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桜の花びらの群れ

生暖かい
空気の温度をひたすら感じ
裏路地の薄暗い中で
幾筋もの光を見て、

所々にいる猫は
黒い影をおとし
僕をみて
さっと
逃げる、

お勝手口
柿の木
割れたレンガ、
錆びた空き缶

ベランダには干しっぱなしの
衣服がぶら下がっている。
日陰で
日が当たることなどあるのだろうか?
ないのなら衣服はいつ乾くというのか。

頭上の真っ青な空は、
尋常でないほどに、
落ちてきそうなほど
綺麗。

さっき公園であった人とは
いつもお昼どきに
会う。

偶然だと
僕は思っているけれど、
公園の
桜の木の下に
行かなければ会えないし
気が付けば
毎日会っているし、
会えないと気が狂いそうになる。

もしかして
僕は
あの人に会いに行っているのだろうか。

こうして裏路地を
歩きながら
どきどきして公園へ行き、
あの人に無事会えて
楽しく会話でき、
2,3ほど
新しく、
あの人について知ることができた。

たとえば、
あの人はベトナムが好きで
夏ごとに一人で旅行に行くことや
英語とベトナム語が話せることや、
坂本龍一が好きだけども、
YMOは聴かず
なんてことも。

あの人が話し、
僕はあの人について知らなかったことを、
知るに至る。

裏路地は続き、
どこまでも続いていき、
見上げれば青い空が見え、
なんだか、
幸福に思えた。

薄暗い裏路地では
幾筋もの光が、
差し込み、
僕はあの人のことをずっと思っている
と思う。

カラスが鳴き、
風に乗る桜の花びらの群れが青空の中で見え、
そのとき、ちょうどハラハラ
紙吹雪みたいに落ちて、
そういえば、
あの人の髪の毛や
弁当に、
桜の花びらが
ついていたっけな。
と思い出す。

今日のような青空で、
めでたく
この国には戦争がなく
平和で
風が時たま吹き、
そういえば
あの人はとても良い顔で笑っていた
ことを思い出す。


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