を捏造したりするのは難しくありません。綺麗なデザインのグラフやチャートを作るのも簡単。

たとえば、納豆と癌の関係を示すグラフが載っていたら、元となる数値を確認しましょう。データの出典先が示されていなければ危険です。

6. What (他の人は何て言ってる?)

一つよりも二つ、二つよりも三つと、情報は証拠が増えるほど信頼性が高くなります

信頼できる情報か迷ったら、別の専門家や記事が何と言っているか調べましょう。

今回の具体例では、納豆と癌の関係について、公的・研究機関や新聞などが言及していないかググります。あえて、「嘘」「デマ」などのキーワードで検索するのもおすすめです。

科学に関しても、1人の研究者が言ったからといって、それが通説だとは限りません。専門家でも見解が異なることがあります。

なので、優れた記者は、何人もの専門家に取材して記事を書きます。ニューヨークタイムズ紙などのコロナウイルス関連の報道を読むと、各記事で5、6人の感染症の専門家に聞いた話をまとめていることがわかります。信頼できるいくつもの情報を組み合わせてこそ、真実に近い形が見えてくるのです。

できる限り、さまざまな情報に触れるよう心がけましょう。

最後に

これらの質問をいちいち考えるのは、初めは大変かもしれませんが、慣れてくると無意識に情報を処理できるようになってきます。

大切なのは、勢いや感情に流されて、情報を判断したり拡散したりしないこと。SNSだろうが、近所の噂話だろうが、自分が加害者になることだってあるのです。

まずは、一呼吸おいて、5W1Hに答えてみてください。

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