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Learn together, Grow together 【共に学び、共に育つ】

今私は国際バカロレアの認定校であるサニーサイドインターナショナルスクールで小学5/6年生の担任をしており、ヴィゴツキーの学習理論である社会構成主義の学びをどのように実践しているのかをまとめていけたらと思います。まだまだIB教員2年目の実践ログなので、どのような場面に難しさを感じながら社会構成主義の授業にトライしているのかについてまとめていけたらと思います。

▼ これまでのユニットの流れ
・概念型探究のフェーズ(1-3)▶︎ リンク
・概念型探究のフェーズ(3-4)▶︎ リンク
・フィールドトリップ ▶︎リンク
・概念型探究のフェーズ(4)▶︎ リンク
>多様な視点でユダヤ人の迫害について考える
・概念型探究のフェーズ(6)▶︎
>現代の難民の問題について多様な視点で考える

今回のnoteのテーマは「Learn together, Grow together」です。これは、サニーサイドインターナショナルスクールのモットーでもあります。

子ども達を「何も知らない、未完成な人間」と見下す教育はもう時代遅れです。実は子ども達は色々なことを知っているし、たくさんのことを私たち大人に教えてくれます。大人も子どもも、お互いに学び合う、Learn together, Grow together(共に学び、共に育つ)、それがサニーサイドのモットーです。

sunnysideblog参照リンク

今回東京から9名の企業の方が訪れました。そして、子ども達にとっても企業の方と一緒に学べる貴重な機会にできたらと思い、大人も子どもも関係なく共に学べる学習のデザインについて考えはじめました。1つ前の学習で、子どもたちは第二次世界大戦中のユダヤ人の迫害をテーマに、岐阜県生まれの杉原千畝さんの立場に立って「ユダヤ人にビザを発給するかどうか」について、複数の立場の視点でディスカッションを重ねてきました。

このディスカッションの詳細については以下のnoteにまとめてあります。

今回は、過去に起きた歴史的な出来事を深める「整理する」概念型探究のフェーズで学んだことを転移させて、現代に起きている難民の問題について複数の立場でディスカッションを行う学びの場をつくりました。概念型探究が1つずつフェーズを進んでいくのではなく、様々なフェーズを行き来することを学んだので、一般化のフェーズを今回は飛び越して、学んだことを新しい状況に転移するフェーズで授業を進めました。

◎導入する

第二次世界大戦の風刺画

まずは、これまでのユニットで学んできた知識を想起する問いから始まりました。今回は、難民という言葉を授業で初めて扱ったので、難民の定義から確認を行いました。

迫害、紛争、暴力、人権侵害などを理由に、自分の国で迫害されるおそれがあるため、外国などに逃れた人々のこと。難民条約で保護するよう定められています

参考:国連UNHCR協会

難民の定義を確認した後に、過去に難民が生まれた歴史的な出来事を振り返り、先週学習した「第二次世界大戦中のユダヤ人の迫害」の出来事と繋がりました。

【事実的な問い】難民は今での社会の中で増えていると思うのか?

実際に外務省のデータを元に社会の中で難民が増えている事実を確認しました。

【事実的な問い】なぜ、難民が生まれるんだろう?

ここで子どもたちがユニットの最初にリサーチを行った戦争を振り返り、リサーチした児童にこの争いにはどのような背景があったのかについて説明をしてもらいました。

子どもの描いた風刺画
子どもの描いた風刺画

【議論的な問い】難民はどこにいけばよいのだろう?

子どもたちの中で、日本?安全な国?隣の国?国外?色々な考えが出てきました。ここで、次のデータを示しました。

このデータは難民受け入れ貢献度を比較したものになります。第二次世界大戦で話題に出てきた、ドイツと日本のデータを隠し、難民の受け入れが一番多い国と少ない国はどちらかを予想してもらいました。子どもたちの中では、意見が2つに分かれ、日本が難民の受け入れが多いと予想した児童は、「杉原千畝さんがビザを発行したので、多いと思った。」ドイツが難民の受け入れが多いと予想した児童は「身の回りに難民の方を見かけたことがない。」という考えを伝えていました。実際のデータでは、ドイツが2016年時点では、G7の中では一番難民を受け入れており、日本は最も少ないことが分かります。

こちらはその後のG7の難民受け入れの変化になります。このデータから、日本が難民の受け入れが少ないことがわかります。
そこで、今回「Learn together, grow together」で一緒に考えてもらう問いは、次の問いになります。

【議論的な問い=ディスカッションテーマ】
“日本は難民を受け入れるべきか受け入れないべきか?“
▼ ディスカッションの背景
とある国際会議でG7のメンバーから、日本に対してもっと難民を受け入れるように指示がありました。具体的な方針としては、企業に対しては「難民をできる限り雇用してください。」家庭に対しては、「できる限りホームステイを受け入れてください。」学校に対しては「できる限り難民の子どもを受け入れてください。」日本の外務省は、国民と話し合って、出た結論を外務省は国際会議に報告しなければいけません。

外務省は以下のうちのどれかの結論と理由を報告してください。
A:日本での難民の受け入れを止める(0%)
B:現状維持(3.8%)
C:難民の受け入れを増やす(10%)

本来であれば、ディスカッション前にリサーチをするのですが、今回は飛び込み型の授業でもあるので、リサーチのプロセスは飛ばして、ディスカッションの立場を明確にしてディスカッションをスタートしました。以下の資料がディスカッションの立場を明確にしたもので、各立場ごとに5分間の作戦会議をもってディスカッションを始めました。

ドイツの立場
日本の企業の立場
日本の企業の立場
日本の外務省の立場
日本の学校の先生の立場
日本にやってきた難民の立場
日本の学校の子どもの立場
日本の家庭の立場

ディスカッションで生まれた意見交換

最後は、それぞれの立場から、日本は難民を受け入れるべきかどうかについて考えたことをシェアしてもらいました。

企業の立場
日本の家庭/難民の立場
子ども/日本の外務省の立場
日本の学校、ドイツの首相の立場

このようにサニーサイドでは、答えのない問いに対して大人や子ども関係なく、共に学び、共に育つ考え方を大切にしています。今回のディスカッションでも、大人や子どもという立場を超えて、それぞれの立場で意見を交換し、お互いにとって考えるきっかけとなった時間になったのではないかと思います。

「学校とは何のためにあるのか?」

もし、学校が学習者に情報を一方的に与えられる場であるなら、自分でインターネットや本から情報を受け取ることのできる時代になりました。もし、学校が答えのある知識を学ぶ場であれば、一人でも学ことができ、学校という場にくる必要はなく、自分に合った学びを家で積み上げていけるかもしれないです。その一方で、IBの学校やフィンランドの教育の根幹にある社会構成主義の学びにおいては、知識というものの捉え方が異なり、知識というものは、教授主義で捉えられている知識の捉え方とは異なります。社会構成主義における知識とは、客観的で普遍的な知識は存在しないと考えられているので、知識は学習者が他者という人的環境を含む環境と関わりながら構成されるものと考えられています。
詳細については以下のnoteに考えたことをまとめてあります。

今回の授業では、正解のない問いについて様々な視点からディスカッションを行いました。異なる視点でディスカッションをするからこそ、共に学ぶ中で自分では気づけなかった視点と出会うことができます。

いつも読んでいただきありがとうございます。子どもたちとの探究は続いていきます。

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