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大人の男の恋情

冬の光/篠田節子

大手企業を勤め上げた主人公は、被災地ボランティアから帰宅してすぐに四国遍路に出かけ、帰路のフェリーから海へ落ちて亡くなった。
夫の、父親の、別の顔を知ってしまった妻と娘たち。

社会に出てから半世紀近くにわたる恋情。
けして特別な人生ではない。
人を思うエモーショナルな好意、全部ひっくるめてなんと言えばいいのか。他に浮かばないから恋情と書いた。

夫として、父親として、職場で。
無意識に顔を変えているのかもしれないけど、全部自分は自分。
しかし、ということ。
本当の自分は、最後までわからない。
そうあたらめて思い知らされた。

正統派の恋愛小説だと思う。
これほど、大人の男の恋情を丁寧に綴った小説は他にあったかな。


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